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異例のドライバー人事は“改革”の証。トヨタ小林可夢偉「アメリカでの活動をコントロールできない部分があった」

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異例のドライバー人事は“改革”の証。トヨタ小林可夢偉「アメリカでの活動をコントロールできない部分があった」

 WEC世界耐久選手権の最終戦翌日となる11月5日、バーレーン・インターナショナル・サーキットではシリーズ恒例の『ルーキーテスト』が行われる。

 すでに発表されているエントリーリストによれば、トヨタGAZOO Racingから2名のIMSA・GTDプロ王者が参加することになっている。異例とも言える“ハコ車ドライバー”、そしてIMSAからの起用となるが、これにはどんな意図があるのだろうか。10月27日、スーパーフォーミュラ第8・9戦のレースウイークを前にした鈴鹿サーキットで、中嶋一貴トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ(TGR-E)副会長、小林可夢偉WECチーム代表に話を聞いた。

トヨタGR010ハイブリッドを“レクサスRC F王者コンビ”がドライブへ。WECルーキーテストのエントリー発表

■根底にある“ドライバー・ファースト”という考え方

 最終戦翌日恒例のルーキーテストは、文字どおりWEC経験の少ない“ルーキー”ら若手ドライバーを、各チームが走らせることが主目的に置かれている。10月24日にシリーズより発表されたこのテストのエントリーリストには、3クラス・18台の車両が記載されており、うちハイパーカークラスは9台で、トヨタは7号車GR010ハイブリッド1台のみをエントリーしている。

 7号車のドライバーはレギュラーのホセ・マリア・ロペス、そしてシリーズ推薦枠のジョシュ・ピアソンに加え、2023年のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に参戦していたジャック・ホークスワースとベン・バーニコートが名を連ねている。彼らはバッサー・サリバンのRC F GT3で、GTDプロクラスのタイトルを勝ち獲った実力者だ。

「IMSAのふたりに関しては、彼らがチャンピオンを獲ったから、というわけではなく、もっと前から話がありました」と一貴副会長は説明する。

「トヨタファミリーのなかでドライバーがいろいろな経験をできるようにという、“ドライバー・ファースト”の考え方に基づいています。ルーキーテストはその点ですごくいい機会ですし、それをフルに活用する、ということです。日程的にも、IMSAはバッティングがなかったので」

 いわゆる“ご褒美ドライブ”ではないものの、即座に彼らがトヨタGR010ハイブリッドのレギュラー候補となることを意味するものでもないようだ。

「今回のことが直接何かにつながるというわけではまだありませんが、もしかしたらそうなるかもしれないし……という。いろいろな機会を探る、というか『作る』ためのものです」と一貴副会長。

「あとはドライバー個人もそういう希望を持っているということで、それをできるだけ叶えるために、こういった人選になっています」

 チーム代表兼7号車のドライバーを務める可夢偉は、IMSAのトップカテゴリーでデイトナ24時間を2度制しているだけでなく、2022年にはRC F GT3を駆りGTDプロクラスにスポット参戦もしている。このときはホークスワースの怪我の影響での代役であり、可夢偉はバーニコートと組んでレースに出場した。

 ホークスワースとバーニコートを「速い」と評する可夢偉は、トヨタのモータースポーツの“構造的な変化”も、今回の起用には影響していると話す。

「めっちゃ簡単に言うと、一時期のトヨタのアメリカでの(モータースポーツ)活動は、管轄外というか、コントロールできない部分がありました」と可夢偉。

「僕らが『(アメリカのレースで)乗りたい』と言ってもチャンスがなかったりとかして、向こうでどんなドライバーがどんな仕事をしているのかすら見られなかった、というのがこれまではありました」

「でも実際、僕が(IMSAに)乗りに行って、『ドライバーも速いな』『チームもすごくいい仕事しているな』となって。『ヨーロッパの方がすごいんだ』ではなく、純粋に学ぶとこ学んで、共有するとこ共有して……同じトヨタの看板を背負うアメリカのチーム、ヨーロッパのチーム、そして日本のチームが、もっといろんな技術やフィロソフィーを共有できて“いいトコ取り”できた方がいいんじゃないかと、いろいろと話してきた中でのことです」

■LMP1に乗れず、拗ねていたNASCARドライバー

 この流れのなかで、今年8月の可夢偉自身のNASCARカップ・シリーズ参戦が実現したということだろう。可夢偉は「いままではなかなか日本からアメリカのレースは見えなかったと思いますけど、ヨーロッパだけではなく、アメリカのレースに出るという“道”も、これからもっとしっかりと作っていけたらと思っています」と語る。

 また、今回のIMSA王者のWECテスト起用のように、『アメリカの中で戦ってきたドライバーが、世界の舞台に』という反対の流れも、活性化していくのかもしれない。

「僕個人的には、もしトヨタの中で(ハイパーカーに)乗れそうな子がいないとなったら、全然畑違いのNASCARのドライバーを乗せてあげてもいいかなと思っています」と可夢偉。そう感じたきっかけは、先日対面したNASCARドライバー、カイル・ブッシュとの会話にヒントがあったそうだ。

 ブッシュは昨年、15年在籍したトヨタ陣営を離れ、シボレー陣営のリチャード・チルドレス・レーシングへと電撃移籍し、 2023年のカップ・シリーズを戦っている。

「彼と会ったら、『俺はずっと“LMP1に乗せてくれ”と言い続けてたけど、何もなかった』って、いまでも若干拗ね気味だったんですよ。別に(テストなどで)乗るくらいいいじゃん、と僕は正直思うので、そういったチャンスがあるなら、トヨタのドライバーを乗せる機会を作ってあげるのはいいのかなと思っています」

 ドライバー含めた人材の交流も今後活発化していきそうなトヨタのモータースポーツ活動。根底にあるのは“ドライバー・ファースト”というフィロソフィーであるが、日本からIMSAやNASCARへ参戦するドライバーが増えたり、その逆の流れで欧米のドライバーが日本で活躍する様をもっと見られたりするようになれば、ファンにとっての楽しみが増えることにもつながりそうだ。

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