「とりあえず増税」→「当分の間税率」 “税金の看板替え”で50年続けた政府
国民民主党の躍進で、「年収の壁」の打破が取りざたされるなか、自動車関連税制の見直しについても声が大きくなっています。ただ、税収に大きく影響する税制は、毎年12月までの合意が大原則。残された時間は刻々と短くなっています。
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自動車関連税制の見直しは、2024年末と2025年末までの2年間で行うことが、自民党のウェブサイトの「令和6年度税制大綱」の中に明記されています。過去にもたびたびテーマになっているものの結論に至らないまま、「とりあえず増税」を維持し続けて現在に至り、自動車ユーザーが負担する関連諸税はあわせて約9兆円。巨額過ぎる税収が見直し(=減税)を不可能にしてきました。
その典型例が自動車関連税制の中でも「重量税」です。道路の損傷に対する負担とされ、本来の税率は自家用乗用車で0.5tごとに2500円/年。それが“暫定税率”によって同6500円/年と決められています。車検のタイミングで徴収されるので、負担を重く感じさせることもあります。
暫定とは決定を見合わせて、一時的に定めること。要は「とりあえず増税」して、真に必要な税率(=本則)は、改めて議論するということだったはずですが、その増税がすでに約50年続いているのです。
政府はこの間、いくら何でも暫定的な増税にしては長過ぎるという批判を受け、暫定税率という名称を取り下げて「当分の間税率」と看板を書き換えた経緯があります。当時、エンジン車は次世代環境車の2倍程度のCO2排出量があるとして、本則税率の2倍が適当とされました。
この議論の過程で誕生したのが、「エコカー減税」でした。ただ、それも現状では本則には及ばない引下げ率で、2024年度はは縮減段階にあり、2026年3月末日(2025年度分)で期限切れを迎えます。そのため2025年末までに抜本的な見直しを実施することを、自民党と公明党が合意し、2023年末の与党税制大綱(税制の方向性)に記載したのです。
「103万円の壁」が優先?
自動車保有時の税金は重量税のほか、同じ車両に対して排気量に応じたもう1つの税金「自動車税」も課されています。モーターを動力源とするBEV(電動車)やFCEV(水素燃料車)には排気がないため、BEV/FCEVに対する新たな課税も検討されています。
2024年11月のいま、こうした議論がきちっとなされるか否かに注目が集まっています。予算編成を担当する加藤勝信財務相は、2024年11月19日の会見でこう説明しました。
「結論から申し上げると、与党税制調査会がこれまでの税制改正大綱を踏まえ、各省からの要望を踏まえて、議論されるものと思っている。自動車関連税制は、与党税制改正大綱で
・日本の自動車戦略
・インフラ整備の長期展望
・カーボンニュートラル社会の実現・貢献
・インフラの維持管理機能強化の必要性
等を踏まえつつ、国地方を通じた財源の安定的な確保を前提に、受益と負担の関係を求め、中長期的な視点に立って検討を行うと承知している」
電動車の普及に水を差す増税に自動車業界は反対で、1台の車両に2つの税金が課せられた「自動車税」について廃止、エンジン車にも電動車にも共通する重量を区分とする「重量税」に一本化することを求めています。
ただ、現状では所得税が発生する年収の境目「103万円の壁」問題を解決することが先決とされ、自民党、公明党の税制担当国会議員による具体的な議論は進んでいません。
ガソリン税もどうにかして!!
政府が月内の決定を目指す総合経済対策の11月18日の協議で、国民民主党は「103万円の壁」のほかに、ガソリン税の引き下げの明記を求めました。
このガソリン税制も、実は「とりあえず増税」のひとつ。道路財源の不足を理由に「当分の間税率」という増税がなされたままでした。自動車税制の見直しを、重要政策の柱の一つとする国民民主党にとって、103万円の壁とともに譲れない要求の一つです。
自動車ユーザーのガソリン購入には、「とりあえず増税」の上に「消費税」が課せられています。1Lあたり「ガソリン税(53.8円)」と「石油石炭税(2.8円)」の合計56.6円がかかっていますが、その総額に対して、さらに10%の消費税が課せられているのです。
自動車メーカー関連団体、運送事業者団体、整備団体などが加盟する日本自動車会議所は、ガソリンや軽油に課された暫定増税を廃止するように求めています。
とりあえず決められた自動車ユーザーに対する課税、長すぎるのではないでしょうか。加藤財務相はこう回答しました。
「それぞれ税率について、議論されてきた結果、継続されている。その背景には環境への対応などいろいろな議論があると承知している。いずれにしろ、そうしたことも含めた自動車関係税制全般に対して幅広く、中長期的な視点にたって議論されるものと承知している」
11月19日、自民党と公明党は総合経済対策案を示しました。翌20日、国民民主党は懸案の103万円の壁の改善とともに、ガソリン税の暫定税率を見直す内容が盛り込まれていることを評価し、同日3党でこの案に合意しています。見直しの内容、実施時期については今後さらなる議論が必要になりますが、ガソリン税で続いた「とりあえず増税」は解消される方向です。
ただ、その後に控えた自動車関連税制の取り扱いがどうなるのか。中長期的に続けた増税にかえて、当面の間税率を引き下げる「とりあえず減税」で景気の動向を見極めることもありではないか、という柔軟な発想が広がることを期待したいものです。
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みんなのコメント
ただ、電気自動車に乗っている人は払っていません。電気自動車はガソリン車に比べて車重が3割程度重く、道路への負担が大きいためこれに匹敵する税金をたくさん払うべきです。それだけ道路に負担を与えているのだから。でも現在は政策により無税・・・これは不公平過ぎるのでは?
本来ならこれも建設後30年間暫定徴収のはずであったが、いつの間にか100年以上(恐らく永遠に)徴収に変更されている。
さらにはETC割引の縮小や距離料金と称して大都市近郊区間料金の実質値上げも行われおり、また料金を支払うためのETCの器械もユーザー負担、と自動車関連の行政は無茶苦茶である。
自動車を製造する民間企業は世界一レベルであるが、自動車行政は世界最低レベル。
もっとユーザー(国民)は怒りの声をあげてよい。