一部メディアを対象に8月2日(火)に行なわれたホンダ・レーシング(HRC)Sakuraの取材会。そこで、ホンダのモータスポーツ活動を統括するHRCの今後に向けた展開の一端が見えてきた。
これまでF1のパワーユニット(PU)、スーパーGTやスーパーフォーミュラといったホンダの四輪レース活動の拠点となってきた栃木県さくら市のHRD Sakura。今年4月、ホンダのモータースポーツ活動が再編され、四輪レース部門はこれまで二輪レースの活動を担ってきたHRCに統合されることになった。これに伴い、HRD SakuraもHRC Sakuraへと名称が改められた。
■二輪・四輪統合の新生ホンダ・レーシング『HRC』、活動方針の4本柱を公表。Hondaブランドの”さらなる高揚”目指す
新生HRCは再編後の活動方針をいくつか発表しているが、そのうちのひとつにモータースポーツイメージの活用による「二輪、四輪事業への貢献」というモノがある。これに伴いHRC Sakuraは、レースに勝つための研究開発だけでなく、新設の企画管理部を通じた商品開発という新しくも大きなミッションが課されることとなった。
埼玉県朝霞市に拠点を置く二輪レース部門では、これまでもHRCブランドとして、商品を世に送り出してきた歴史がある。その代表的な例は、ホンダの現行MotoGPマシン『RC213V』に保安部品等を付けて販売した『RC213V-S』。2000万円超えという価格もさることながら、”公道走行可能な”MotoGPマシンということで世間を賑わせた。
昨年までF1用PU開発を率い、爆発的なヒット商品となったホンダの軽自動車『N-BOX』の開発責任者を務めた経験も持つ浅木泰昭は、現在HRCの四輪レース部長を務めている。その浅木は、F1で世界一を獲った技術力を量産車へ活かしていきたいという思いを語った。
「そこが四輪レース部門からしたら一番大きな変化なんですよね」と浅木部長は言う。
「今までは研究所でしたから、本田技研工業に図面を売るという会社でした」
※HRD Sakuraは、株式会社本田技術研究所の所管であり、ホンダの本体である本田技研工業株式会社とは別会社である。またHRCもホンダ・レーシングという別会社になっている。
「HRCになり、研究所ではなくなったということは、そういう商品開発もやっていくことになります。企画も含めて今からという状況ではありますけど、やはりレースで、F1で世界一になった会社が作るとこんな凄い商品ができるんだというのを示したいと思います」
「それと同時に、一般のお客さんにも買ってもらえるようなような商品・グッズを、今から企画していきます。その中でも、世界一であるということを知らしめるモノを考えていきたいなと思っています」
二輪レース部の若林慎也部長も、四輪レース部門と協力しながらRC213V-Sなどに次ぐ商品を今後も展開していきたいとしており、HRC代表取締役社長である渡辺康治も、ブランドの訴求としてモータースポーツ活動で得られた技術や知見を、手の届く形で販売していくとしている。
「4つの目指す姿という中で、ホンダの二輪・四輪事業へしっかりと貢献していくというところがあります」と渡辺社長は言う。
「一番の貢献は(レースに)勝っていくところではありますが、レースから生まれてくる技術を様々なプロダクトに反映させ、それをHRCブランドで世に出していきたいと思っています」
「すぐにできるということではないですが、着実に準備を進めていきたいと思っています」
F1のPUテストベンチを始め、四輪モータースポーツに関する開発設備が詰め込まれているHRC Sakura。2021年10月からは新しいシミュレータが稼働しており、このシミュレータはホンダの新型『シビック Type R』のパーツ評価にも使用されたと担当エンジニアは明かしてくれた。
ドライバー・イン・ザ・ループ・シミュレータ(DIL)と呼ばれるこの世界最高水準のこのシミュレータは、通常はスーパーGTの車両開発や若手ドライバーの育成に使用されており、コックピットはフォーミュラカーの様な見た目。量産車の乗車姿勢とはかけ離れているものの、車両データされあれば、シミュレータ上で量産車を走らせることも技術的には可能だという。
また、現在ホンダは通常の四輪量産車の風洞実験を、HRC Sakuraと同じく栃木県に設置された「四輪ものづくりセンター」の風洞で行なっている。HRC Sakuraにも風洞が存在しているが、この風洞が今後も量産車の開発にも活用される可能性があるという。
HRC Sakuraの風洞は、1/1スケールのレーシングカーの性能を確認するために、風だけでなく路面を再現した1枚の大きなベルトも動かす「1ベルト方式」。一方で四輪ものづくりセンターの風洞は前後左右それぞれのタイヤ接地面、前後フロア下と計5つのベルトを動かして実験を行なう「5ベルト方式」。
この5ベルト方式を採用している理由は、タイヤ交換を容易にするためにジャッキを下部に設置しているためだといい、車高をあまり低く設定できないそうだ。
一方2009年から稼働しているHRC Sakuraの風洞は現在、スーパーGTの空力パーツ開発に使用されているものの、担当エンジニアに聞いたところによると「車高の低い量産車」はここで風洞実験を行なうとのこと。これも「二輪・四輪事業への貢献」の一環であろう。
HRCの四輪レース部門が、今後どのような商品を展開していくかについては、前述の通りまだ企画段階だという。しかし、RC213V-Sのような我々をアッと驚かせるような夢のあるプロダクトが登場するに違いない。
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みんなのコメント
と言われると微妙。
2500万円のNSXですら中途半端に開発されて、
販売不振で生産終了だったし。
不正のホンダ