10月20~22日に開催されたスペイン・カタルーニャ地方の名物イベント『ラリーRACC・カタルーニャ-コスタ・ドラダ』で、WRC世界ラリー選手権とのジョイントで最終戦を実施した2022年ERCヨーロッパ・ラリー選手権は、すでに今季初タイトルを獲得したエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)との一騎打ちを制し、フランス出身のヨアン・ボナート(シトロエンC3ラリー2)が欧州選手権での初優勝を達成。今季出走わずか4戦で3度目のポディムとなったボナートが、地元凱旋の新チャンピオンを撃破してみせた。
前戦第7戦バウム・チェコ・ラリー・ズリンに向け、タイトル候補のひとりがエントリーを見合わせた結果、有効6戦のポイント制度も味方し、序盤からシリーズを牽引してきたヤレーナの新チャンピオン獲得が決まった。その2022年シーズン最終の第8戦は、長らくのブレイクを経たフィナーレをWRCの名物ターマック・イベントとの併催で実施する運びとなった。
地元NZで10年ぶり開催。世界戦デビューのRSC王者SVGが、WRC2でいきなりの3位表彰台を獲得
アイテナリーこそ木曜シェイクダウンの土曜フィニッシュと、世界選手権とは異なるスケジュールで進行したものの、その競技区間は総距離235.52km、全14SSが設定され、今季ERC最長のラリーとされた。
その幕開けとなる4.21kmのシェイクダウンは、ダンプコンディションの路面状況で始まると、長年の悲願とも言えたブランド初のFIAヨーロッパ・タイトルを獲得したチームMRFタイヤの2台が躍動。昨季までスズキ・モーター・イベリアに所属し、キットカーの『スズキ・スイフトR4LLY S』でERC2王者に輝いたハビエル・パルド(シュコダ・ファビア・ラリー2エボ)がトップタイムを記録し、それに新チャンピオンのヤレーナが続いてMRFがワン・ツーをマークする。
そんなスペイン勢に0.3秒差で喰い下がったのが、ターマック戦を中心に今季のERCに挑戦してきたボナートで、5月のラリー・イソラス・カナリアスや、7月のラリー・デ・ローマ・キャピタルなどで、ヤレーナとのパワーステージ直接対決を繰り広げたフレンチマンが、今回も主要コンテンダーであることをアピールする展開となった。
「ヨアンとまた戦えることを本当に楽しみにしているよ。彼とは今年も昨年も楽しい戦いができたし、カナリア諸島では最後に同タイムを刻んだ。ローマではコンマ3秒差で打ち負かされたけどね。今週末は自分のペースが発揮できる地元だし、少なくとも1秒差をつけて勝ちたいと思っているよ」と、ボナート同席のプレスカンファレンスで意気込んだ新チャンピオン。
■日が暮れるにつれて、ボナートが容赦なくリードを拡大
その宣言どおり、明けた金曜SS1から3.6秒のマージンを稼いだヤレーナだったが、続くSS2ではボナートがすぐさま反応。レグ最長22.64kmのSS3では5.4秒差で新王者を追い越し、早くもタイムテーブルをひっくり返したボナートがラリーリーダーの座に躍り出る。続くSS4でも1.9秒を稼いだフランス人は、午前のループだけで4.2秒差としてサービスに還ってきた。
「カナリアスとローマの後、僕らもエフレンとの別の接戦を期待してここに来ている。とくに最初のふたつのステージと最後のステージは、難しいコンディションでパンクしないよう気をつけたが、ミシュランはうまく機能してくれた。この後、今晩に向け暗くなってからの(ループ)ステージも楽しみにしている」と、有言実行のドライビングを披露したボナート。
午前のSS1と同じ展開で、午後のSS5こそ新チャンピオンが1秒にまでギャップを詰める反撃の姿勢を見せたものの、日が暮れるにつれボナートが容赦なくリードを拡大し、暗闇のSS7で8.6秒も新王者を引き離すと、最終SS8のキャンセルもあり18.5秒のマージンで夜を越す展開とした。
明けた土曜もその勢いを維持したシトロエンの有望株は、午前のSS9とSS10で21.3秒までアドバンテージを拡大していく。
「もちろん、初優勝を狙う予定さ! ミシュランタイヤは長いステージでうまく機能しているし、午後も同じように続けたい。今季の他のラリーではそうだったが、今回は最後にエフレン(・ヤレーナ)と僕のギャップがそれほど接近していないことを願っているよ(笑)」と、この時点である程度の余裕を築くことに成功したボナート。
午後の最終パワーステージであり、このラリー全体の最長SSとなった24.18kmの“El Montmell 2”も制したボナートは、最終的に13.8秒のマージンを守ってERC初優勝を達成。全12SS中7SSでベストタイムを奪取する完璧なラリー運びで自身4度目の出場となったイベントを支配し、ランキングでも9位から3位へとジャンプアップする鮮烈な結果を残した。
「信じられない結果だよ! 僕はとても幸せだ。この勝利にはコドライバーやチームはもちろん、ここで完璧なタイヤを提供してくれたミシュランまで非常に多くの人々に支えられたもの。本当に感謝している。それにしても、驚くべき結果だね!」と、シリーズ初勝利喜びを爆発させたボナート。
一方、地元ヒーローのヤレーナも、凱旋クルージングとばかりにチームメイトで同郷のパルドとともにポディウムの両脇を固め、初戴冠を決めた記念すべきシーズンを締め括る結果となった。
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