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トヨタのライバル研究の凄さ……新型シエンタ3列シート収納法に技あり!!

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トヨタのライバル研究の凄さ……新型シエンタ3列シート収納法に技あり!!

 ミニバンの利点といえば、何といっても多人数乗車や多くの荷物が搭載できることだろう。そしてシートレイアウトなども売りとなるが、コンパクトミニバンの場合、スペースの制限が厳しいために工夫が必要となる。

 その中でも3列シート採用モデルとなると、3列目をどこに収めるかが大変だ。今回は、びっくりのからくりで3列目シートを収納するトヨタ シエンタの仕組みを解説しよう。

トヨタのライバル研究の凄さ……新型シエンタ3列シート収納法に技あり!!

文/渡辺陽一郎、写真/ベストカー編集部、TOYOTA、HONDA

■ミニバンの「見せ場」は3列目の格納方法!?

2022年8月登場のトヨタ シエンタ。乗車定員も幅広く、さまざまな使い方が可能なミニバンはシートアレンジが重視される。中でも3列目の格納方法は注目されるポイントだ

 ミニバンには3列のシートが装着され、乗車定員は6~8名とされる。そして3列目のシートを格納すると、広い荷室として活用できる。1/2列目のシートに4~5名で乗車して、自転車のような大きな荷物を積めるミニバンも多い。

 注目されるのは3列目の格納方法だ。大半の車種が左右に跳ね上げる方式を採用する。格納の仕方がシンプルで、片側だけ跳ね上げることも可能だから、乗車人数と荷物の量に応じてレイアウトを調節しやすい。

 この3列目の格納方法で注目されるのが、新型になったシエンタだ。3列目を2列目の下側に収めるから、格納されたシートが荷室へ張り出さない。しかも路面からリヤゲート開口部までの高さも505mmと低く、荷物の出し入れをしやすい。

 シエンタの3列目を2列目の下側へ格納できるのは、薄型燃料タンクの効果だ。燃料タンクを薄く造ったから、2列目の下側に空間ができて、3列目の格納も可能になった。

 そしてシエンタの薄型燃料タンクは、2003年に発売された初代モデルから採用されている。この開発の背景には、当時のホンダのミニバンに対するトヨタの強烈なライバル意識があった。

■ライバルを研究し刺客を送り込むトヨタ

2001年に登場したホンダ モビリオ。燃料タンクを前席の下に搭載して床を低く抑え、3列目でも無理のない着座姿勢をとることができた

 2010年頃までのトヨタは、国内で好調に売られるライバル車を徹底的にマークした。

 2000年にホンダが初代ストリームを発売して人気を得ると、トヨタは2003年にほぼ同じサイズの初代ウィッシュを投入して、販売合戦で勝利した。日産が1997年に初代エルグランドを発売して売れ行きを伸ばすと、トヨタは初代アルファードを開発して、2代目エルグランドの翌日に発売した。

 この流れでホンダが2001年に投入したコンパクトミニバンのモビリオも、トヨタからマークされた。

 モビリオは同年に発売された初代フィットと同様、燃料タンクを前席の下に搭載して、荷室の床を低く抑えていた。そのためにモビリオでは、3列目に座っても床と座面の間隔が十分に確保され、無理のない姿勢を取ることができた。

 全長が4055mmと短く、車内が広々とした印象は受けなかったが、全長が約4mのボディながら大人の多人数乗車も可能だった。

 このモビリオを倒すための「刺客」として開発されたのが初代シエンタだ。モビリオが燃料タンクを前席の下に設置して、3列目の床を低く抑えたから、初代シエンタは薄型燃料タンクを開発して同様の効果を得ている。

 そしてモビリオは、低床設計を生かして、3列目シートを2列目の下側に格納できた。その代わり3列目を格納する時は、2列目を一度持ち上げて3列目を畳み、その後で2列目を元に戻す手間を必要とした。

2003年登場の初代トヨタ シエンタ。薄型燃料タンクを開発し、モビリオ同様に3列目の居住性を改善したのと同時に、3列目のシートを薄くして2列目の下に片手で格納できるようにした

 そこで初代シエンタは、対抗手段として3列目を小さく薄手に造り、2列目の下側に片手で格納できるようにした。キャッチフレーズは「片手でポン」であった。モビリオの3列目は座り心地、対抗するシエンタは格納のしやすさに重点を置いたわけだ。

 モビリオは前席の下に燃料タンクを設置したことで、空間効率が抜群だったから、その後も同様のレイアウトを採用すると思われた。

 ところが2008年に後継車種として発売された初代(先代)フリードは、燃料タンクをボディの後部に搭載する一般的な設計に変わった。この影響で、初代フリードの3列目は、モビリオに比べて膝の持ち上がる着座姿勢になっている。

 初代フリードの全長は4215mmだ。仮にこの全長で、燃料タンクを前席の下に搭載するモビリオの方法を踏襲していたら、初代フリードの居住性は3列目を筆頭にさらに快適になったに違いない。

 そこで開発者に、初代フリードの燃料タンクを一般的な設置方法に変えた理由を尋ねると、「燃料タンクを前席の下に搭載すると、1列目の中央部分が持ち上がって車内の移動がしにくいため」と返答された。

 それでもモビリオの1列目の中央を見ると、床が極端に高いわけではない。燃料タンクの搭載方法を変更した理由は、いまひとつ理解しにくかった。

■3列目の試行錯誤でより快適なミニバンに

2015年登場の2代目トヨタ シエンタ。薄型タンクは継続採用されたが、3列目の格納にはひと手間増えることになった。2列目の下に3列目を収めるのは同様だ

 一方、シエンタは2015年に2代目へフルモデルチェンジして、薄型燃料タンクを継続的に採用している。しかし3列目シートの格納方法は変わった。片手では格納できず、2列目を持ち上げた後、その下側に3列目を収めるようにした。

 つまりかつてのモビリオと同様の操作方法だ。初代シエンタに比べると、格納時の手間は増えたが、シートのサイズも拡大して座り心地は向上している。

 モビリオがフリードにフルモデルチェンジされ、3列目の低床設計をやめたから、もはやシエンタがシートアレンジで対抗する必要はない。その結果、3列目の造りが以前のモビリオに近付いた。

 そして3代目の新型シエンタも、薄型燃料タンクと、3列目を2列目の下側に格納する先代型と同様のシートアレンジを踏襲する。プラットフォームの前側は、ヤリスやアクアと同じタイプだが、後方は異なる。薄型燃料タンクやスライドドアの採用に基づいて、独自の設計になった。

 新型シエンタに身長170cmの大人が多人数で乗車する場合、2列目シートの膝先空間を握りコブシ1つ分に調節すると、3列目の膝先は握りコブシ半分程度になる。3列目の膝先は狭いが、床と座面の間隔は十分に確保され、3列目に座る乗員の足が2列目の下側に収まりやすいこともあり、さほど窮屈には感じない。

 ライバル車の現行フリードは、2列目の膝先空間を新型シエンタと同じく握りコブシ1つ分に調節すると、3列目の膝先には握りコブシが2つ収まる。膝先空間は現行フリードが広いが、床と座面の間隔は新型シエンタを40mm下まわるから、座ると膝が持ち上がる。

■フリードは2023年にフルモデルチェンジ! 販売合戦はさらに熾烈に

 以上のように膝先空間はフリードが広く、着座姿勢は新型シエンタが自然な印象だ。一長一短で、シエンタとフリードの戦いは今も続いている。両車の登録台数を比べても、2017年はフリードが多く、2018年と2019年はシエンタが上まわり、2020年と2021年はフリードが抜き返した。

 今後は新型になったシエンタが上まわるが、フリードも2023年にはフルモデルチェンジを行う。そうなると販売合戦も再開する。

 特に今はノア&ヴォクシーやステップワゴンが3ナンバー専用車になったから、5ナンバーサイズを好むユーザーは、シエンタとフリードに目を向ける。両車両の販売合戦は、一層激しくなるわけだ。

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みんなのコメント

24件
  • ライバル研究は良いが、デザインも研究しすぎてパクリ気味なのは改めるべき
  • トヨタグループは不正とパクリばかりだな。
    オリジナルだすとデザインは悪い、性能は低い。
    2022年にもなって未だに中華スタイルから脱することができてない。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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