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大森元貴が仕掛ける展覧会「Wonder Museum」を攻略せよ!

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大森元貴が仕掛ける展覧会「Wonder Museum」を攻略せよ!

Mrs. GREEN APPLE がデビュー10周年の締めくくりとして開催したのは、これまでのミセスの軌跡をたどり、大森元貴の脳内を旅することができる展覧会だ。ただ、単なる展覧会だと思うなかれ。これは、大森元貴が仕掛けた“読み解きの場”である。

これは、大森元貴からの挑戦状だ

『磯崎新:群島としての建築』展──都市と文明を見つめ未来を描いた建築家・磯崎新の集大成

Mrs. GREEN APPLE(以下、ミセス)のフロントマン、大森元貴は、作詞・作曲、演奏だけでなく、ライブ演出、ビジュアル、コンセプト設計まで、バンドに関わるあらゆるクリエイティブを統括する人物だ。

デビュー10周年を迎えたミセスは、先月ドキュメンタリー映画『MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~』を公開した。そこではミセスの活動に密着しながら、大森の苦悩や葛藤、制作の裏側、そしてこれまであまり明かされることのなかった“プロデューサー・大森元貴”の姿が描かれている。

生粋の表現者である一方で、バンドを“ビジネス”として運営するプロデューサーの顔。この二面性を往復しながら、大森元貴はミセスという存在を体系的に創り出している。

その映画の公開に続いて開催されたのが、本展「Wonder Museum」。“大森元貴の頭の中を覗く”というコンセプトのもと、10年間の軌跡とその裏側にある創造のプロセスを、空間そのものを通じて体験する展示である。

一足先にこの展覧会を観た僕が感じたこと──それはただひとつ。“やられた”。ただの来場者としてのんきに鑑賞していると、見事に足元をすくわれる。普通、展覧会とは“見る”ものだ。だが、この展示は一筋縄ではいかない。詳細はネタバレになるため避けるが、ただ眺めているだけでは、大森元貴が設計した数々の仕掛けとディテールを見逃してしまう。

<最初の部屋>※撮影不可最初の部屋に踏み込むと、ほぼ闇に近い空間に一台の机だけが浮かび上がる。机の上にあるのは描きかけの地図。聞こえる息遣いや呼吸、鉛筆が紙を擦る音──大森元貴というひとりの人間が、何かを“始めている”瞬間に立ち会っているような錯覚を覚える。視覚が奪われることで、聴覚は自然と研ぎ澄まされ、気づけば暗闇の中に潜む“意図”を探そうとする自分がいる。

やがて来場者は、自分が大樹の下にいることに気づく。大樹はミセスの世界で繰り返し現れる象徴だ。ここは、創造の出発点であり、すべての伏線が根を張る“最初の場所”でもある。

アリスがラビットホールをくぐり、別の世界へ迷い込むように、来場者は艶めかしく光るクリスタルが照らす仄暗い森道をくぐり抜け、次の展示の部屋へと向かう。クリスタルもまた、ミセスの世界に登場するモチーフだ。これはきっと、この世界と別の世界をつなぐ“橋渡し”のような意味合いを持っているのだろう。

<DANCE-GO-ROUND>暗闇を抜けると目の前に現れるのは、「Mrs. GREEN APPLE」と書かれた巨大なネオンサイン。それまでの少し不気味な雰囲気からは打って変わって、突き抜けた明るさとポジティブなエネルギーに満ちたサインだ。「ミセスの世界へようこそ」──ここからが大森の創造の世界の本当の始まりである。

「DANCE-GO-ROUND」は、ミセスにとって新たな表現へ踏み出した瞬間の高揚感を閉じ込めた空間だ。彼らが初めて、バンドでありながらダンスパフォーマンスに挑戦した「ダンスホール」。その一歩には、バンドとしての既成概念を超える覚悟があった。

ミラーボールが散りばめられたメリーゴーラウンドが回転し、光が散るなか、存在感を放つのが3人のマネキンだ。メンバーの顔を3Dプリントで忠実に型取り、MVの衣装を着用している。幼いころ、大森元貴がブラウン管の向こう側に夢見たキラキラとした世界が、ここに具現化されている。

<RECORDING THEATER>ここは、レコーディングという“創作の現場”をそのまま空間化した展示だ。スクリーンには、楽曲「ライラック」をセッションする3人の姿。軽やかな笑い声、何気ないやり取り、3人が奏でる音が、スタジオの空気ごと閉じ込められている。

興味深いのは、この映像が日によって異なる点だ。訪れるたびに、違う“創作現場”に立ち会うことになる。

<QUE SERA SERA GARDEN>「QUE SERA SERA GARDEN」は、「ケセラセラ」を視覚・嗅覚・触覚で“読み解く”ための実験的な場所だ。音源データを解析してAIが生成する映像、雲のようなオブジェに触れると伝わるリズムの振動、そして歌詞をもとに生成された香り。全身を使って音楽を浴びる体験ができる場所だ。

「ケセラセラ」のMVの世界観をそのまま具現化したこの神殿では、大森が演じる“神様”が天上界から地上界を望遠鏡で覗いている。僕ら来場者を観察しているのだろうか。

<INTO THE ATLANTIS>その次の展示が、まさに海の底に沈んだ都市・アトランティスを描いた「INTO THE ATLANTIS」だ。「EDEN no SONO」「NOAH no HAKOBUNE」に続く、神話をモチーフにしたストーリーシリーズのライブ「Atlantis」を表現した世界である。光のカーテンをくぐり、海底から見上げると、浮かぶミセスの3人の姿。ステージで実際に使用された衣装を身にまとい、音と映像がリンクした幻想的な空間が広がる。

<BABEL no TOH STATUE>続く「BABEL no TOH STATUE」は、現在開催中のドームツアー「BABEL no TOH」の世界を表現したセクションだ。巨大な本を開くと、立体的に飛び出すバベルの塔。光と音が物語に沿って緻密に演出される。これまでのストーリーラインの中でも、最も壮大でドラマチックなライブの一端が、凝縮された形で再現されている。

<KUSUSHIKI GATE>「KUSUSHIKI GATE」には、「クスシキ」のMVで実際に使用された3人の衣装が展示されている。魔法を操る3人の攻防戦が見事に表現された映像世界を、そのまま現実空間に引き写したような展示だ。

<IMAGINATION VOYAGE>「IMAGINATION VOYAGE」は、ミセスのMVの世界を巨大な映像として旅する展示だ。来場者は木でできた船の甲板に上がり、全身で映像を浴びる。「Magic」の草原を駆け抜け、「クスシキ」の巨大な古都を巡り、「ナハトムジーク」の瞬く銀河を越えて、やがて「ANTENNA」のクジラが跳ねる雲上の世界へと移り変わっていく。

ミセスの作品群を横断するこの旅は、ひとつひとつのMVが独立した短編ではなく、“ひとつながりの世界”として構築されていることがわかる。

<CREATIVE HISTORY>※撮影不可「CREATIVE HISTORY」は、この10年のミセスの創作過程を一望できる、広大なアーカイブの部屋だ。楽曲や歌詞、ジャケット、MV、ライブ映像、そしてそれらの原案やスケッチが300点以上、額装され、展示されている。

「夏の影」のMV撮影時に撮られたであろうプライベート風の写真、「Atlantis」の舞台スケッチ画、これまで受賞した数々の表彰盾、「Breakfast」のMVで使用されたプロップ、「GOOD DAY」の衣装原案、「ナハトムジーク」のスケッチ、「The White Lounge」の脚本、大森とスタッフの会議での肉声、「クスシキ」の人物設定と相関図など、未公開の資料ばかりだ。

ここは整然とした資料室というよりは、自由に回遊しながら発見を重ねる“創作の迷路”であり、過去の断片を拾い集めることで、来場者それぞれが自分なりの“ミセスの歴史”を再構築できる場所なのだ。

<次の部屋>※撮影不可そして最後に訪れるのが、「次の部屋」と名付けられた空間である。最初の部屋で見た地図が再び現れ、最初から最後までの展示がひとつの円環を描いて完結することを示している。もう一度耳を澄ますと、大森元貴の足音が聞こえてくる。そこには最後の“伏線”が仕込まれており、ネタバレは避けるが、彼がこの物語の首謀者であることを改めて思い知らされる仕掛けが用意されている。

さて、ここまでざっと展覧会の流れを紹介したが、どうだろう。ミセスの世界には、大樹、海、船、地図、クリスタル、クジラといったモチーフが繰り返し登場する。この展覧会も、音楽やMV、アートワーク、ライブなどと同様に、その世界の“地続き”であることがよくわかる。

人気漫画『チェンソーマン』には“◯◯の悪魔”という表現が出てくるが、もしその概念を借りるなら、大森元貴はさしずめ“伏線の悪魔”と呼ぶべき存在だろう。彼はこれまでも自身のクリエイションに幾度となく伏線を忍ばせてきた。数カ月後に回収されるものもあれば、何年もの時間を経て回収されるものもある。

そう考えると、この展覧会にも──過去からつながる伏線、未来へつながる伏線が、埋め込まれているはずだ。もちろん、単純に音楽や衣装、手の込んだセットを楽しむだけでも十分に魅力はある。だがもう一歩踏み込んで、“首謀者・大森元貴がどんなトリックを仕込んでいるのか”という視点で鑑賞すると、この展示はまったく別の表情を見せる。

「Wonder Museum」は、“見る”ものではなく、“読み解く”ものだ。そして、その読み解き方の数だけ、来場者それぞれの物語が生まれる。

そんな不思議な深度を持った展覧会だった。

MGA MAGICAL 10 YEARS EXHIBITION「Wonder Museum」(1) 東京会場
期間 2025年12月6日(土)~ 2026年1月9日(金)
会場 TOKYO NODE GALLERY A/B/C
(東京都港区虎ノ門2-6-2 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー 45F)
開館時間 9:00~22:00(最終入場 21:00)
チケット料金(東京)
一般(中学生以上) 
平日:4,300円(税込) 休日(土・日・祝日・年末年始[12/29~1/2]):4,500円(税込)
小学生 
平日:2,100円(税込) 休日:2,300円(税込)
未就学児:無料(18歳以上の保護者1名につき2名まで)

(2) 福岡会場
期間 2026年2月7日(土)~ 2026年2月21日(土)
会場 ONE FUKUOKA CONFERENCE HALL
開館時間 9:00-20:00(最終入場19:00)
(福岡市中央区天神1-11-1 ONE FUKUOKA BLDG. 6F)
チケット料金(福岡)
一般(中学生以上) 平日:3,300円(税込) 休日(土・日・祝日):3,500円(税込)
小学生 平日:1,600円(税込) 休日:1,800円(税込)
未就学児:無料

(3) 大阪会場
期間 2026年3月2日(月)~ 2026年3月31日(火)
会場 VS.(グラングリーン大阪 内)
(大阪府大阪市北区大深町6-86 グラングリーン大阪 うめきた公園 ノースパーク VS)
チケット料金(大阪)
一般(中学生以上)
平日:4,300円(税込) 休日:4,500円(税込)
小学生
平日:2,100円(税込) 休日:2,300円(税込)
未就学児:無料

写真・木村辰郎
文と編集・高田景太(GQ)

文:GQ JAPAN 高田景太(GQ)
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