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プジョーの最新ミドルセダン508の系譜は、1948年の203から始まっていた【プジョー今昔ストーリー/その2】

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プジョーの最新ミドルセダン508の系譜は、1948年の203から始まっていた【プジョー今昔ストーリー/その2】

「温故知新」の逆というわけではないが、最新のプジョー車に乗りながら、古(いにしえ)のプジョー車に思いを馳せてみたい。今回は、最新のプジョーのフラッグシップセダンである「508」から、203や504など歴代のミドルセダンを振りかえってみよう。(タイトル写真は、上が203、下が現行型508)

現行型508はスタイリングも走りも出色の出来栄え
最近のプジョー車は先鋭的デザインで冴えわたっているという印象を持っているが、中でも508は出色の出来栄えだと思っている。低いセダンタイプの乗用車として、いかにも精悍なスタイリングで、その手があったかと感心するような斬新な手法で細部までデザインされている。さすがフランスは違う、というしかない。

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セダンと書いたが、正しくはファストバックである。流麗なルーフラインにしたことでスポーティさを強調され、セダンカテゴリーが絶滅危惧といもわれる日本市場の昨今、どこのブランドでも「ファストバック風セダン」は増えている。トヨタも大御所であるクラウンを、またセダンの復権を謳うカムリも驚くほど精悍なスタイルになって、正直に言うと筆者も魅力を感じている。ただ、その後に出てきたこの2代目508のスタイリングはそれ以上のインパクトがあり、これは脱帽するしかないと(勝手ながら、いち日本人として)思ったのだった。

走りについては、最上位モデルだから当然ともいえるが、プジョー各車の中でも最良の乗り味を提供している。SUVのように重心が高くないことと、電子制御ダンパーが採用されていることも良い乗り味の一因である。1.6L 直4ガソリンターボ搭載のGTラインに約500km試乗したときの記憶を辿ると、街中では上質なソフトさと同時にひきしまった硬さも感じられたが、ワインディング路で少し追い込んで走るとノーズの軽さ、そしてライントレース性は確かなまま「しなやかさ」ががぜん目立ってきた。

追い込んでいくと「馬脚を現す」クルマもある中で、508はむしろ柔軟な猫脚の威力というか減衰力がいよいよ発揮されるという感じだ。それなりに大柄なボディを持つためワインディングで「痛快に走る」というタイプではなく、逆にスムーズさを際立たせ、快適な長距離クルージングを楽しむことができる。

戦後のプジョーは「203」が出発点だった
過去をふりかえると、500シリーズというのは、プジョーの伝統的な3ケタ車名モデルとしては意外に歴史が新しい。最初に誕生したのは1968年の504であり、しかも次の505の後しばらく欠番になって、2010年の先代508で久々に復活している。もっとも、今は最上級の600シリーズと下の400シリーズも欠番で、508がそれらもまかなっており、まさにセダン不遇の時代といえそうだ。

504はそれまでの400シリーズから発展して誕生したモデルで、さらにさかのぼると戦後最初に出た、1948年の203が出発点になっている。203は、数字こそ200番台だが、300か400でもよさそうなくらいの中級モデルだった。プジョーは戦争中に受けた損害が大きく、終戦後の当初は1モデル体制で操業するしかなかった。

その際、当時のフランスで自動車に対して行われていた課税基準「課税馬力」のCV(馬力)区分において、他メーカーと住み分けするよう考えられた。同じくフランスメーカーのシトロエンは、税制で2CVクラスにあたる「2CV」と11CVクラスの「トラクシオンアヴァン」を、そしてルノーは4CVクラスである「4CV」をラインアップしていた。こうしたモデルたちと真っ向から競合しないように、プジョーは6CVクラスにあたる「203」を開発したのだ。

戦後のプジョーは当面、この中級クラスの1モデル体制を展開していくことになった。ただし、段階を追って復興した市場に対応するよう上級化を図る。1955年に投入したのが7CVクラスの「403」であり、1960年の8CVクラス「404」である。

ミシュラン製のラジアルタイヤを履きこなした「足」
403も404も、203の設計を更新して少しずつ大型化したもので、ここにプジョーの堅実さが現れている。もちろんその裏には、戦後の復興にむけて進んでいるメーカー自身の状況もあり、慎重な経営をするしかなかった。そのためか、この時代のプジョー車は「地味だが堅実」と評されるのが常だったのだ。そのかわり、堅実な商品開発の成果で品質の良さと耐久性はずば抜けており、それがプジョー車の評価を高めた大きな要素にもなっていた。

もちろん地味なだけではなく、走りの良さも定評があった。ロールはするけれども、ロードホールディング性に優れており、一見保守的なFRであっても、玄人好みで的確な設計がなされていた。

また「地味だが堅実」なクルマづくりばかりではなく、最新技術を取り入れて使いこなすため対策を行う先進性も持っていた。戦後すぐ世界に先駆けてミシュランが発売したラジアルタイヤを、プジョーは203に履かせていたのだ。

ラジアルタイヤは従来までのバイアスタイヤより硬く、快適な乗り心地を保つための対策が必要だった。そこでプジョーは、路面からのショックを逃す機構、今では当たり前となっているサスペンションのコンプライアンスを早くから採用した。今に受け継がれるプジョー伝統の職人芸の足さばきは、この頃すでに確立されていたようである。

経営状況も回復し始めていた1968年、404の後継モデルとして初めて500番台にステップアップした「504」が発表された。この頃には、下に204や304もラインアップするようになったことから、バランスをとって上の500番台へシフトしたというわけである。ただこの504も、かなり更新されていたといえ基本的に203以来の設計を維持しており、さらに次の505まで、その系譜は続いたのだった。(文:武田 隆)

[ アルバム : 現行型プジョー 508と、いにしえのミドルセダン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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