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消えたのは夫婦喧嘩!? カーナビの普及で激変した「道案内」とドライブの備え

掲載 更新 21
消えたのは夫婦喧嘩!? カーナビの普及で激変した「道案内」とドライブの備え

 カーナビがすっかり当たり前の存在になっている現代の自動車社会。今やカーナビがなかった時代を知っているはずの中年以上の世代ですら、カーナビがなかった当時、知らない道をどうやって走っていたのか忘れつつあるという。

 そこで今回は、カーナビ普及の歴史を振り返りながら、カーナビが普及していなかった時代の運転術についてプレイバックしてみようではないか。まだカーナビがなかった頃からバリバリ運転していた熟年世代の自動車評論家、清水草一がナビゲートする。

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文/清水草一 写真/フォッケウルフ、清水草一、本田技研工業、トヨタ

[gallink]

■普及までの4つのエポックとは?

スマホが普及するのと同様、ディスプレイ技術の進化とともに、タッチパネルは当たり前になる

 いまやクルマにナビゲーションシステムは必需品。総務省が発表した2014年の白書によると、「7割程度の乗用車にカーナビが搭載されている」とのことだが、カーナビの出荷台数を見ると、2010年以降毎年500万台を超えており、2019年には604万台になっている。乗用車の年間販売台数(新車)は約500万台だから、現在の装着率はもっと高いはずだ。

 近年は車載ナビがなくても、スマホが超高性能ナビになる。そちらもナビとして換算すると、ナビを使っている乗用車の割合は9割以上ではないだろうか。そんなカーナビの歴史を振り返ると、4つの大きなエポックがあった。

【1981年】
ホンダが2代目アコードに世界初のカーナビを搭載。まだGPS機能はなく、自車位置の測定は速度センサーとジャイロに頼っていたので、箱根のワインディングをちょっと飛ばすと、どんどん自社位置が狂い、海の上になってしまった。

【1990年】
パイオニアが、後付けカーナビとして初のGPS機能を持った『サテライト・クルージング・システム カロッツェリアAVIC-1』発売。「道は星に聞く」というカッコよすぎるCMコピーが脳裏に焼き付いたが、価格はセットで約50万円と非常に高価だった。

【2000年】
アメリカが民生用GPSの位置情報精度を大幅に引き上げる。これによって車速センサーやジャイロの情報がなくても、GPSのみでほぼ自車位置が表示可能になった。

【2011年】
スマホのグーグルマップに渋滞情報が表示されるようになる。以後、スマホが最高の性能を持つナビへと成長していく。

 これらの技術的進歩により、21世紀に入るとカーナビは爆発的に普及。紙の道路地図にとって代わった。現在は、ほとんどのドライバーがカーナビに依存している。東京ではタクシードライバーすら、カーナビなしには仕事ができなくなっている。

■カーナビがなかった頃の運転方法

筆者が家宝にしている道路地図たち。右は父から受け継いだ1968年のもの。もはや古文書だ

 逆に言うと、カーナビが当たり前の時代になってから免許を取ったドライバーは、「昔の人は、カーナビなしでどうやって運転していたの?」と、疑問に感じているだろう。実際、知らない場所に行く場合、昔のドライバーはどうやって運転していたのか。

<その1>予習として地図を熟読し、道順を頭に叩き込む。
<その2>出発。道路案内標識を見ながら進む。
<その3>膝の上に地図を開いて起き、信号待ちなどの間にチラチラ見る。
<その4>不安になると停車し、地図をしっかり見て道順を確認する。
<その5>助手席の人に地図を見てもらい、道順の指示を得ながら運転する場合もアリ。

 しかしこれらには、それぞれ大きな欠点があった。

<その1>目的地が近ければなんとかなるが、遠い場合、すべてを頭に叩き込むのは非常に難しい。
<その2>昔は、道路案内標識が今よりはるかにお粗末で、大変わかりずらかった。
<その3>地図をじっくり見られないし、わき見運転になると危険。
<その4>いちいち止まらなければならないので面倒くさいし、安全に止まれる場所もそうない。
<その5>助手席の人が方向音痴だと必ず迷う。夫がドライバーで妻がナビゲーターという場合、夫婦喧嘩が多発。

 それでも、これら5つを組み合わせることで、なんとか未知の目的地にたどり着いていたのである。

 私個人は、幼少期から地図マニアで、地図を読むのが趣味ですらあったので、<その5>は使わず、1から4までで、ほぼ間違うことなく目的地に到着できた。高速道路およびそれに並行する国道の渋滞時には、地図を見ながら延々と抜け道を駆使。その場合は、家々のベランダの向きから南がどちらかを推測するなど、戦国武将並みの観察眼も併用した。

筆者が大切に保管している海外の道路地図(写真はドイツのもの)。もう使うことはないと思うと涙が出る


  海外ドライブの際は、現地に着くと、なるはやで詳細な道路地図を入手。隣国までカバーできない場合は、行く先々で道路地図を買い足しながら進んだ。

 現在は海外でもスマホのグーグルマップが使えるようになったため、そういった手間は一切なくなった。自分の特殊技能が不要になった虚しさを感じるが、やはりウルトラ便利である。

■地図が好きならともかく……方向音痴たちの苦悩!

 では、方向音痴のドライバーはいったいどうやって生き抜いてきたのか。方向音痴を自認する2名のドライバーに聞いてみた。

<自動車ライター・伊達軍曹の場合>

「おっしゃるとおり、上記5つの方法を組み合わせて走っていましたが、ほぼ必ず迷うので(笑)、それを見越して早めに出発していました。愛車は常に古めの中古車だったため、ナビの導入は十数年前のポータブルが初めてでしたが、なんとすばらしい発明かと感動しました」

「現在はもっぱらスマホナビを使用しており、道を間違えるケースは激減。それでも出発地点の駐車場等から出る際は、左右どちらに行くか、だいたい間違えます。押忍!」

 現在のナビ最大の弱点は、道路に隣接する駐車場から出る場合、左右どちらに行けばいいのかわかりずらいことだ。ナビが「自車が道路上にいる」と誤認するため発生する、小さな問題点である。

<自動車ライター・マリオ高野の場合>

「方向音痴にかけてはワールドクラスの自信があります。ナビがなかった時代は、道に迷うことは当たり前でしたので、特に何とも思いませんでしたが、ディーラーマン時代、約束の時間までにクルマを届ける等の業務においては、自分が今どこにいるのかサッパリわからない状態で、『なにやってんだバカ! 早く来い!』等の矢の催促を食らうと、精神的に極限状態に追い詰められます」

「最も苦手なのは住宅街で、すべての場所が同じ風景に見え、ホワイトアウト状態に陥るのであります。その点、高速道路は非常にわかりやすく、入口で左右を間違えても、次のインターで降りて引き返せばいいので被害は軽微なのですが、高速でも首都高だけは迷路のようで、住宅街同様の状態になりました。首都高では停車することもできないので、ひたすら走り続けるしかなく、出口の見えない絶望状況に陥るのが常でした」

「自家用車にナビを付けたのは、十数年前のガーミンナビ(ポータブル)が初めてでしたが、迷う回数が激減し、神のような機械に出会ったと思いました。現在は、クルマならヤフーカーナビ、徒歩等ではグーグルマップを使用しておりますが、完全にナビに頼るようになったため、方向音痴に拍車がかかったと自覚しております」

 このように、昔は方向音痴サンにとって、とても生きずらい世の中だった。方向感覚の平等化を実現したナビの偉大さに、改めて感服する。

[gallink]

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みんなのコメント

21件
  • 家の車の内蔵型カーナビが古くて使えない。更新も出来ないみたいだし。
    カーナビよりも、Googleマップとストリートビューで予習をしていった方が慌てなくて済む。
  • 地図すらまともに理解できない人、脳の方は運転すべきでない
    脳の機能が運転に適していない
    そこを自覚したうえで、後続の流れに気を遣い、後ろに車が来たのであれば常に譲るとしているなら問題ないとは思うがそんな人ができていると思える状況に遭遇するのは非常に稀
    合流や小道から大きな道路に出てくるときに、相手との速度差を考慮し判断する。また、後続車の妨げにならないように速い車が後ろから来れば行かせる、要するに相手にブレーキを踏ませないようにする
    そうするだけで煽られることなんてほぼ無くなるのに、煽られる人はいつまでも同じことを繰り返して同じように煽られてるようにしか見えない
    当然、煽るのはダメだが
    道交法には最初に円滑に流れるようにと書いてある
    ルールが、法律がと言う人ほど、今一度ちゃんと道交法を最初から読むべき
    大元は円滑な交通の流れということを分かってから、全員が運転すべき
    速度を上げるということでは、当然ない
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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