宇宙開発競争時代の最先端スタイリング
執筆:Greg Macleman(グレッグ・マクレマン)
<span>【画像】アメリカン・デザインの黄金期 ダッジ・ポラーラ 同時期のリンカーンも 全84枚</span>
撮影:James Mann(ジェームズ・マン)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)
1950年代のアメリカでは、まだ豊満なスタイリングのクルマがフリーウエイを走っていた。なかでも、KTケラー氏が社長に就任していた頃のクライスラーは、その典型的なモデルだったといっていい。
真面目な銀行員や税理士には受けても、戦後の団塊の世代が思わず目を奪われてしまうようなモデルは、提供していなかった。だが、デザイナーのヴァージル・エクスナー氏の登場で一変する。
1950年代後半にアメリカとソ連の間で加熱した、宇宙開発競争。ロケットやジェット機に触発されたような最先端のスタイリングが、クライスラーを大きく変えたのだった。
堅実なクルマたちは、スペースエイジなテールフィンと丸いテールライトで華やかに飾られた。1960年に登場したフルサイズのハードトップ、初代ダッジ・ポラーラを代表に。
それ以前は、エンジニアの意見が最優先。新モデルが形になると、カウボーイハットを被ったケラーが乗り込み、身体を激しく上下に揺さぶったらしい。もし社長の帽子が天井に当たれば、デザインのやり直しが指示されたという。
しかし、1950年にクライスラーの社長はレスター・ラム・コルバート氏へ交代する。その2年後に、エクスナーがスタイリング部門のディレクターとして就任。1955年モデルから、彼の手腕が発揮され始めた。
1億ドルの価値があるルックス
ミシガン州に生まれたエクスナーは、自動車のスタイリングを就学。最初に務めたゼネラルモーターズからレイモンド・ローウイーの事務所、スチュードベーカーを経て、クライスラーに移籍した。
デザイナーのハーリー・アール氏と、彼によるP-38ライトニング戦闘機に影響を受けたという1948年式キャデラックなどに触発され、エクスナーは大胆なスタイリングをクライスラーで展開。時代を象徴するような流行が、ボディへ落とし込まれていった。
エクスナーのスタイリングで特長だったのが、低いルーフラインと長いボンネット、テールに切り立ったフィンに、ジェットエンジンの噴出口のようなテールライト。1957年が始まる頃には、1億ドルの価値があるルックスだとデトロイトで話題を呼ぶ。
通称「フォワード・ルック」と呼ばれるモダンなスタイルを構築し、古巣のゼネラルモーターズは、ラインナップ全体の見直しを余儀なくされた。さらに彼のスタイリングは世界中に波及。フォード・コンサルなどの英国車へも影響を与えている。
クライスラーの1ブランド、プリマスも新時代のスタイリングの到来を歓迎した。だがその流行期間は意外に短く、10年弱。4代目リンカーン・コンチネンタルなどでは、シャープで引き締まった次のスタイルへ、嗜好は変化していった。
彼が手掛けたモデルで、その極地にあるといえるのが、今回ご紹介するダッジ・ポラーラだろう。1950年代に輝いたスペースエイジな造形を、最後にまとったクルマの1台だ。
大きいテールフィンと円形のテールライト
大きく立ち上がったテールフィンと、円形のテールライトがまっさきに目に飛び込んでくる。夕闇での加速時には、ジェット戦闘機のアフターバーナーのように、赤い残光が見えるような気がする。
ボディ後端より手前で切り落とされたテールフィンには、ポラーラのロゴマークが誇らしげにあしらわれる。今見ても色っぽい。現実離れした雰囲気には、無二の魅力が漂う。
今回ご登場願ったアクアマリンの1台は、クリス・メンラッド氏がオーナー。いかにもコストが掛かっていそうな、3段重ねのフロントバンパーだけでなく、ヘッドライトにサイドウインドウのモールまで、クロームメッキには事欠かない。
深みのある艶を湛えるボディの塗装も、感心するほど状態が良い。経年劣化で僅かにボディには緩みが見られるが、パネルには張りがある。今まで大切にされてきたことが、カタチとして表れている。
「キャサリン・レヴィさんという、未婚の方が前オーナーでした。小柄な、どこにでもいそうな女性。シアトルに住んでおり、投資銀行のメリルリンチ社で秘書を務めていたそうです」。とクリスが説明する。
「ダウンタウン近くの湖の畔に住んでおり、オフィスまではバスで通勤。現金一括で購入したと聞いています。彼女が所有した唯一のクルマで、25年間、ほとんどガレージにしまわれていたようですね」
驚くほどのオリジナル・コンディション
「多くの人が買いたいと話を持ちかけたようですが、売る気はなく、断ってきたのでしょう。彼女の死後に財産処理を進めた不動産業者によると、唯一価値のありそうな遺品だったようです」
クリスはオークションへ出品される前に、ダッジ・ポラーラを契約。走行距離は4万6000kmほど。驚くほどのオリジナル・コンディションだった。レヴィの頭髪が触れた部分は変色していたが、天井の内張りもきれいに残っていた。
車内のプラスティックは黄色く変色し、純正タイヤは空気が抜けきっていた。「ダッジ・ポラーラは、マニア垂涎の1台。何としても欲しいと思ったんです」。クリスが真剣な面持ちで話す。
一通りレストアは済ませてあるが、新たな作業が発見されたようだ。西海岸への自動車旅行で、トラブルに見舞われたという。
「プラグコードからサスペンションまで、多くの部品を交換しています。塗装も施しましたが、可能な限りオリジナルの仕上がりは残しています。独特のアクアマリン・ブルーは、各部分で色あせし、調色は難しいものでした」
「それぞれのパネルに残る色と合わせながら、塗料をブレンドする必要がありましたからね。完璧だとは思っていませんが、満足はしていますよ」
インテリアにも見とれてしまう。オリジナルのデザインだけでなく、状態も素晴らしい。
ダッシュボードはボディ色にコーディネートされた部分と、ブラシ仕上げのアルミトリムとが複雑に組み合わされている。メーターパネルの周囲には、様々な計器類とボタンが、林立するように並んでいる。
この続きは後編にて。
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