自律運転レーシングシリーズ”A2RL”にシーズン2から参戦することを表明したセルブスジャパン(TGM Grand Prix)の池田和広代表が、レーシングチームがAIのレーシングシリーズに参戦する強み、そして狙いについて語った。
今週末鈴鹿サーキットで行なわれているスーパーフォーミュラの最終ラウンド。ここで、スーパーフォーミュラと同じSF23シャシーを使うアブダビ発の自律運転レーシングリーグA2RLのデモ走行が行なわれる予定になっており、金曜日(11月8日)にはテスト走行が行なわれた。AIが”ドライブ”するマシンと、”人間”である元F1ドライバーのダニール・クビアトがドライブするマシンが鈴鹿サーキットを前後を入れ替えながらランデブー走行。大きな注目を集めた。
【ギャラリー】人が……乗ってないだと!? スーパーフォーミュラを使った自律走行レース『A2RL』が鈴鹿でテスト
そのテスト走行の後に記者会見が開かれ、大津弘樹とJujuを擁してスーパーフォーミュラに参戦中のTGM Grand Prixの池田代表が出席。A2RLのシーズン2に参戦することが明らかにされた。
A2RLに参戦中のチームは、大学などの研究機関が中心。レーシングチームとしてのエントリーは、TGM Grand Prixが初となる。A2RLはシャシーやエンジンがワンメイクであるだけでなく、マシンの車高などセッティングをいじることも許されていない。AIだけが、唯一開発できる部分だ。
そんなシリーズに、AIの専門家集団ではないレーシングチームであるTGM Grand PrixがA2RLに参戦すると、どんなアドバンテージを見出せるのか?
「AIを開発していくレース、プログラミングしていくレースって何なんだろうと考えた時に、分かりやすいなと思ったことがありました」
そう池田代表は切り出した。
「それはエンジニアにヒアリングして学んだことなんですが、AIを開発するということは、例えて言うならば、ブレーキングをどこまで我慢できるかということだと思います」
「シミュレータの上では、最初はマージンを持って(ブレーキングポイントを)設定します。でも、シミュレータ上ではもっと攻めて、ここまで行っていいよという指令を出すこともできます。でも、それを実車でやろうとしたら、もう危なくて走れない。だから、もっとマージンを持たせるはずです。そういう設定を、AIにどんどんしていきます」
「それで走行を重ねていくと、AIは自動的に、レーダー(電波で対象物との距離などを測定する装置)とかLiDAR(ライダー/光によって対象物の距離などを測定する装置)で学習していきます。次の周はもっといけるというのをAIが自分で判断して、どんどん学んでいきます」
「もちろんそれはブレーキだけじゃなく、他の色々な要素にもあります。エンジニアたちがそういう部分をプログラミングしていく、そういう競争になっていくと理解しています」
そう語る池田代表は、レーシングチームが持てるアドバンテージについて、次のように語った。
「そんな中で我々のようなレーシングチーム、スーパーフォーミュラの車両を使っているチームにとってのメリットとかアドバンテージがどこにあるかということですが、それはレースで使っているシミュレータと繋げることができるかもしれないというかもしれません」
「マシンの速度が上がってきた時に、どのようにタイヤが発熱し、その発熱したタイヤがどう作用するか、規則的、不規則的なところをどうプログラミングしていくかという部分が、非常に難しいと思います。シフトロックやブレーキロックなどは、人間だったら感覚ですぐに察知して、カウンターを当てたりしますけど、A2RLはそれも全てプログラムして対処しなければいけないです。膨大な量のプログラムが必要だと思います」
「我々はセッティングのシミュレータ、ドライビングのシミュレータを、自社開発でやっています。そこにプログラムを入れ込んだらどうなるだろう……今後はそういう風に繋がっていく可能性があると思います。そこは強みかもしれません」
「普通の人には、レーシングカーの速度が上がったらどうなるのか……そういうのはイメージできないと思います。でも我々ならそれはイメージできる。それも大きな強みだと思います」
そして培われた技術は、今後世間で必要になってくる技術の基礎となる可能性があると、池田代表は主張。それが、ビジネス面でもA2RLに参戦するメリットになるかもしれないという。
「自動運転車の開発という面でいえば、他の国なども含めれば確立されているものもあると思います。でも、ここまで高速で、サーキットで、しかも不確定要素や無駄な部分をなくしたレーシングカーとしてはこういう動きだなと確立された部分に、AIのプログラムで自動制御するという面を入れるということは、世界中を見てもチャレンジしているのはここだけしかないと思います。だからそこに挑戦していこうと思いました」
「色々な意見があるかもしれません。でも、この先自動運転がどこまで高速になるかは分かりませんが、(ここで培われる技術は)必ず必要なテクノロジーだと、我々は考えています」
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