国内自動車メーカーは数多くの車種を展開し、国内ユーザーの期待に応えようと日夜努力を続けている。そして国内メーカーの良いクルマに期待を寄せるユーザーは、世界へ広がった。
こうしたなか、国内メーカーが製造するクルマの中には、日本国内では販売されていないクルマが存在する。海外専売車と言われ、ぜひ日本でも売ってほしい魅力的なクルマが多いのだ。
スカイラインクーペ乗りたいぞ!! なんでニッポンにないのよ?? 「あったらいいな」海外専売車5選
本稿では、5台の海外専売車を紹介するとともに、なぜ日本で販売されることがないのか、海外専売車をとりまく背景にも迫っていきたい。
文/佐々木亘、写真/TOYOTA、MITSUBISHI、SUZUKI、INFINITI
■魅力あふれる国内メーカーの海外専売車 5台
1997年に北米市場にて発売されたトヨタシエナ。2022年には、発売25周年を記念したモデルを販売(全長5170×全幅1990×全高1770mm)
●トヨタ シエナ
並行輸入車を求めるユーザーが多く、日本国内でも頻繁に見かける海外専売車だ。ハワイへ行くと、タクシーとして使われていることが多く、運転したことはなくても、一度は後部座席に乗ったことがあるという人も珍しくないだろう。
シエナは1997年にエスティマ(北米名ブレビア)の後継として北米市場に投入された。現行型は既に4代目モデルとなる。全長は5mを超え、全幅は1990mmと大迫力。
2列目に超ロングスライドするキャプテンシートと両側スライドドアを備える。日本で多い1BOXタイプのミニバンではなく、ステーションワゴンを背高にしたような、流麗なエクステリアが魅力だ。
ドライバーズカーにもショーファーカーにもなる素質を持ったクルマであり、海外専売車の中でも、最も名前の知られたクルマの一つに挙げられるだろう。
●ホンダ オデッセィ
ホンダ現行型オデッセイ。日本では過去に「ラグレイト」という名前で販売されていた(北米市場モデル/全長約5161×全幅約1993×全高約1734mm)
先日、生産終了を発表した日本のオデッセィとは違い、かなり大型のミニバンだ。日本では過去に「ラグレイト」という名で販売されており、北米市場を席巻している。
北米仕様は現行型で5代目を数え、全長5mオーバー、全幅約1993mmと前述のシエナに近いスタイリングだ。低床低重心のボディに両側スライドドアを備える。ミニバンとしては世界初の10速ATを搭載したことでも話題になった。
ステップワゴンも良いが、やはりホンダのミニバンはステーションワゴンタイプが似合うと思うのは筆者だけだろうか。高級ミニバンとして、ぜひ乗っておきたいクルマの一つに挙げたい。
●インフィニティ Q60
2016年登場した現行型インフィニティ Q60(全長4690×全幅1850×全高1385mm)
日産がインフィニティブランドから投入しているQ60。スカイラインクーペというと覚えのある人も多いだろう。
現行型は2016年に登場した。スポーティな2ドアクーペで、洗練されたエクステリアデザインは本当に美しい。パワートレインには3.0LのV6ガソリンツインターボを搭載する。
クーペという日本国内では需要が厳しいカテゴリーのクルマだが、生涯一度は乗っておきたいクルマの一つだ。その完成度は世界的に見ても高く、日本の高級クーペ代表としても充分に推せる。
2019年にはインパルが日本国内へ並行輸入を開始し販売をスタートした。電気自動車やSUVも良いが、日産にはセダンや高級クーペがよく似合う。
●三菱 パジェロスポーツ
2019年にマイナーチェンジした三菱パジェロスポーツ(全長4785×全幅1815×全高1835mm)
1990年代に大ヒットしたクロカンSUVのパジェロ。その名を継ぐクルマが東南アジアを中心にヒットしている。
現行型は2019年にマイナーチェンジし、三菱のアイコンであるダイナミックシールドマスクを搭載した。ボディサイズは全長4785mm×全幅1815mm×全高1835mmと日本でも使いやすいサイズ感だ。
最大の特徴は、パジェロ同様にラダーフレームを受け継いでいること。リアデフロックを備えたスーパーセレクト4WD IIを組み合わせ、オンロードはもちろん、悪路の走破性も充分に持ち合わせる。
国内ではクロカンSUVがランクルシリーズ一強となっている今、パジェロスポーツが導入されれば、注目されること間違いなしだ。
筆者も幼少期にパジェロを数多く見てきた子供の一人。運転できるようになった今、最新のパジェロに乗りたいという気持ちは非常に強い。
●スズキ ブレッツァ
スズキ ラブレッツァ。2022年6月に全面改良した際にビターラブレッツァからラブレッツァへ改名した(全長3995×全幅1790×全高1685mm)
スズキが海外市場の中で得意にしているのはインドだ。そのインドでもSUVブームが起きており、ブームのけん引役がブレッツァである。
ボディサイズは全長3995mm×全幅1790mm×全高1685mmと、国内モデルではあまり見ない、全長短め幅広めという個性的なサイズ感。クルマとしてはエスクードをクロスビーのサイズまで小さくしたような感じになる。
スタイリッシュなデザインに充実の内装は、プチ高級SUVとして日本市場にもマッチしそうだ。小さなクルマを得意にするスズキが、本気で作ったSUVをここに見た。
■海外専売車が日本で発売できないワケ
魅力的な海外専売車が多い。そのうちの1台にパジェロスポーツの名が挙がるだろう。日本市場にぜひとも導入してほしい
ここまで上げてきた5台の海外専売車以外にも、魅力的なクルマは数多くある。ピックアップトラックや大型SUV等、海外市場で大きな需要があり、特別な思いの詰まったクルマが多いのだ。
しかし、魅力的な海外専売車が日本に導入されることはまれだ。その理由はさまざまある。
現在のラインナップに被るから、大きすぎて使いにくい(人気が出ない)、日本の流行にのっていないからなど、挙げれば枚挙にいとまがない。
そのうえ、世界と比較して日本の自動車市場は毎年のように縮小傾向にある。今や国内自動車メーカーの軸足は、おおかた海外にあり、日本市場が販売の中心ではない。
よく売れる海外市場では、地域や文化、これまでの趣味嗜好に特化した専売車作ることができる。コストをかけてつくり、そのコストに見合った販売ができるためだ。
しかし、海外専売車を日本仕様や日本の規制に合わせて作り込むことは大きなコストとなる。今の日本市場に、そこまで大きなコストをかけるだけの意味があるのか。悲しいが、その意味は非常に小さいと言わざるを得ない。
海外専売車はこの20年で非常に多くなった。軒並み元気な北米や東南アジア、そして中国に向けたものが多い。この状況を見ていると、日本市場への危機感を大きく感じてしまう。
世界から取り残されないように、今一度、日本の自動車を見つめ直す必要がある。我々自動車メディアに関わる者はもちろん、読者・自動車ユーザーの皆さんも一緒に、日本が世界の自動車文化の中心に戻れるよう、日本のクルマを盛り上げていこう。
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