もともとはタダでもらったおっさんくさい(?)ハイエースバン
「サーフグリーン」とでも呼ぶべきさわやかな緑とアイボリーのツートーンカラー。そして完全車中泊仕様になっている車内には、リアルウッドが美しく張り巡らされている。そんな、程よく侘びたニュアンスのトヨタ ハイエースバン スーパーGL。
まさに「熟練アウトドア達人の1台」といった感じだが、実はこれ、オーナーである河合桂馬さんにとっては人生初の自家用車。さらに言えば「先輩からタダで譲ってもらったんです」という1台でもある。
河合桂馬さんの職業は「フリーランスのDJ」。様々なブランドパーティや大規模コンベンションでのDJ、サウンドプロデュース業などの他、全国各地で行われる野外フェスの人気DJとして活躍している。
だがそういったフェスが行われる場所はけっこうな山奥だったりもするため、近隣に宿泊施設がいっさい存在していない場合も多い。
そのため河合さんはフリーランスとして独立する際、「あちこちの会場まで機材を積んで走って行けて、そんでもってそのまま車中泊もできちゃう車があれば便利なんだけどなぁ……でもオレ、車持ってないしなぁ」などと考えていたという。
すると天恵というのか何というのか、先輩から「あ、それならオレの要らなくなったハイエースバン、タダであげるよ」という話が友人経由で飛び込んできた。
これぞ渡りに船! ということで先輩に感謝しつつハイエースバンのスーパーGLを(タダで)入手した河合さん。
ただし譲ってもらったときのビジュアルは、いわゆる「ごくごく普通な感じ」。白とグレーから成るツートーンカラーのボディに「SUPER GL」という純正デカールがでかでかと貼られている、昔はよく見かけた感じの、言ってはなんだがおっさんくさいハイエースバンだったという。
地元・茅ヶ崎の風景をイメージした色と車内へ大改造
しばらくはそのままの状態で全国を走っていた河合さん。しかし「どうせならもっと自分っぽいビジュアルに、そして日本中を旅するためにも快適な仕様にしたい」と思うようになった。
そこで河合さんは、とある車中泊専門誌に自分のハイエースバンのカスタマイズ企画を提案。その提案は見事採用され、雑誌スタッフの手伝いも受けながら時間をかけてコツコツと、白とグレーのおっさんくさい(?)ハイエースバンを「自分仕様」へと変えていった。
「まあコツコツといっても塗装は2日間でバーッとやったんですが。スプレーガンを使ったのかって? まさか! わたしと雑誌のスタッフさんたちで刷毛とローラーを握って、ひたすら手塗りしたんですよ(笑)」
なるほど、確かに近くでよく見ると手塗りならではのムラがある。だがそのムラも、いい意味でユルいグルーヴ感が漂っているこのハイエースバンにはよく似合っているようにも思える。
「この緑色をボディカラーに選んだのは、当時住んでいた湘南・茅ヶ崎のイメージからです。で、今は一年のほとんどをこの車の中で過ごしてるとも言える状態なので(笑)、車内でしっかり休息が取れるようにフルフラットのベッドも作って、車内はすべてリアルウッドのパネルを貼ることにしました」
さすがに床だけは耐久性や耐水性などを考えてリアルウッドではなく「ウッド調の樹脂パネル」を敷いたが、確かにキャビンスペースの側面と天井はすべてリアルウッド。杉の木のいい香りが車内に漂っている。
天井中央にはLEDルームランプがあり、両サイドには調光可能なバーライトも。さらには1500Wまで使用可能なAC電源も取り付けたことで、ひたすら快適な空間が完成した。
妻の千穂さんと2人、サーフグリーンのハイエースバンに乗って街から街へ、場合によっては村から村へと、「旅であり仕事でもある日々」を続ける河合桂馬さん。
その日々のために使う車が「ごく普通のハイエースバン」だったならば、どうなのかはわからない。
だが少なくとも、この「素敵なサーフグリーン+リアルウッド+本格ベッドのハイエースバン」で旅を続ける河合さんご夫婦は、筆者の目にはとっても幸せそうに、とっても楽しそうに、見えた。
カーセンサー11月号(2019年9月20日発売)では、河合さんご夫婦が乗るハイエースバンのような車を「個性車」として特集している。この記事を読んで興味が湧いた人は、ぜひチェックしてほしい!文/伊達軍曹、写真/稲葉真
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