“インディ500で4勝するドライバーは、もう二度と出現しないかもしれない”
“少なくとも当分の間は無理だろう”
佐藤琢磨が連覇に挑んだインディ500、NHK BS1で完全放送。5月31日18時から
これらがインディ500をよく知る人たちの間で広がりつつあった考え方だった。そんな声を嘲笑うかのように今日、エリオ・カストロネベス(メイヤー・シャンク・レーシング)が4勝目を飾った。それも、実に見事な戦いぶりによってだ。
ゴールを前にアレックス・パロウ(チップ・ガナッシ・レーシング)を相手に抜きつ抜かれつのバトルを展開したカストロネベスは、残り2周となった直後のターン1でトップを奪い、そこからパロウを振り切ってゴールまで突っ走った。
2009年以来となるインディ500での優勝だ。3勝目から11年という長い時間を挟み、ついに4勝目は達成された。
今年は若手も大活躍。ベテラン勢も奮起して激しいバトルが展開された。そして、それを制したのは46歳のブラジル出身ドライバーだった。
マシンを降りて金網に登る“スパイダーマン”を披露。ヘルメットを脱いでからはストレートを自ら走ってファンにガッツポーズを見せた。サービス精神旺盛なカストロネベスならではの勝利の祝い方だった。
「優勝できてとても嬉しい。4勝目が挙げられたなんて信じられないぐらいだ。インディアナポリス500マイルレースが大好きだ。ファンが力を与えてくれた。偉大なるドライバーたちの仲間入りができることは大きな喜びで、大きな誇りだ」
「今日はファンと一緒に勝利、そしてインディ500が以前と同じように開催されたのを祝うこともできた。チームのためにも勝利を挙げることができてハッピーだ」とウイナーは語り、「アンドレッティ・オートスポートのマシンは“500”でずっと速く、彼らと提携しているチームからの出場ならマシンは良いはずだから、勝つチャンスはあると踏んでいた」ともコメントした。
インディ500で最初に4勝を挙げたのはA.J.フォイト(1961、1964、1967、1977年)。次がアル・アンサー(1970、1971、1978、1987年)。3番目がリック・メアーズ(1979、1984、1988、1991年)。
もしかしたら最後になるかもしれないと思われていた3人目のメアーズが4勝を達成してから、今年は30年目だった。
2009年に3勝目を挙げた後、カストロネベスは二度も悔しい2位フィニッシュを経験している。2014年のライアン・ハンター-レイを相手にしたレースと、2017年の佐藤琢磨に敗れたレースだ。
今年が21回目のインディ500挑戦だったカストロネベスだが、過去20回のレースを一緒に戦ったチーム・ペンスキーからではなく、メイヤー・シャンク・レーシングからの出場となっていた。
ペンスキーは若いスコット・マクラフランを4台目に起用。カストロネベスのシートはなくなり、彼はどこか違うチームを探さねばならないこととなった。名門チームから放出されてしまった形になっていた。
インディ500で18回も優勝しているチームを離れた途端、新興チームで優勝。しかも、それはそのチーム=メイヤー・シャンク・レーシングにとって、インディ500での初勝利であり、インディカー・シリーズにおいても初めての優勝となった。
敗れたパロウも清々しかった。
「2回目のインディで2位フィニッシュできた。良いレースを戦えたと思う。この勝利を逃したのは確かに悔しい。しかし、今日のエリオは勝利に値する戦い方をしていた」と彼は語った。
今日のレースはフルコースコーションが18周と少なく、200周のレースは2時間37分19.3846秒で終了。平均時速は190.690mphとなり、2013年の187.433mphを上回ってインディ500の新記録となった。
昨年のレースで見事な勝ちっぷりを見せた佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、マシンにあと少しのスピードが不足している戦いがスタートから続いていた。
しかし、展開も味方につけてポジションを上げていき、ピットストップでの調整でマシンの戦闘力も上がっていった。レースが終盤を迎えた時、彼には勝負のチャンスあると映っていた。
ところが、ここでレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングのピットは燃費作戦の大ギャンブルに打って出ることを決めた。そして、それは失敗。ゴール前6周でピットに向かい、優勝争いからは大きく離れた14位でのゴールに甘んじることとなった。
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