スポーティな見た目を裏切らない動力性能
2025年に発売予定の次世代BMW、ノイエクラッセ・シリーズは、バッテリーEV専用のプラットフォームを採用する。それまでは、マルチパワートレイン戦略に則り、内燃エンジン版と基礎骨格が共有される。
【画像】BMWのクーペSUVにEVも出た! 新型iX2 xドライブ30 サイズの近いモデルはコレ 全143枚
今回のiX2は、既存のiX1と同じUKLプラットフォームがベース。その名前のとおり、2代目X2のバッテリーEV版となる。3代目のミニ・カントリーマン(旧クロスオーバー)とも、血の繋がりは濃い。
内燃エンジン版と電気モーター版を併売することで、市場によって大きく速度感が異なる、自動車の電動化へ柔軟に対応できる。英国でも両者を選べるが、販売の92%はiX2が占めると予想されている。
かなりの割合に思えるが、これは2030年代初頭までを見据えた数字。その頃には、殆どの新車がバッテリーEVになっているはず。
iX2の全長は4554mm。iX1より54mm長い。ホイールベースは2692mmで、タイヤはボディの四隅へ位置する。内燃エンジン版との見た目の違いは、かなり限定的だ。
駆動用バッテリーの容量は66.5kWhで、フロア下に敷き詰められる。フロントアクスルを駆動するシングルモーターのほか、リアアクスルにも追加される、ツインモーターも用意される。
当初用意される、シングルモーターのiX2 eドライブ20 Mスポーツは、203psと25.3kg-mを発揮。試乗車だったツインモーターのiX2 xドライブ30では、312psと50.2kg-mまで向上する。スポーティな見た目を裏切らない、動力性能といえる。
iX1で見慣れた光景のインテリア
航続距離は、iX2 eドライブ20で478km。xドライブ30では428kmへ短くなる。SUVとしては低めのボディのおかげで、iX1より約9km長い。
iX2 xドライブ30の電費は、カタログ値で4.5-5.6km/kWh。今回はポルトガルの一般道で試乗したが、現実的な距離は350km前後のようだ。急速充電能力は、最大130kWまで。韓国のジェネシスGV60は260kWへ対応しており、際立つ性能ではない。
インテリアは、iX1で見慣れた光景。望ましい位置に操作系がレイアウトされ、シートは座り心地が良い。複数のトリムグレードを選べ、一部は若者を強く意識しているが、プレミアムな雰囲気では共通する。装備は充実しており、スポーツシートも標準だ。
リアシート側の空間は、クーペ風のルーフラインを考えれば、高さ方向にも余裕がある。荷室容量は525Lと充分だが、内燃エンジンのX2よりは小さい。実際の使い勝手では、スクエアな形状のiX1が勝ると思うものの、強い不満は出ないだろう。
インフォテインメント・システムも、基本的にiX1と同一。英国仕様はライブコクピット・プラスが標準で、10.25インチのメーター用モニターと、10.7インチのインフォテインメント用タッチモニターが滑らかに弧を描く。
ロータリー・コントローラーがなく、システムの操作には若干のもどかしさを伴うが、最新バージョンは直感的。音声操作システムも利用可能で、USBポートも多数ある。
ちなみに、インフォテインメント用モニターではゲームも遊べる。手持ちのコントローラーを接続できるという。
車重を忘れるパワフルさ 操舵は僅かにダル
ツインモーターのiX2は、2020kgの車重を感じさせないほどパワフル。アクセルペダルの操作に対し即座にトルクが立ち上がり、爽快な加速が始まる。0-100km/h加速は5.6秒で、最高速度は180km/hでリミッターがかかる。
ドライブモードは3種類。パワートレインとステアリング、サスペンション、スタビリティ・コントロールが連動して変化する。
回生ブレーキは、ブレーキペダルを踏まずに停止できる、ワンペダル・モードを含めて3段階。強さは自動的に調整され、パドルで調整できるような仕掛けはない。前方の道路や交通状況を判断し、自動的に強さが変化する、アダプティブ・モードが備わる。
ステアリングホイールの裏にあるのが、ブーストパドル。1度引くと、10秒間、通常より鋭い加速を引き出せる。試すと案外楽しいが、多用すれば航続距離は短くなる。
軽くない駆動用バッテリーと、2シリーズ・グランクーペより高めの重心位置で、身のこなしはクーペ風のシルエットほど軽快ではない。乗り心地は全般的に良好。よほど酷い路面でない限り、落ち着きが保たれていた。
ステアリングは感触が薄く、反応の精度もBMWの期待値には届いていない。iX1と同じように、僅かなダルさがあり、運転を楽しみたいドライバーが魅力を感じることはないかもしれない。
ファミリー・クロスオーバーらしく、リラックスした気持ちで走らせるのが合っている。快適性は低くなく、長距離ドライブも安楽だろう。
シングルモーター版の方が訴求力は上?
サスペンションは、アダプティブダンパーが標準。減衰特性はドライブモードによって制御され、個別に変更はできない。
スポーツ・モードを選ぶと、ステアリングホイールの操舵感は重めに。そのかわり、乗り心地は明らかに硬くなる。試乗車が履いていた20インチ・ホイールも、足を引っ張っていたはず。
このクラスでは、充分に運転を楽しめるといえる新型iX2。プレミアム・ブランドらしい特別感があり、ファミリー・クロスオーバーへ適う快適性や実用性を得ている。スタイリングも重視する人には、訴求力の高い新モデルといえるだろう。
ただし、見た目ほどスポーティというわけではない。実際のところ、ドライビング体験はiX1に似ている。クーペ風のシルエットに、約7000ポンド(約132万円)の価値があると感じるかどうかは、人それぞれだ。
ツインモーターのiX2 xドライブ30は、必要以上にパワフルに感じられた。シングルモーターの方が、航続距離は僅かに長く、英国価格は5830ポンド(約110万円)もお手頃。今回は試乗できなかったが、iX2 eドライブ20の方が一層訴求力は高いかもしれない。
◯:不足ない加速性能を備えたパワートレイン 実用性を犠牲にしないスポーティな見た目 広々とし機能的なインテリア
△:際立つほど、運転が楽しいとはいえない 航続距離と急速充電能力は、もっと高めても良い
BMW iX2 xドライブ30(欧州仕様)のスペック
英国価格:5万7445ポンド(約1086万円)
全長:4554mm
全幅:1845mm
全高:1560mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.6秒
航続距離:416-428km
電費:4.5-5.6km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2020kg
パワートレイン:ツイン励起同期モーター
バッテリー:64.7kWh(実容量)
急速充電能力:130kW
最高出力:312ps
最大トルク:50.2kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
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