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セーフティカーを運転して24年。マイランダーが語る”緊張”「歌手だって、ステージに上がる時に緊張しなければ、いい声で歌えないよ」

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セーフティカーを運転して24年。マイランダーが語る”緊張”「歌手だって、ステージに上がる時に緊張しなければ、いい声で歌えないよ」

 6月のF1カナダGPで、F1で初めてセーフティカー(SC)が出動してから50年を迎えることになった。正式にSCのシステムがF1に導入されたのは1993年から。つまり30年にわたってSCが正式に使われているわけだ。

 このうち24年は、ベルント・マイランダーがドライバーを務めている。このマイランダーは、長いこと同じ仕事を続けていても、まだレースへの情熱を失っていないと語ると共に、今の仕事が大好きだと語る。

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 1973年のカナダGPで、フランソワ・セベール(ティレル)とジョディ・シェクター(マクラーレン)の接触事故が起きた。この事故を受けて、ポルシェ914がSCとして走行。これがF1で初めてSCが投入された事例となった。

 その後はSCの登場がほとんどなかったが、1993年からはレギュレーションに正式に記載が行なわれ、定期的にSCが出動するようになった。

 それから30年のうち24年は、ひとりのドライバーがSCのドライブを務めてきた。それが元DTMドライバーであり、スポーツカーレーサーでもあるベルント・マイランダーである。マイランダーは2000年に、当時F1のレースディレクターを務めていた故チャーリー・ホワイティングから、その役割を託され、今に至っている。

 長くSCドライバーを務めていることもあり、誰もがその職務に落ち着いて臨んでいると考えるかもしれない。しかしマイランダー曰く、それは事実とはあまりにも遠いようだ。

「おそらくそれは私の性格なのだ」

 マイランダーはカナダGPの際に、motorsport.comにそう語った。

「レースの前の土曜日の夜には、私はまだこう考えている。『正しいことをやっているのだろうか? これは正しいことなんだろうか?』とね」

「情熱を失ったことはない。私は、自分がやっている仕事が好きだからね。自分がやっていることが好きで、完全に集中している。それは、自分の仕事をできるだけうまくやりたいという種類の情熱だと思う」

「まだ緊張することがあるかと聞かれたら……そうだね、それはある種の緊張だと思う。それは、俳優や歌手だって同じだろう。ステージに上がる時に緊張しなくなったら……それほどいい声で歌うことなんてできないと思う」

「私は本当に集中している。それが私の性格だし、この仕事が大好きだ。もしこの仕事を失ったら、何か別のことをすることを考えなければいけない。でも24年間この仕事をしてきて、今は52歳だが、それでもまだまだ元気で、いつもレースを楽しみにしている」

 マイランダーは、F1の安全性が進化してきたことを、特に誇りに思っていると語る。

「F1は最高峰のレーシングリーグであるため、可能な限りの安全を確保し、常に模範となるべきだと思う」

 そうマイランダーは語った。

「あらゆる側面からの学習することだ。どのチームも、シーズン序盤には自分たちのマシンを理解する必要があるのと同じように、もっと良くするために何ができるかを理解する必要がある。様々な方法でセーフティカーを開発し、コミュニケーションやHANSといった安全装置も開発した。ヘイローもそうだ。長年にわたり、安全性には大きな問題を抱えてきたんだ」

「以前はアルミニウムのシャシーを使っていたが、今ではカーボンファイバー製のシャシーになっている。これらの開発は、すべて大いに役に立っている」

「モータースポーツでは、非常に短期間で何かを生み出すことができる。それが、市販車にとってもモータースポーツが重要なモノとなっている理由だ。それは非常に印象的なことだ」

「F1は単に10チームが戦っているわけではなく、F1とFIAも加えた全部で12チームが参加しているような状況だ。レースというのはまた別の部分ではあるが、安全に関しては我々全員が同じ立場にある。そして、我々は可能な限り最善の方法でカバーしなければいけない」

 安全性のみならず、SCの開発に携わることも、マイランダーにとっては楽しいことだという。現在のF1では、527馬力のアストンマーチン・バンテージF1エディションと、730馬力のメルセデスAMG GTブラックシリーズを交互に使っているが、この開発にはレーシングドライバーとしての経歴が活きていると、マイランダーは語る。

「2000年には、これは完璧なクルマに違いないと思った」

 マイランダーは、自身が最初にドライブしたSCであるメルセデス・ベンツCL55 AMGを振り返ってそう語った。

「時々、当時のクルマをドライブする機会があるんだけど、『ああ、これは古いクルマだ』と思うんだ」

「でも当時としてはそれは本当にトップレベルのスポーツカーだった。そして今、アストンマーチン・バンテージやメルセデスAMGに乗っている。これは、私が20~30年前に乗っていたレースカーみたいなモノだ」

「レベルは本当に高い。でも、我々は改善していくことをやめない。それは私にとって、非常に印象的なことなんだ。そして20年前のF1マシンと現在のモノを比較すると、何が可能かという点で非常に印象的だ」

「2年前にアストンがSCに加わった時、私はテストドライバーと共にクルマをテストした。今では我々のエンジニアやソフトウエアの担当者がいる。連携して働く、適切なチームだ。すべてが良い方向に進むんだ」

「それは、私の仕事の非常に興味深い部分でもある。レースドライバーは、新しいモノをテストしたり設計したりするのが大好きだと思う」

 しかしこれまで豊富な経験を積み重ねてきたものの、同じレースの週末はふたつとないと語る。

「私の人生に、標準的なレースは存在しないと思う。だってどんなことだって起こり得るからね」

 そうマイランダーは語る。

「だから日曜日の朝、それまでは普通でスムーズな週末だったかもしれないけど、シグナルが消えると、どんなことだって起きる可能性がある」

「そのための備えが必要だ。私だけではなく、メディカルカーのドライバーも、その他の全員も同じだ」

「事故が起きた場合、我々はすべてのマシン、すべてのチームと繋がっているので、あらゆることに備えることができる。そして、1秒ほどの間に状況が変わる可能性もある。チェッカーフラッグが出た時に初めて、何が起きるか分かるんだ」

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みんなのコメント

2件
  • セーフティーカーいくらするんだろ?
  • SCの導入には反対しないが
    それまでのタイム差がチャラになるのは
    どう考えてもおかしい
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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