いよいよレギュラーシーズン最終戦を迎えた2023年NASCARカップシリーズ第26戦『コーク・ゼロシュガー400』が、8月24~26日にデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催された。その緊張感を表現するかのように波乱満載となったレースでは、今季好調の波に乗るクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)が、僚友兼チーム所有者のブラッド・ケセロウスキーのサポートも得てワン・ツー・フィニッシュでの今季3勝目をマーク。さらにプレーオフ進出権最後の枠は、トヨタ陣営のダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が獲得し、自身初のポストシーズン出場権を手にした。
前戦まさかのガス欠により、自身9年連続のプレーオフ進出に黄色信号が灯ったチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)だが、シーズン途中の怪我による戦線離脱の穴を埋めることが叶うかどうかが焦点に。さらに当落線上ランク16位のウォレスJr.や、同陣営のルーキーであるタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)やアレックス・ボウマン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)、ダニエル・スアレス(トラックハウス・レーシングチーム/シボレー・カマロ)といった候補者らが、逆転で最後のひと枠に滑り込めるかなど、この週末はプレーオフ最終枠の話題が中心となった。
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そんななかレースウイーク最初のニュースは、ランキング首位をいくマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)や、同2位デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)とも共闘したカート・ブッシュ(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が、自身のSNS上でNASCARからの「正式な引退」を表明したことだった。
「レースにはつねに100%の集中力、心、スタミナ、決意が必要だが、それらすべてを念頭に置いていたし、その気持ちがないままレースをしたことは1日もない」と、昨季ポコノでのクラッシュ以降、脳震盪の後遺症治療に専念してきたカート。
「でも、父親でいる時間がそれらの夢に追いつくこともある。僕の素晴らしい医療チームと僕自身は、現時点の回復状況ではこれを克服して100%の状態に戻すには障害が多すぎるという結論に達した」
「23年間ステアリングを握り、45年間この夢に熱中して競技人生を生きてきた後、僕はNASCARカップシリーズからの引退を正式に発表する」
迎えたスーパースピードウェイ(SSW)での予選は、高速オーバルに強いトヨタ・カムリが『カートへの餞(はなむけ)』とばかりにポールポジションをプレゼントするもの……と思われたが、ここで意外な速さを披露したのはフォード陣営だった。
背後の2列目3番手にハリソン・バートン(ウッド・ブラザーズ・レーシング/フォード・マスタング)、お隣フロントロウ2番手に僚友アリック・アルミローラを従えたチェイス・ブリスコ(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)が、カップシリーズでのキャリア2回目、自身SSWでは初となるポールウイナーの座を射止めたのだ。
しかし決勝序盤はやはりランキング上位を行くJGR勢が底力を見せ、ステージ1終盤までに首位浮上を果たしたハムリンがリードアウトを務め、最後の1周はクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)にも護衛されたトゥルーエクスJr.がステージウインを達成。最終結果は24位ながら、これで2017年カップ王者は15点のプレーオフポイントも積み重ね、レギュラーシーズンチャンピオンに輝く。
続いて“ディフェンディングチャンピオン”のジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を先頭に始まったステージ2では、フィニッシュ目前の95周目に首位争いを演じていたギブスが、JGRの僚友ベルから“バンパープッシュ”を受ける。しかし車速を伸ばすどころかここで姿勢を乱した54号車モンスターエナジー・トヨタは激しくウォールに衝突、これが“ビッグワン”の引き金となる。
ボトムレーンに並んでいたライアン・ブレイニー(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)を筆頭に、オースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)やリッキー・ステンハウスJr.(JTGドアティ・レーシング/シボレー・カマロ)らが巻き添えとなり、プレーオフ争いで『勝利』が必須だったドライバー数名がここで姿を消すことに。
ファイナルステージは先の混乱を潜り抜けたカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)とブリスコが隊列を率いると、今度は残り6周でライアン・プリース(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)による激しいクラッシュが発生。バックストレッチで後ろから追突された41号車はSHRの僚友ブリスコにも激突し、グラスエリア突入の衝撃で宙を舞って派手なバレルロールを演じる事態に。
何度も回転して止まった無惨な車体からは火の手も見え、現場が凍りつく事故となるなか、クルマから這い上がったプリースは担架に乗せられ、インフィールドケアセンターに運ばれた後、地元の医療施設にヘリで搬送され一晩の安静を言い渡される(現在は無事に退院)。
■チームワークで勝ち取ったワン・ツー・フィニッシュ
これでオーバータイムの延長リスタートに突入したラスト2周の勝負は、ボトムレーンを選択した首位ケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)に対し、アウトサイドレーンで“トレイン”を組んだRFK陣営が軽々と車速を上げていく。
最後はケセロウスキーがハーヴィックに牽制も入れる献身的なサポートも見せ、ブッシャーがカップ5勝目を飾る結果となった。
「なんて素晴らしい! リスタートのクロージングラップで、ブラッドが本当に最高のプッシュを見せてくれた」と、僚友兼オーナーへの感謝を述べたブッシャー。
「僕らは前後に並んで、なるべくクルマを繋げようと協調した。最後の数周はほとんど途切れることはなかったし、ときどき不安定になることも少しはあったが、それこそ僕らが2年間、SSWのレースで勝つために懸命に取り組んできたことなんだ」
「僕らはとても近くにいた。でも、ここでようやく積み重ねてきた多くのことを、残り5周以内の重要な局面でようやくやり遂げることができたし、今夜は特別だね!」
アルミローラの3位に続き、エリオットが4位、ロガーノが5位のトップ5となり、アルミローラもエリオットもプレーオフ進出に必須な『勝利』には届かず。12位チェッカーのウォレスがポイントを獲得して最終ランキング16位を確定させ、自身初のポストシーズン出場権を獲得することとなった。
併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第24戦『ワワ250・パワード・バイ・コカ・コーラ』は、ジャスティン・オルゲイアー(JRモータースポーツ/シボレー・カマロ)が、ペナルティの波乱で後方へ転落した後のカムバックを披露し、シェルドン・クリード(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)を延長戦の末に僅差で降して勝利。
そしてすでにプレーオフへ突入しているNASCARクラフツマン・トラック・シリーズの第18戦『クリーン・ハーバーズ175』は、ウィスコンシン州ミルウォーキーマイルの1マイルを制したグラント・エンフィンガー(GMSレーシング/シボレー・シルバラードRST)が今季3勝目を飾り、引き続き2台体制を敷いた服部茂章のハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)は、16号車タイラー・アンクラム(トヨタ・タンドラTRD-Pro)が20位、61号車ショーン・ヒンゴラーニ(トヨタ・タンドラTRD-Pro)が23位でレースを終えている。
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