4.0L V8ツインターボのプラグインHV
物議を醸しつつ販売では大成功を収めるSUV、ランボルギーニ・ウルスがフェイスリフト。新たに「SE」が登場した。ただし、ミニ・クーパーのSEと異なり、バッテリーEVになったわけではない。
【画像】優しい眼光で800馬力のHV! ランボルギーニ・ウルス SE しのぎを削るスーパーSUVたち 全163枚
だが電動化技術と無縁ではない。プラットフォームとドライブトレインを共有する、ベントレー・コンチネンタルGT スピードと同じく、プラグイン・ハイブリッドになった。以前より、走行時の環境負荷はある程度抑えられている。
とはいえ、電気だけで走れる距離は最長59km。実際の走行時のCO2排出量は、少なくはなさそうだ。加熱する地球へ本格的に貢献するわけではないが、ランボルギーニのスーパーSUVを延命することはできる。
エンジンのダウンサイジングは選ばれなかった。フロントに載るのは、4.0L V8ツインターボ。最高出力は、650psから620psへ僅かにダウンしている。
そのかわり、8速AT内に駆動用モーターを内蔵。191psの最高出力でアシストする。システム総合の最高出力は、コンチネンタルGT スピードの782psに対し、800psがうたわれる。
増強に合わせて、一層走りがいのあるSUVにも仕立てられた。従来はトルセン式センターデフが組まれていたが、クラッチ式の新しい可変システムが与えられている。
電光石火なパワーデリバリーと、リアアクスルの電子制御LSDも協調し、最適なタイヤへ必要なトルクを即時に伝える。スタビリティやトラクションを高めるだけでなく、条件次第では、リアアクスルを遊ばせることも許す。
眼光優しく滑らかなフロント 車内の変更は小さい
スタイリングは、ヘッドライトがスリムになり、眼光が優しくなった。ボンネットは、フロントノーズの先端まで延長。バンパーとの境目が消え、滑らかな造形を得ている。
リア側も、テールライト・クラスターを変更。ガヤルドのフェイスリフトに、影響を受けたものだという。ナンバープレートの位置は、バンパー側へ移された。アルミホイールは、21インチから23インチまで多彩な選択肢が用意される。
インテリアの変更は小さい。センターコンソールのデザインが新しくなったことと、タッチモニターのサイズが少し大きくなったこと程度。ソフトウエアは、6角形のグラフィックテーマを採用するが、アウディSQ7と基本的には同じだ。
メニュー構造は少し複雑。それでも、充分に機能的といえる。
実際に押せるハードスイッチが削られていない点は、高く評価したい。ランボルギーニは、この触覚的な体験を重視している。ドライブモードなどを選ぶ、タンブーロ・セレクターにもそれは表れている。EVモードへ切り替える時も、カチッと音がする。
レザーは上質で、アルカンターラとカーボンファイバー製トリムが各所を引き締める。21.8kWhと大きめの駆動用バッテリーを積むため、荷室の床面は僅かに持ち上げられたが、依然として実用性は高い。
着座位置は、SUVの割にはかなり低い。ステアリングコラムの調整域が広く、自然な運転姿勢に落ち着ける。
エンジンをモーターが補完 瞬間的レスポンス
ウルス SEの0-100km/h加速は3.4秒。ウルス Sより、0.1秒縮めている。強烈にターボブーストされるV8エンジンを駆動用モーターが補完し、瞬間的なレスポンスを実現。中間加速も凄まじい。
エンジンが積極的に稼働するスポーツ・モードを選び、8速ATをマニュアルで操れば、刺激マックス。遠くで響くような、V8サウンドも素晴らしい。
ただし、防音性に優れ視点は高め。他を圧倒するような速さを容易に引き出せる一方で、スピードメーターの数字を確かめなければ、その事実は実感しにくい。公道では、ちょっと手に余るパフォーマンスだ。
ハイブリッドの能力は、筆者の期待に届いていない。デフォルトのストラーダ・モードで、駆動用バッテリーが満充電の状態でも、エンジンの出番が多すぎるように感じた。
バッテリーの容量を考えると、電気だけで走れる距離は短めでもある。ランボルギーニは、わざわざケーブルを繋いで充電されることは少ないと予想するけれど。
ブレーキペダルの感触は、プラグイン・ハイブリッドとしては納得できる。だが、非ハイブリッドのウルスほど漸進的ではない。
フェイスリフト後のウルスで、電動化技術以上に熱いのが、ドリフトでタイヤを溶かす能力。従来のトルセン式センターデフは、トラクションの低下時に反応するシステムだったが、積極的にトルクをタイヤへ分配してくれる。必要以上にも。
シリアスなラリーカーのように振り回せる
予測的に機能し、スタビリティ・コントロールを切った状態でカーブから鋭い加速を試みると、ドライバーがドリフトを望んでいると自動的に判断。外側のリアタイヤを滑らせる勢いで、制御されるという。
今回の試乗場所は、ポルシェが有するドイツのナルド技術センター。そこに、ドリフト体験と銘打った短いコースが用意されていた。
ドライバーがテールスライドしたい・やめたいという意志を、ウルス SEへ伝えるには、相応の操作が必要ではある。しかし1度慣れてしまえば、シリアスなラリーカーのように振り回せる。
軽くないボディを、思い切り横向きにするのは朝飯前。きっかけを与えて、アクセルペダルを蹴飛ばせば、四輪ドリフトさえ簡単に披露する。実際の環境でどんな興奮を享受できるのか、技術センターから連れ出せる日が待ち遠しい。
ウルス SEはストラーダ・モードで親しみやすく、フォルクスワーゲン・トゥアレグにも近い。ところがスポーツ・モードへ切り替えると、言葉を失うほど機敏に走り出す。
パワースライドしていこうとする様は、ちょっとゲームチック。アウディには似合わなくても、ランボルギーニにはぴったり。2.5tある車重も、巧みに覆い隠している。
乗り心地は硬い。新しいツインバルブ・ダンパーが減衰特性を広げ、ストラーダ・モード時はフェイスリフト前より僅かにソフトだが、ソリッドな感じに変わりはない。ダンパーがしっかり仕事をしても、ホイールの動きもはっきり感じ取れる。
クラスで最もエキサイティングなSUV?
現在の英国では、ウルスはこのSEの1本へ絞られた。英国価格は、20万8000ポンド(約3993万円)から。物価の高騰やハイブリッド技術の獲得を考えると、法外な値上がりとはいえないだろう。実際のターゲット層が気にするような、上昇とはいえない。
冷静に考えれば、ウルス SEは少し矛盾している。カタログ上の環境負荷を低減するには、ハイブリッドが不可欠といえた。だが同時に高度なシャシー技術を獲得し、このクラスで最もエキサイティングなSUVに仕上がっている可能性もある。
ランボルギーニへ、素晴らしい成功をもたらしたウルス。2017年と2023年を比べると、ブランド全体の販売は3倍へ膨らんでおり、この多くをウルスが稼ぎ出している。SEの追加で、成功が更に続くことは想像に難くない。
◯:車重2.5tのSUVとしては呆れるほど機敏 アクセルペダルでライン調整できるシャシー V8エンジンの惚れ惚れするサウンド 実は実用性も高い
△:日常的には、さほど効果的ではないハイブリッド 電気だけでの航続距離の短さ 本当に必要なクルマなのか、という疑問
ランボルギーニ・ウルス SE(欧州仕様)のスペック
英国価格:20万8000ポンド(約3993万円)
全長:5123mm
全幅:2022mm
全高:1638mm
最高速度:312km/h
0-100km/h加速:3.4秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2505kg
パワートレイン:V型8気筒3996cc ツイン・ターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:21.8kWh
最高出力:800ps/6000rpm(システム総合)
最大トルク:130.5kg-m/2250-4500rpm(システム総合)
ギアボックス:8速オートマティック(四輪駆動)
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