EV専業メーカーであるテスラは、自動車業界にOTA(Over the Air)、ギガプレス、シンプルさを極めたインテリアという、これまでのエンジン車にはなかった新たな価値を生み出してきた。そして多くの自動車会社や新興メーカーがそのあとを追う展開になっている。ここではその新しい価値を振り返ってみたい。
スマホアプリのように新機能を追加できるOTA
トヨタBEV戦略で新たな事実が判明!「テクニカルワークショップ2023」のフォローアップ。全固体電池に自信のワケ?
ひとつ目に挙げるのはOTAだ。テスラのOTAを知って衝撃を受けたのは、2016年頃にモデル Sのバッテリー容量をOTAで増やせることを知った時だ。ゲームアプリで新しい装備を課金して手に入れるように、9,000ドル(当時のレートで約99万円)を払ってアップデートすれば、その場ですぐに60kWhから75kWhにバッテリー容量を増やすことができた。もちろんテスラのディーラーに入庫する必要も、車を買い替える必要もない。
なぜこれが出来るのかというと、はじめから75kWhのバッテリーを積んでおいて、60kWhに制限しておき、その分車両本体価格を抑えて販売しているからだ。これにより、もし職場が自宅からより遠い場所に変わって通勤距離が伸びても、車を変えることなく、バッテリーを75kWhにアップデートすれば良いという具合に対応できる。
このOTAは、トヨタでも導入されている。ノアやヴォクシーでハンズオフ機能付きアドバンストドライブが、OTAによるソフトウェアのアップデートで利用可能だ。
これまでメーカー側はクルマを売った後に収入を得ることはできなかったが、それをも可能にした画期的なシステムだ。
70もの部品を1つにまとめたギガプレス
2点目に取り上げるのはギガプレスだ。モデル 3ではリヤアンダーボディ部を70個の部品で構成していたが、ギガプレスの採用によりモデル Yでは1つにまとめられている。従来のクルマ作りの常識を打ち破る製法だ。巨大な設備導入が必要なので初期費用はかかるだろうが、量産によるコスト低減(4割減と言われている)や、工数削減効果の方が大きいと思われる。
事実、今年6月にトヨタが実施した「トヨタテクニカルワークショップ2023」でもギガプレスと同じ考え方の「ギガキャスト」を発表した。2026年に発売予定の次世代EVに採用予定だ。ギガキャストは、86部品・33工程を1部品・1工程にできる。それによりコストダウンと工程短縮による生産効率の向上を可能にする。テスラのギガプレスのデメリットと指摘されている事故時のリペア性の課題について、トヨタは、鋼板部品との組み合わせでクラッシャブルゾーンを設けることで対応する考えだ。
中国のシャオペン(小鵬汽車、Xpeng)もギガキャストを採用したEVを発売している。シャオペンは2014年創業の新興メーカーだ。先月フォルクスワーゲンから7億ドル(約980億円)の出資を受けた。フォルクスワーゲンの狙いは、2026年に中国向けに販売する2車種のEVに、シャオペン製のプラットフォームを使用することのようだ。
物理スイッチ3つだけ、極限までシンプルなインテリア
3点目にインテリアをピックアップした。テスラはスイッチの少ないシンプルなインテリアも特徴の一つだ。特にモデル Yの物理スイッチはステアリングホイールスポーク部の2個とヘッドコンソール部のハザードスイッチだけ(パワーウインドーとドアオープナーを除く)。エアコンは設定温度の変更だけでなく、風向きの調整さえもセンターディスプレイで行う。ドライバー用のメーターディスプレイも無い。
ところが戸惑うのは最初だけですぐに慣れる。ガラケーからスマホに難なく乗り換えられた人ならきっと大丈夫だろう。
多くの設定、例えばドアミラーの角度やシート位置の調整は、ディスプレイとスポークにあるスイッチで行う。一度自分のポジションに合わせておけば頻繁に変える必要はないので問題ないし、それらの物理スイッチを減らすことによるコスト削減も見込めるはずだ。
さすがにここまで割り切ったメーカーはまだないが、エアコンや車両の設定をディスプレイで行うモデルは増えてきている。
番外編として挙げておきたいのは、ボンネット下の荷室スペースである「フランク」だ。ポルシェ・911などリヤにエンジンのある車は従来からフランクがあったが、リヤの荷室はエンジンがあるため、そのスペースは限定される。
しかしテスラはEV専業でエンジンの概念が毛頭ないので、リヤは広いスペースを、フロントにも十分な深さを持つフランクを、前軸にモーターのあるモデル YのAWDでさえも確保しているのは、素直にすごいと思える。
北米充電規格はNACSが掌握の気配
プラス1として取り上げるのはNACS(North American Charging Standard)だ。北米におけるEVの充電規格はCCSとテスラのNACSが大半だ。しかもテスラが自前で整備を進めたNACSは、充電ステーション数で1万2000とCCSの2倍に達する。
今年5月以降、フォード、GM、ボルボ、ポールスター、リヴィアン、フォルクスワーゲン、日産が、北米においては2025年以降にNACSを採用すると相次いで発表するなど、ステーション数の多さや対応メーカーの増加で、文字どおりの「北米標準規格」を勝ち取りそうな勢いだ。
NACSは、クルマにプラグを差し込むだけで充電が始まり支払いも完了するプラグ・アンド・チャージに対応しているため、日本のチャデモのように画面を見ながらカードやスマホの操作が要らない手軽さが特徴だ。最大250kWの充電によりモデル Yは15分で最大261km、モデル Sは15分で最大322kmと超高速充電が可能だ。
そしてNACS=テスラのスーパーチャージャーの分布を見ると、北米、欧州、日本、韓国、中国に多数整備されている。例えば日産が日本でもNACS充電口を装備したら、前述の手軽さと充電の速さを率直に喜ぶ日産オーナーもいるのではないだろうか(もちろんクルマ側の充電能力も関係してくる)。NACSが北米以外でも勢力をより拡大していくのかに注目だ。
そして日本メーカーもテスラをフォローするだけではなく、追い越せる見込みも出てきた。
最も注目しているのはトヨタと日産が開発を進める全個体電池だ。航続距離を2倍に、充電時間を1/3に出来ると言われており、2027~2028年にかけての実用化を目指している。日本勢の反撃攻勢にも期待したい。
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みんなのコメント
「あんなの飾りです、古い人にはそれがわからんのですよ」
「さっきの説明で使い方はわかるが、テスラ、私に運転や操作できるか?」
「日本の古い人の固い頭は、未知数で理解できません。保証はできません」
「はっきり言う、気に入らんな」
「どうも、気休めかもしれませんが、乗ってみたら案外行けますよ」www