コンパクトSUVはここ半年ほどの間、トヨタのライズとヤリスクロスの売れゆきが絶好調。さらに、日産キックスが参入し、今年4月にはホンダヴェゼルがフルモデルチェンジするなど、さらなる盛り上がりが期待されるジャンルとなっている。
現在のコンパクトSUVブームは2013年登場のヴェゼルが火付け役となったものだが、小さめで手頃なサイズのSUVが人気になったのは最近だけじゃない。過去にも1990年代を中心に“シティ派クロカン”が大きな盛り上がりを見せていた。
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というわけで、本記事では1980年代後半から1990年代にも人気を集めたコンパクトなSUVたちを振り返ってみた。
文/永田恵一
写真/TOYOTA、SUZUKI、MITSUBISHI、DAIHATSU、HONDA、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】コンパクトSUVブームの起爆剤! 1980~1990年代に大ヒットした「シティ派クロカン」はこちら!!
■スズキ初代エスクード/1988年登場
発売当初は3ドアのハードトップとコンバーチブルの2種類のみの展開だった初代エスクード。エンジンは1.6Lの自然吸気。駆動方式は副変速機付きのパートタイム式4WDを採用
写真は1990年に追加された5ドア仕様車「ノマド」。ファミリーカーとしても使いやすく人気車となった
昭和の時代のSUVはトヨタランドクルーザーや三菱パジェロに代表されるクロカン(クロスカントリー)と呼ばれる本格的なオフローダーがほとんど。そのすぐれた悪路走破性が魅力でもあったが、その反面そこまで本格的なクロカン性能は必要なく、価格やボディサイズなどを過剰に感じる人も少なくなかった。
そこに目を付けたのが初代エスクードだった。初代エスクードはラダーフレームのボディ構造や副変速機付きパートタイム4WDという本格的オフローダーとしてのメカニズムを持ちながらも、内外装は乗用車的でボディサイズも小さめだったことで注目を集めた。
初代エスクードは3ドアボディでスタートしたが、1990年には全長を延長し5ドアボディとしたノマドが追加。キャビンとラゲッジスペースが拡大されたファミリーカーとしても使い勝手のいい5ドアのノマドは、エスクードの人気を後押しする存在となった。
なおエスクードは2代目モデルで7人乗り3列シートとしたグランドエスクードが加わり、3代目モデルはミドルSUVとなったこともあったが、現行型の4代目モデルではまたコンパクトSUVに回帰している。
■トヨタ初代RAV4/1994年登場
1994年5月、エスクードの人気に追従するように投入された初代RAV4。1995年10月に登場したホンダCR-Vとともにクロスオーバー人気の火付け役となった
初代RAV4は初代エスクードに影響を受けたコンパクトSUVで、3ドアボディでスタートしたことも初代エスクードと同じだった。
しかし、初代RAV4はパワートレーンを2L級のFFレイアウトの乗用車用を流用したうえ、モノコックボディを採用して今でいうプラットホームやサスペンションを使うなど、それまでの“クロカン”にはなかった乗用車ベースのコンパクトSUVというのが新しかった。
また、初代RAV4の3ドアボディのスタイルは今見てもキュートで、スペシャリティカーのような魅力も備えていた。
さらに初代RAV4は、初代エスクード同様に5ドアボディをデビュー翌年の1995年にラインナップ。
1996年のマイナーチェンジではスポーツモデル用である3S-GE型の2Lエンジン搭載車や、ボディ後半が幌となる3ドアのソフトトップ、内外装のカラーを多数のパターンで自由に組み合わせられるパーソナルセレクションを追加するなど、ラインナップの充実化が図られた。そして、2000年に2代目モデルにバトンタッチした。
なお、RAV4は2代目モデルまではコンパクトSUVだったが、2005年登場の3代目モデル以降はミドルSUVへとクラスアップしている。
■三菱パジェロJr./1995年登場
1994年発売の初代パジェロミニ。パジェロをそのまま軽自動車に押し込めたような単純明快なパッケージングが人気を博した
こちらが1995年発売のパジェロJr.。軽自動車のパジェロミニに大型バンパーとオーバーフェンダーを装着してボディサイズを拡大、4気筒の1.1Lエンジンを搭載した
三菱自動車は1990年代中盤までパジェロがドル箱的存在だったこともあり、1994年に3ドアのパジェロをそのまま軽自動車にしたようなスタイルを持つパジェロミニを発売した。
このパジェロミニは軽自動車ながら4WD+ターボとなる最上級グレードにオプションを多数装着すると200万円に届く高額車だったが、魅力的なモデルだったこともあり大ヒット車となった。
そのパジェロミニを前後バンパーの大型化とオーバーフェンダーの装着でボディサイズを拡大し、エンジンも4気筒の1.1Lとすることで小型車化したのが1995年登場のパジェロミニである。
ジムニーとジムニーシエラ同様の成り立ちを持つパジェロJr.は、パジェロミニに対して、動力性能に余裕ができたことによる燃費や悪路での扱いやすさ、オンロードでの走行安定性の向上といったアドバンテージを持っていた。
売れたのは軽自動車の維持費の安さなどもあってパジェロミニだったが、パジェロJr.はジムニーシエラにも通じるマニアックな魅力があった。
パジェロJr.は、5ドアボディのコンパクトSUVとなるパジェロイオが後継車として1998年に登場したことで絶版。パジェロイオも2007年に絶版となって以来、三菱自動車からコンパクトSUVは登場していない。
■ダイハツテリオス/1997年登場
クラス唯一の5ドアボディに、モノコックにラダーフレームを溶接したビルトインラダーフレームを採用。オフロードでの走破性を重視した大径ホイールを装着。写真の軽自動車のテリオスキッドはファミリーカーとして高い人気を誇った
1997年登場のテリオスは、翌1998年の軽自動車の規格改正の際に登場した軽のテリオスキッドも視野に入れて開発されたコンパクトSUV。エンジン縦置き構造の4WDとなる点など、ジムニーシエラやパジェロJr.に近い存在のコンパクトSUVだった。
ジムニーシエラやパジェロJr.とテリオスキッドの大きな違いは、ジムニーシエラとパジェロJr.が3ドアボディのみだったのに対し、テリオスキッドは5ドアボディのみだったことだ。
そのため、ジムニーシエラやパジェロJr.に対しテリオスキッドのほうが、ファミリーカーとしても使いやすいコンパクトSUVだった。
テリオスは2006年に後継車のビーゴが登場したことで絶版になり、ビーゴも2016年に絶版となった。しかし、その後継車的存在となる2019年登場のダイハツロッキー&トヨタライズが好調に売れているのは、空白期間はあるにせよ、ダイハツがコンパクトSUVを作り続けているメーカーだからかもしれない。
■ホンダHR-V/1998年登場
1998年に登場、2006年に国内での販売を終了したHR-V。2021年現在もヴェゼルの海外仕様としてHR-Vの名が受け継がれている
HR-Vは、当時ホンダがラインナップしたコンパクトカーのロゴやハイトワゴンのキャパと同じプラットホームを使い、1.6Lエンジンを搭載したコンパクトSUV。ポジションとしては初代RAV4に近いモデルである。
HR-Vもスペシャリティな雰囲気も持つ3ドアボディでスタートし、登場翌年に5ドアボディが加わった点は初代RAV4と同じだった。
しかし、HR-Vはキャビンやラゲッジスペースが狭いことや、コンセプトがわかりにくかったことが原因だったのか、日本での販売は低迷し、後継車はなく2006年で絶版となった。
ただ、HR-Vはヨーロッパではそのスタイルがウケたことで人気車となったこともある。現在のヴェゼルの海外での車名にHR-Vが使われている点は、HR-Vが残した功績といえるかもしれない。
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