現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 見て良し、走って良し フィアット500e 長期テスト(最終回) EVを身近な存在に

ここから本文です

見て良し、走って良し フィアット500e 長期テスト(最終回) EVを身近な存在に

掲載
見て良し、走って良し フィアット500e 長期テスト(最終回) EVを身近な存在に

積算5310km 深く感心する運転の楽しさ

普段のトム・モーガンにかわって、今回はわたし、ジャック・ウォリックが運転させてもらった。フィアット500eの運転の楽しさに、深く感心してしまった。

【画像】日本上陸 EVのフィアット500e 内燃エンジンのアバルト595と競合ミニのEVも 全101枚

ただし、身長が185cmほどあり頭が天井に当たってしまうため、自分で選ぶならカブリオレにするだろう。運転する楽しさも広がる。ボディカラーは英国では600ポンド(約10万円)のオプション、ローズゴールドにすると思う。

積算5586km BEVを身近な存在にした500e

これまで数カ月に渡ってフィアット500eの長期テストを進めてきたが、今回で最終回。優れた第一印象は、最後まで霞むことはなかったと思う。

内燃エンジンの現行のフィアット500が登場したのは、2007年。2021年のイタリアでの販売状況を確認すると、500eを含む500シリーズはパンダに次ぐフィアットの人気モデルにランクインしている。

同社はオリジナルのイメージを変えることなく、巧みに新しいバッテリーEV(BEV)をまとめ上げた。同じくレトロなデザインのミニ・エレクトリックより、BEVを身近な存在にしたといっていい。

500eのサイズはひと回り大きくなったとはいえ、入り組んだイタリアの市街地をすり抜け、狭い路地に問題なく駐車できるほど小さい。若い家族や老夫婦が、ファミリーカーとするのに不足ない車内空間がある。ホンダeより荷室も広い。

筆者も運転してすぐに、内燃エンジン版の特長が受け継がれていると実感した。車内にあしらわれた、Made in Turin(トリノ製)のロゴはチャーミング。スタイリングも見事にリ・デザインされており、寸法は必要なだけ大きくなっている。

開放的で近未来的なインテリア

ドライバーズシートの座面は少々筆者には高めなものの、内燃エンジン版と比べれば、車内空間は大きく改善している。フロア下に駆動用バッテリーが敷き詰められていても。

コンパクトなサイズでも、車内に押し込められたような感覚は受けない。軽量な新素材が、近未来的な乗り物感の雰囲気を醸し出している。唯一残念といえたのが、右ハンドル車のペダルレイアウト。足元が狭いのだ。

アバルト595との比較試乗では、インテリアの進化ぶりをつぶさに確認できた。インフォテインメント・システムが、マセラティのスーパーカー、MC20と共有するという発見もあった。

アンドロイド・オートとアップル・カープレイには無線で対応。500eの価格帯では贅沢装備といえるものだが、独自のシステムも高機能で、あえてスマートフォンを起動する必要性は感じなかった。

ただし、システムのフリーズも何度か起きている。リセットで解決したものの、バグも幾つか含まれていた。距離の単位がマイルからキロメートルへリセットされたり、ドアのロック時にクラクションが鳴るなど、小さな内容ではあったが。

歩行者向けの車両接近音は個性的。イタリア人映画監督、フェデリコ・フェリーニ氏の作品を想起させるサウンドで、魅力をプラスしている。

市街地で乗り回すクルマに完璧な動力性能

航続距離は、都市部で乗るコンパクトBEVとしては不足ないものの、それ以上でもない。WLTP値で320kmがうたわれるが、かなり甘い様子。満充電で273km以上の数字が表示されることはなかった。

高速道路を走ると、その距離は遥かに短くなる。充電が必要になるまで200kmほど。英国の充電インフラはまだ完全な状態ではないことへ、気付くことになった。

500eのハイライトといえるのが、パワフルなパワートレイン。市街地で乗り回すクルマとしては、完璧なほど小気味いい。赤信号からの発進加速は周囲を置き去りにするほど鋭く、65km/hを超えるまで勢いは衰えない。

多くのBEVと同様に、リラックスしたドライビング体験も魅力。回生ブレーキは、ノーマル・モードでは少々弱すぎるため、航続距離が伸びるレンジ・モードが丁度いい。強力な減速を得られ、アクセルペダルの加減で殆どの場面に対応できる。

うれしいことに、レンジ・モードでも動的能力が鈍くなることはない。航続距離を最大にするシェルパ・モードは、エアコンや加速力、最高速度に制限が生まれるものの、低い気温で効率が落ちる駆動用バッテリーを温存する最終手段になった。

実際、冬場には何度かお世話になった。得られる距離は数kmだとしても、ありがたい。

500e自体は、最大85kWまでの急速充電に対応している。現在のこのクラスでは褒められる能力だが、長距離旅行に適しているとはいえないだろう。

平均的な日常にスムーズに馴染める

長期テスト車のグレードは安価なアイコンで、装備的な不満もゼロではなかった。LEDヘッドライトはオプションとなり、ハロゲンが標準。夜には古い内燃エンジンの500に乗っているような気にさせられた。

ボディが小さいため困ることはなかったが、バックカメラもない。必要なら上級グレードを選ぶ必要がある。

500e 42kWh アイコンの英国価格は、2万8835ポンド(約475万円)から。ひと回り大きいBEVや、余裕のある内燃エンジン・モデルに並ぶ金額といえ、BEVは割高だと感じさせる。

とはいえ、総じてフィアット500eはコンパクトで機能的で、見た目の印象も良く、価格に見合ったBEVだといえる。英国の平均的な日常に、スムーズに馴染める。

もっと活発な500eをお探しなら、アバルト仕様も間もなく登場するという。BEVの小さなイタリアン・ホットハッチが、町を賑わせる日も遠くないようだ。

セカンドオピニオン

2007年の登場以来、フィアット500は実用的な小型車というより、オシャレなライフスタイルを象徴するアイテムとしてイメージを形成してきた。それは新世代のBEVにとっても、重要な要素といえる。

これは悪いことではない。しかも、500eは都心部でのドライビング体験が魅力的。理想的な組み合わせといえるだろう。 Felix Page(フェリックス・ペイジ)

テストデータ

気に入っているトコロ

50km/hまでの加速力:赤信号からの加速で、思わず笑みが溢れることが何度もあった。
インフォテインメント・システム:素早く動き、シンプルで、スマートフォンとの親和性も高い。コンパクトカーとしては、例外的に優れていた。
スタイリング:オリジナルのフィアット500のイメージを崩すことなく、巧みにモダナイズしている。

気に入らないトコロ

航続距離:条件のいい日に満充電にしても、走れる距離は273kmに留まる。
ドライビングポジション:従来の500より改善しているものの、座面は高く、ペダルレイアウトが今ひとつ。

走行距離

テスト開始時積算距離:1094km
テスト終了時積算距離:5586km

価格

モデル名:フィアット500e 42kWh アイコン(英国仕様)
開始時の価格:2万8495ポンド(約470万円)
現行の価格:2万8835ポンド(約475万円)
テスト車の価格:3万175ポンド(約497万円)

オプション装備

グレイシャー・ブルー塗装:600ポンド(約9万9000円)
17インチ・アルミホイール:500ポンド(約8万2000円)
ウインター・パッケージ:450ポンド(約7万4000円)
ワイヤレス・スマートフォン充電機能:130ポンド(約2万1000円)

燃費&航続距離

公称航続距離:320km
駆動用バッテリー容量:37.3kWh(実容量)
最高航続距離:270km(7.0km/kWh)
最低航続距離:191km(5.0km/kWh)
平均航続距離:226km(6.1km/kWh)

長期テスト車のスペック

全長:3632mm
全幅:1683mm
全高:1527mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:9.0秒
車両重量:1365kg
パワートレイン:AC同期モーター
最高出力:119ps
最大トルク:22.3kg-m
ギアボックス:シングルスピード
トランク容量:185L
ホイールサイズ:17インチ
タイヤ:205/45 R17

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:246ポンド/月(約4万円/月)
CO2 排出量:0g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
エネルギーコスト:364ポンド(約6万円/電気)
エネルギー含めたランニングコスト:364ポンド(約6万円/電気)
1マイル当りコスト:0.13ポンド(約21円)
不具合:インフォテインメント・システムのフリーズ

こんな記事も読まれています

【顧客の平均年齢43歳】 カリナンがシリーズIIへ進化 ロールス・ロイス製SUVが成し遂げた功績
【顧客の平均年齢43歳】 カリナンがシリーズIIへ進化 ロールス・ロイス製SUVが成し遂げた功績
AUTOCAR JAPAN
第9戦はキャシディが21番手から逆転優勝。第10戦はダ・コスタがポルシェに母国勝利をもたらす/フォーミュラE
第9戦はキャシディが21番手から逆転優勝。第10戦はダ・コスタがポルシェに母国勝利をもたらす/フォーミュラE
AUTOSPORT web
ポルシェ・ペンスキー、キャデラックの牙城を崩しIMSAラグナ・セカを制す。恐竜カラーの911がGTDプロ初優勝
ポルシェ・ペンスキー、キャデラックの牙城を崩しIMSAラグナ・セカを制す。恐竜カラーの911がGTDプロ初優勝
AUTOSPORT web
3500万円! 日産が新型「GT-R」実車展示! 存在感スゴい「最強仕様」がNYに登場! 進化した「新デザイン」採用に反響あり
3500万円! 日産が新型「GT-R」実車展示! 存在感スゴい「最強仕様」がNYに登場! 進化した「新デザイン」採用に反響あり
くるまのニュース
テインの純正互換ショック「EnduraPro」シリーズにカローラクロスなど5車種の適合が追加
テインの純正互換ショック「EnduraPro」シリーズにカローラクロスなど5車種の適合が追加
レスポンス
「デコトラ=ど派手な改造=違法」は偏見でしかない! いまほとんどのデコトラが「合法改造」に収めているワケ
「デコトラ=ど派手な改造=違法」は偏見でしかない! いまほとんどのデコトラが「合法改造」に収めているワケ
WEB CARTOP
【2024年】自動運転・運転支援機能の満足度調査。車線維持支援システムの意外な不満とは?
【2024年】自動運転・運転支援機能の満足度調査。車線維持支援システムの意外な不満とは?
グーネット
多彩なキャンピングカー&アウトドアビークルが大集結!モーターキャンプエキスポ2024
多彩なキャンピングカー&アウトドアビークルが大集結!モーターキャンプエキスポ2024
グーネット
アウディ「Q2」 街乗りのシーンにピッタリ、シックな限定モデル発表
アウディ「Q2」 街乗りのシーンにピッタリ、シックな限定モデル発表
グーネット
めちゃ流行ってる「謎のギラギラ」なんのため? 超高級車の証!? 知ってるようで知らない「キラキラパーツ」の正体とは
めちゃ流行ってる「謎のギラギラ」なんのため? 超高級車の証!? 知ってるようで知らない「キラキラパーツ」の正体とは
くるまのニュース
キャデラックの最高級SUV『エスカレード』、大胆フェイスで今夏デビューへ…デザイン大予想
キャデラックの最高級SUV『エスカレード』、大胆フェイスで今夏デビューへ…デザイン大予想
レスポンス
「レヴォーグSTIスポーツ」と「ソルテラ」の展示&試乗に「アイサイト体験」と盛りだくさん! スバルブース出展情報【ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜】
「レヴォーグSTIスポーツ」と「ソルテラ」の展示&試乗に「アイサイト体験」と盛りだくさん! スバルブース出展情報【ル・ボラン カーズ・ミート2024 横浜】
LE VOLANT CARSMEET WEB
ちょっとした進化が嬉しい──新型ジープ ラングラー試乗記
ちょっとした進化が嬉しい──新型ジープ ラングラー試乗記
GQ JAPAN
「タクシーの寿命」なぜ長い? 自家用車の約4倍も“長持ち”!? 過酷な使われ方をしてるのにガンガン走れる理由とは?
「タクシーの寿命」なぜ長い? 自家用車の約4倍も“長持ち”!? 過酷な使われ方をしてるのにガンガン走れる理由とは?
くるまのニュース
ホンダの軽商用EV『N-VAN e:』発売に先立ち、充電サポートの提供を開始
ホンダの軽商用EV『N-VAN e:』発売に先立ち、充電サポートの提供を開始
レスポンス
トライアル世界選手権2024が日本・もてぎから開幕! 世界王者でホンダ監督の藤波貴久「“行けた!”という興奮の多さがトライアルの魅力」
トライアル世界選手権2024が日本・もてぎから開幕! 世界王者でホンダ監督の藤波貴久「“行けた!”という興奮の多さがトライアルの魅力」
motorsport.com 日本版
ジープの人気モデルがさらに魅力を増して登場!機能装備も充実の「ラングラー」2024モデル
ジープの人気モデルがさらに魅力を増して登場!機能装備も充実の「ラングラー」2024モデル
@DIME
三菱の「4WD」何がスゴイ? “スーパーセレクト4WD”に「AYC」? 他メーカーとは違う「三菱の取り組み」とは
三菱の「4WD」何がスゴイ? “スーパーセレクト4WD”に「AYC」? 他メーカーとは違う「三菱の取り組み」とは
くるまのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村