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ハイテックGPとVAR。FIA F2新興勢力の意外な歴史【海外レーシングチーム解体新書/第3回】

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ハイテックGPとVAR。FIA F2新興勢力の意外な歴史【海外レーシングチーム解体新書/第3回】

 海外レーシングチームの歴史とバックグラウンドをお届けする不定期連載『海外レーシングチーム解体新書』。第3回は前回に引き続き、F1直下のフォーミュラシリーズ『FIA F2』からお届けする。今回登場するのは2020年代からFIA F2に参戦するハイテックGP、ファン・アメルスフォールト・レーシング(VAR)の2チームだ。FIA F2の新興勢力に数えられる彼らもまた、複雑な歴史を辿ってきた。

■ハイテックGP/元レッドブル・ジュニアがオーナー

2023年FIA F2参戦に参戦する22名のドライバーラインアップが確定。新人は9名/エントリーリスト

 ハイテックGPのオフィシャルサイトには『チーム設立は2015年』と表記されている。正確には、現在のチームオーナー兼チーム代表のオリバー・オークスが加入し、チーム名を『ハイテックGP』へと変更したのが2015年だ。オークスがオーナーとなる前、このチームは『ハイテック・レーシング』としてF3を主戦場に活動していた。

 ハイテック・レーシングは、ラッシェン・グリーン・チームのオーナーだったデニス・ラッシェンと、当時ジュニアドライバーのマネージャーだったデビッド・ヘイルが2002年12月に設立したレーシングチームだ。

 なお、ラッシェンは1982年に単身イギリスを訪れた若き日のアイルトン・セナをフォーミュラ・フォード2000で起用した人物としても知られている。

 もともとレース業界に長く携わったふたりが主導するチームなだけに、チーム設立からシルバーストン近郊のワークショップの確保、さらにF3車両・エンジンなどのパッケージも揃え、オウルトン・パークでシェイクダウンを行うまで8日間しか時間をかけなかったというから驚きだ。

 チームは2003年シーズンのイギリスF3からレース活動をスタートさせた。以降、長きにわたりイギリスF3を主戦場としていたハイテック・レーシングだが、2005年には設立初年度のGP2にネルソン・ピケ率いるピケ・スポーツと提携し、『ハイテック・ピケ・スポーツ』として参戦しており、F1直下への進出は以外にも早かった。

 チーム国籍はハイテック・レーシングの母国イギリスで登録されたが、シーズン中盤にピケ・スポーツとの提携は解消に。GP2チームは以降、ピケ・スポーツが運営することとなり、翌年からチーム国籍もブラジルへと変更された。

 2011年をもってそれまでの主戦場だったイギリスF3から離れ、ブラジルや南米地区のF3に参戦。南米では善戦するも、ヨーロッパでの活動は徐々に見られなくなりつつあった。

 一時的な活動休止状態となる期間も挟み、2015年にかつてレッドブル・ジュニアチームにも所属した元レーシングドライバーのオリバー・オークスがチーム代表に就任したことでハイテックは大きな変革を迎える。

 当時27歳と若かったオークスだが、レーシングカートでは『チーム・オークス・レーシング』を率いており、チーム運営には知見があった。

 オークスがチーム代表となり、チームは名称をハイテックGPへ変更すると、翌2016年からFIAヨーロピアンF3選手権に参戦。ジョージ・ラッセル、ニキータ・マゼピンを起用し、ラッセルがドライバーズランキング3位に入り、チームランキングでも2位という結果を残した。また、2017年には牧野任祐、2018年にはアレックス・パロウが在籍している。さらに、2018年にはラウル・ハイマンとともにF3アジアのタイトルを獲得。F3アジアでは翌2017年にも笹原右京がタイトルを獲得し、ハイテックGPが連覇を果たしている。

 2019年に現在のFIA F3が立ち上がりハイテックGPも参戦を開始、2021年シーズンにはレッドブル&ホンダ育成の岩佐歩夢を起用した。そして、2020年よりFIA F2へもエントリーし、2023年シーズンはジャック・クロフォードとアイザック・ハジャルというレッドブル育成のルーキー2名を起用する。また、FIA F3ではセバスチャン・モントーヤを、英国GB3選手権で荒尾創大を起用するなど、レッドブル・ジュニアチームとの関係が深まりつつある。

 チームとしての活動と並行して、ハイテックGPは2019年のWシリーズや2020年のFIAモータースポーツ・ゲームス・F4カップの車両『KC.MG-01』のメンテナンス面で協力。また、かつてジョーダンやルノー、ケータハムF1でテクニカルディレクターなどの要職を務めたマーク・スミスを筆頭とする技術部門『ハイテック・テクノロジー』を社内に立ち上げ、車両の設計・研究開発といった業務も行なっている。

■ファン・アメルスフォールト・レーシング/創業48年の老舗

 HWAレースラボのエントリーを引き継ぎ、2022年シーズンよりFIA F2に参戦を果たしたファン・アメルスフォールト・レーシング(VAR)。FIA F2では新興勢力に数えられるが、チームの創業は48年前まで遡る。

 オランダの自動車整備士だったフリット・ファン・アメルスフォールトはザントフォールト・サーキットで開催された1967年のF1オランダGPを観戦。以来、モータースポーツの虜となったフリットは自身の名を冠したファン・アメルスフォールト・レーシングを1975年に結成した。

 活動初期はオランダ・フォーミュラ・フォードやフォーミュラ・オペル/フォーミュラ・オペル・ロータスといったローカルなミドル・フォーミュラレースを主戦場としていた。初のメジャータイトルは1989年のオランダ・フォーミュラ・フォード1600と、チーム創設から14年が経過してからだった。

 ただ、1992年にレーシングカートでその名を馳せたヨス・フェルスタッペンがVARで四輪デビューを迎え、フォーミュラ・オペル・ロータス・ベネルクスで9戦中8勝という強さを見せつけ、シリーズタイトルを獲得する。それ以降、トム・コロネル、バス・ラインダース、クリスチャン・アルバース、カルロ・バンダム、ローレンス・ファントールといった有力ドライバーを次々と起用し欧州ミドルフォーミュラにおいて頭角をあらわにしていく。

 2014年にはマックス・フェルスタッペンがVARで本格的な4輪レースデビューを果たす。ヨスに続いてマックスと、フェルスタッペン家を2代にわたりVARが支えることになったが、マックスは2014年のFIAヨーロピアンF3で10勝をマーク。同年中にレッドブル・ジュニアチームに所属することとなり、翌年のF1デビューへと繋げた。フェルスタッペンの好成績の影響か、以降ミック・シューマッハー、シャルル・ルクレール、デニス・ハウガー、オリバー・ベアマンといったドライバーがVARからFIA F4やF3に参戦している。

 FIA F2デビューシーズンとなった2022年は11チーム中10位と苦戦し、未だ表彰台登壇はない(第3戦ジェッダのスプリントレースでジェイク・ヒューズが3位チェッカーも技術的違反を理由に失格と判定が下されている)。ただ、ヨーロピアンF3で強さをみせたVARだけに、いずれ強豪の一角として数えられるような活躍が見られるだろう。オランダチーム初のFIA F2チームタイトルはMPモータースポーツにさらわれたが、オランダの老舗レース屋の本領発揮はこれからに違いない。

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