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キメラ・エボ37へ試乗 ランチア・ラリー037を復刻 4気筒ツインチャージャー 後編

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キメラ・エボ37へ試乗 ランチア・ラリー037を復刻 4気筒ツインチャージャー 後編

イタリアンなドライビングポジション

キメラ・エボ37の開発を率いたルカ・ベッティ氏は、レストモッドのカテゴリーに属するクルマとしては最もエクストリームだ、と表現する。ポルシェ911をDLS 911として再生させたシンガーが聞けば黙っていないかもしれないが、誇張ではないと思う。

【画像】キメラ・エボ37 最新の技術で蘇る 名クラシックは他にも 全111枚

エボ37に充分熱が入ったところで、筆者が運転席に座る。モモ社製のステアリングホイールが膝のそばに伸びる、イタリアンなドライビングポジションに収まる。脚は折り曲げて、腕を伸ばす格好だ。

基本的に、車内の人間工学もランチア・ラリー037に準じている。ラリードライバーのヴァルター・ロール氏やマルク・アレン氏が、こんな姿勢でステアリングホイールを激しく回していたのかと考えると、改めて驚かされる。

ぎこちない姿勢を除けば、それ以外は運転へ集中しやすい空間。プロトタイプということでセンターコンソールには無骨なトグルスイッチが並んでいたが、市販版ではもう少し美しいスイッチへ変更されるという。

ダッシュボードも当時のランチア風。横に長い箱のようなカタチは、至ってシンプル。マット仕上げが美しいカーボンファイバー・パネルへ、黒い文字盤に赤い目盛りのメーターが並ぶ。

バケットシート・シェルもカーボン製。鮮やかなレッドのアルカンターラもふんだんに用いられている。華やかだった、80年代の雰囲気を演出するように。

トランスミッションは6速MT。トランスアクスル・レイアウトで、シフトパドル付きのシーケンシャル仕様も選べるという。露出したシフトレバーの造形が美しい。

ブースト上昇とともに拍車が掛かる加速力

エボ37を激しく発進させるには、高めの回転数が求められる。クラッチペダルは適度に軽く、エンストさせずにつなぎやすい。ストレートのカットギアが唸る。後方からは圧縮される吸気音が響く。想像以上に運転しやすい。ゆっくり動かすような場面でも。

シフトレバーも軽く動く。少しタッチがゴムっぽいものの、ゲートは正確。運転席からの視界も良い。乗り降りもしやすかった。

ステアリングラックは、アルファ・ロメオ・ジュリア・クアドリフォリオ用のものだというが、レシオをクイックに変更し、電動アシストは抑えられている。繊細で滑らかに動く。ロータス・エキシージ S3のように、エボ37の運転は難しくない。

狭いカート用サーキットだから、長く加速は続けられない。それでも、アクセルペダルに対するパワートレインの反応はラリーマシンそのもの。

電動スーパーチャージャーが低回転域で効果的に動き、最新のターボエンジンと同等の吹け上がりを実現している。ターボラグが個性を与えている。比較的低めの回転数から太いトルクが発生するが、ターボブーストの上昇とともに加速力に拍車が掛かる。

あっという間に直線が終わり、アクセルオフ。ブローオフの悲鳴が聞こえる。ポルシェ911のレストモッドには、もっとリニアな加速と聴き応えのあるサウンドを叶えた事例もある。だが、グループBを彷彿とさせるようなドラマチックさでは負けていない。

エボ37を印象付けるハンドリング

エンジン以上にエボ37を印象付けるのが、ハンドリング。量産されるような高性能モデルと比較しても、アンダーステアが抑えられている。即座にフロントノーズは向きを変え、慣性や抵抗はほとんど感じられない。

コーナーリング中は、車重の軽さとシャシーバランスのおかげで、グリップ力も高い。ピレリPゼロ・タイヤの限界を超えても不安を感じないほど、クルマとコミュニケーションが取りやすい。

メッキ加工されたLSDがリアタイヤを統制し、テールを好きなだけ正確に振り回せる。420psの力を動員すれば、無限にドリフトアングルを保持できそうだ。クルマのしなやかさや漸進性、挙動の掴みやすさに深く感心する。

ただし、タイトコーナーでは少しトリッキー。予期しない勢いで回転する場合がある。クイックなステアリングでも、対処しきれないこともあるだろう。それ以外のコーナーでは、オーバーステアを堪能できる。高速で安全に運転できるセットアップだ。

許されるなら、アルプス山脈のワインディングでエボ37を味わってみたい。恐らく、人生で最も忘れられないドライブの1つになるだろう。

グループB時代のラリードライバー、ミキ・ビアシオン氏が動的特性のチューニングに協力してくれたと、ベッティが話す。この仕上がりを体験すれば、疑いようはない。

伝説的な傑作と現代的な技術の融合

近年のレストモッド事例もそうだが、ほぼすべてが新しく作られたといえるキメラ・エボ37も、非常に高価。完成度の高さと関わった人物の名前を聞けば、驚くことではないかもしれないが、48万ユーロ(約6240万円)だ。

明らかに前例のないプロジェクトの成果であり、伝説的な傑作に現代的な技術が見事に融合されている。再設計された2.2L 4気筒ツインチャージャー・エンジンも素晴らしい。白眉の操縦性は、唯一無二のものだといえる。

残念ながら、筆者はこれまでランチア・ラリー037を運転した経験はない。しかし、エボ37がその体験に相当近いものなのだろいう、ということは想像できる。電動パワーステアリングと、一般道での乗りやすさを除いて。

キメラ・エボ37をガレージに迎えることができるドライバーは、僅か37名。プライスレスなクルマが誕生したことは、間違いないと思う。

キメラ・エボ37(欧州仕様)のスペック

英国価格:48万ユーロ(約6240万円)
全長:3915mm(オリジナル・ランチア・ラリー037)
全幅:1850mm(オリジナル・ランチア・ラリー037)
全高:1245mm(オリジナル・ランチア・ラリー037)
最高速度:305km/h(予想)
0-100km/h加速:3.0秒(予想)
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:1050kg(予想)
パワートレイン:直列4気筒2150ccターボチャージャー+電動スーパーチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:507ps/7000-7250rpm
最大トルク:50.9kg-m
ギアボックス:6速マニュアル

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