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素晴らしき3種の英国スポーツ トライアンフ・スピットファイア MGB ロータス・エラン 後編

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素晴らしき3種の英国スポーツ トライアンフ・スピットファイア MGB ロータス・エラン 後編

フレイリングによる時代を超越した美しさ

ロータス・エランのエンジンは、4気筒のツインカム。レーシングカーのロータス23も搭載した、フォード由来の傑作ユニットが搭載されている。

【画像】トライアンフ・スピットファイア、ロータス・エラン、MGB 3種の英国スポーツ 全101枚

ヘッドの設計を手掛けたのは、技術者のハリー・マンディ氏。当初は、フォードの109Eブロックと組まれる前提だった。

フォードがパワフルな116E型、通称ケント・ユニットを導入すると、チャップマンはエランへ採用。排気量は最初期の22台が1498ccだったが、後に1558ccへ拡大されている。

シンプルでスリムなボディをデザインしたのは、ジョン・フレイリング氏。時代を超越した美しさがある。

チャップマンもまた、北米市場の重要性を認識していた。ロールス・ロイスの生産技術者を務めていたジョン・コープ・ルイス氏を招き入れ、輸出に対応できる品質管理を任せた。

それでも生産初期のクルマは、ウインドウのフィット感が不十分で、ボディ内への雨漏りも少なくなかった。エンジンは、コンロッドの不具合を抱えていた。いずれも1964年のS2で、改善されている。

エランの発表は、1962年10月のロンドン・モーターショー。新車時の価格は、1499ポンドと手頃ではなかった。オースチン・ヒーレー3000より、200ポンドも高かった。

今回登場願ったブリティッシュ・グリーンのエランは1964年式だが、切り替え前のS1。当初ドイツへ輸出されたものの、1998年に英国へやってくると、入念なレストアと右ハンドルへのコンバージョンを受けている。

カーブの続く一般道との相性は抜群

エンジンは147psを発揮するQED420仕様を搭載。調整式サスペンションによって僅かに車高が落ち、見た目はずっと端正だ。実際に走らせてみると、ほぼ60才らしい趣を感じた。

バケットシートの位置は低く、ウッドリムの3スポーク・ステアリングホイールの奥に、4枚のメーターが並んだシンプルなダッシュボードが構える。グッドウッド・サーキットを、オープン状態で疾走する。

ツインカム・ユニットが鋭く吹け上がり、回転数に合わせて2基のウェーバー・キャブレターが吸気音を高める。音響的な刺激に不足はない。

フォード社製の4速MTは、コクリという感触が伴う。ストロークは短く、機械的な質感がたまらない。理想の走りを引き出すには、2500rpm以上の回転数を保ちたい。

乗り心地は硬めで、姿勢制御はタイト。ハイギヤードのステアリングラックを通じ、驚くほどのフィードバックが手のひらへ伝わる。

トランスミッションのギア比は低く、4速でも1000rpm当たり32km/hほど。カーブの続く英国の一般道との相性も抜群。目的地までのドライブが、退屈に感じることはないだろう。

他方、177 CRXのナンバーをぶら下げたトライアンフ・スピットファイアは、1962年10月に製造されたシャシー番号FC301。現在オーナーはジェズウッズ氏で、1980年代から大切に40年近くも維持しているという。

4年前にトライアンフを専門とするジグソー社によって、フルレストアを受けている。その時に、パウダー・ブルーというオリジナルのボディカラーで仕立て直された。

リアアスクルの不安定さが面白い

インテリアは、60年前のクルマだとしても質素。内装パネルは少なく、ボディがむき出しの場所が多い。ダッシュボード中央に4枚のメーターが並ぶのは、右ハンドル車と左ハンドル車を作り分ける製造コストの抑制が目的だった。

それでも、スミス社製のメーターは読み取りやすい。ステアリングホイールもシンプルな2スポーク。切り始めの遊びは多く、レシオが低く、速度が増してもタッチは軽いまま。小回りは良く効く。

1速に入れてエンジンを回せば、ヘラルドとの共通性が滲み出てくる。アクセルペダルは、常にしっかり踏み込む必要がある。ハーフスロットル程度では、充分な勢いは得られない。

コーナリング中にアクセルペダルを緩めると、スイングアクスルによってリアのキャンバー角が変化する。グリップ抜けを避けるために、事前の速度管理が重要。だが、その不安定さが面白い。

4速MTは、小気味良く次のギアを選べる。排気音は今回の3台で1番大きい。0-97km/h加速は17.3秒と振るわないが、それ以上に速く感じる。エランよりボディ剛性が明確に劣っていても、同等に楽しい。

もう1台のライトブルーが、イーアン・サットン氏がオーナーの1963年式MGB。ドライビング・フィールを比較すると、スピットファイアやエランとは大きく異なる。

標準のスチールホイールを履き、プル式ドアハンドルと、ヘッドレストのないシートがMGBの前期型である証。鮮やかなボディカラーは後期型の純正色だが、それ以外の見た目はオリジナル状態だという。

英国が誇る3台の自動車遺産

エンジンには、オプションのオイルクーラーが備わる。現代的なオルタネーターが組まれ、K&N社のエアフィルターと電動ファンでアップグレードされている。標準の4速MTから、オーバードライブの備わる5速MTへ換装されてもいる。

MGBは、風を感じながら駆け回るスポーツカーというより、オープントップのグランドツアラー的。Bシリーズ・エンジンの厚みのあるサウンドとリニアなパワー感が、快活な印象を与えてくれる。

5速MTは、まんべんなくオイルが染み渡っているのが伝わるスムーズさで、変速が楽しい。とはいえ、オリジナルの4速MTも感触は似たようなものだと記憶している。違いは、1つギアが多い程度だ。

MGBを運転すると、長距離旅行をしたいとウズウズしてくる。ステアリングホイールの操舵感は快適寄りながら、操縦性のバランスは優秀。グリップの良い現代的なピレリ・タイヤが、走りを支えている。

3台それぞれの個性が素晴らしい。小柄なブリティッシュ・スポーツカーを多くのドライバーへ提示した、60年前の傑作たちだ。優れた完成度が高い人気をもたらし、長いモデルライフへつながった。

ロータス・エランですら11年、MGBとスピットファイアは18年も作られ続けた。偉大なマツダMX-5(ロードスター)を生み出す原点にもなった。英国が誇る、自動車遺産といって間違いないだろう。

協力:ジェイド・カラン氏、グッドウッド、アラン・モーガン氏、クラブ・ロータス、アンディハリス氏、チチェスターMGOC、トライアンフ・スポーツシックス・クラブ

ブリティッシュ・スポーツ 3台のスペック

トライアンフ・スピットファイア 4(1962~1980年/英国仕様)のスペック

英国価格:729ポンド(新車時)/2万ポンド(約334万円)以下(現在)
販売台数:31万4332台(総計)
全長:3683mm
全幅:1448mm
全高:1206mm
最高速度:148km/h
0-97km/h加速:17.3秒
燃費:11.0km/L
CO2排出量:−
車両重量:721kg
パワートレイン:直列4気筒1147cc OHV自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:94ps/5750rpm
最大トルク:9.2kg-m/3500rpm
ギアボックス:4速マニュアル

MGB(1962~1980年/英国仕様)のスペック

英国価格:729ポンド(新車時)/2万ポンド(約334万円)以下(現在)
販売台数:52万3826台(総計)
全長:3891mm
全幅:1521mm
全高:1254mm
最高速度:165km/h
0-97km/h加速:12.2秒
燃費:7.6km/L
CO2排出量:−
車両重量:972kg
パワートレイン:直列4気筒1798cc OHV自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:96ps/5400rpm
最大トルク:15.1kg-m/3000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

ロータス・エラン 1600(1962~1973年/英国仕様)のスペック

英国価格:1499ポンド(新車時)/4万ポンド(約668万円)以下(現在)
販売台数:1万2224台(総計)
全長:3683mm
全幅:1422mm
全高:1155mm
最高速度:183km/h
0-97km/h加速:8.7秒
燃費:9.9km/L
CO2排出量:−
車両重量:688kg
パワートレイン:直列4気筒1558cc DOHC自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:106ps/5500rpm
最大トルク:14.9kg-m/4000rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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