新車試乗レポート [2023.05.01 UP]
【メルセデス・AMG EQE 53 4MATIC+】電気自動車の実力を実車でテスト!
文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス
【メルセデス・AMG EQS 53 4MATIC+】電気自動車の実力を実車でテスト!
欧州や中国ではクルマを取り巻く環境や政策などが追い風となり、近年、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も多いのでは?
とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか見分けるのが難しい。
本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。
今回フォーカスするモデルはメルセデス・AMG「EQS」。AMGブランド初のEVとなった高性能セダンは、果たしてどんな実力を見せてくれるのだろう?
【第42回 アウディ Q4 e-tron】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
【第43回 VW ID.4】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
【第44回 メルセデス・ベンツ EQS450+】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
【第45回 メルセデス・ベンツ EQE】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
メルセデス・AMG EQE 53 4MATIC+のプロフィール
メルセデス・AMG EQE 53 4MATIC+
2024年にEV用部品の製造を本格稼働させる計画を進めているほか、再生可能エネルギー由来の電力を供給する充電スポットを各市場に建設予定のメルセデス・ベンツ。マーケットのニーズ次第という条件つきながら、2030年までにすべての新車販売をEVへとシフトする可能性を判断すべく、さまざまな施策を展開している。
そんなメルセデス・ベンツのミッドサイズEVが、セダンボディの「EQE」。それをベースに、ハイパフォーマンスカーブランドであるメルセデス・AMGが内外装をドレスアップして走行性能を鍛えたモデルが、今回フォーカスする「メルセデス・AMG EQE 53 4MATIC+」だ。
EQE 53 4MATIC+は、メルセデス初のEV専用プラットフォーム“EVA2”を採用する高性能EVセダンで、エンジン車とはかけ離れたルックスが特徴。全長4970mm、全長1905mm、全高1495mmというボディサイズは、同クラスのエンジン車である「Eクラス」のセダンよりも30mm長く、55mmワイドで、40mm高い。キャビンフォワードでボンネットが短いEQE 53 4MATIC+のワンモーションフォルムは、先進的でスタイリッシュな印象を与えてくれる。
AMGモデルであるEQE 53 4MATIC+のコックピットには、ダッシュボードの全面に3枚の高精細ディスプレイをレイアウトし、それらを1枚のガラスで覆った“MBUXハイパースクリーン”をオプション装着可能だ。これをセレクトすると、フラッグシップモデルであるEQS 53 4MATIC+に通じるデザインとなるが、タイトなキャビンもあいまって、EQEの方がよりスポーティ感が強い。
駆動方式は、メルセデス・ベンツ版のEQEが後輪駆動を採用するのに対し、EQE 53 4MATIC+は4WDを採用。最高出力224ps/最大トルク35.3kgmを発生するフロントモーターと、最高出力401ps/最大トルク62.1kgmを発生するリアモーターを組み合わせた2モーター4WDだ。
ちなみに、前後モーターの型式自体はEQS 53 4MATIC+のそれと同じだが、フロント、リアともに最高出力はEQE 53 4MATIC+の方が若干劣る。この辺りは、あえてスペックの差をつけ、フラッグシップモデルに花を持たせたものといえそうだ。
とはいえ、EQE 53 4MATIC+は0-100km/h加速で3.5秒をマークするなど速さは一級品。さらに、90.6kWhという大容量のリチウムイオンバッテリーにより、1充電当たりの航続可能距離はWLTCモードで最長549kmを記録する。
EQE 53 4MATIC+の4WDシステムは、“AMG 4MATIC+”と呼ばれる高度なもの。フロントとリアの電気モーター間で駆動トルクを緻密に連続可変させるトルクシフト機能を備えており、前後のタイヤに必要とされる駆動トルクを毎分1万回もの頻度でチェック。あらゆる路面において前後の駆動力を最適に配分する。
加えて、EQE 53 4MATIC+は“AMGダイナミックセレクト”も搭載。これは、走行モードを4段階に切り替えられるシステムで、それぞれのモードに合わせてモーターの駆動力特性やサスペンション、ステアリングなどを連動させることで、状況や好みに合わせた走り味を選択できる。
■グレード構成&価格・「メルセデス・AMG EQE 53 4MATIC+」(1925万円)■電費データ「EQE 53 4マチック+」◎交流電力量消費率・WLTCモード:212Wh/km >>>市街地モード:210Wh/km >>>郊外モード:208Wh/km >>>高速道路モード:217Wh/km◎一充電走行距離・WLTCモード:549km
メルセデス・AMG EQE 53 4MATIC+
【高速道路】EQE350+と比較してもWLTCモードほどの差は現れなかった
メルセデス・AMG EQE 53 4MATIC+のEVテストは、メルセデス・AMG EQS 53 4MATIC+と同時に行った。
高速電費は制限速度100km/h区間のその1が4.2km/kWh、その4が5.5km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が5.3km/kWh、その3が5.0km/kWh。
ちなみに前回のEQE350+は制限速度100km/h区間のその1が5.2km/kWh、その4が5.0km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が5.8km/kWh、その3が5.8km/kWh。
メルセデス・AMG EQS 53 4MATIC+は、制限速度100km/h区間のその1が4.6km/kWh、その4が5.0km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が5.9km/kWh、その3が5.3km/kWh。
スタンダードモデルに対してハイパフォーマンスなAMGがやや悪化するものの、WLTCモードほどの差はないのはEQSと同様。メルセデス・AMG EQS 53 4MATIC+と比べると前半のその1、その2がちょっと悪いという数値ではあるものの、WLTCモードは5%ほどしか差がないので、納得できる範囲ではある。
往路の高速テストコース
往路の高速テストコース。東名高速道路 東京ICからスタート。海老名SAまでを「高速その1」、海老名SAから厚木ICから小田原厚木道路を通り小田原西ICまでを「高速その2」とした。復路の高速テストコースは小田原厚木道路の小田原西ICから東名厚木ICを経由し横浜青葉ICまで走行。途中海老名SAで充電を行った
【ワインディング】重量級モデルのなかで優秀な電費データを記録
長くきつい登り勾配での電費は1.3km/kWhで、メルセデス・AMG EQS 53 4MATIC+とまったく同一。
ちなみにEQE350+とEQS450+はともに1.4km/kWhで、0.1km/kWhだけ悪化するのも同じだった。基本的には車両重量が増すほど登り電費は苦しくなるが、トヨタbZ4X 4WD(2020kg)でも1.4km/kWhなので、EQEとEQSはそこそこ優秀ということができる。
下りでは電費計から推測すると3.9kWhが回生で得られた。これはメルセデスAMG EQS 53 4MATIC+とほぼ同一。RWDのスタンダードモデルに比べ、ツインモーターだから回生は増えるかと思いきや、そうならなかったのはスポーティな銘柄のタイヤの抵抗が大きいからだろう。
自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した
【一般道】性能と重量から考えて納得できるデータとなった
一般道での電費は4.1km/kWhで、これまたメルセデス・AMG EQS 53 4MATIC+の4.0km/kWhとほぼ同じだった。
ちなみにEQE350+は5.3km/kWh、EQS450+は4.5km/kWhで、当然のことながらスタンダードモデルのほうがいい。EQE350+だけが、頭1つ抜けている感はあるが、信号のタイミングや周囲の交通によって走行に影響が出る一般道は電費もバラツキがちであり、それが出てしまったものと思われる。
いずれにしても、ハイパフォーマンスで重量級のモデルとしては悪くはない電費。これまでの延べ47回のテストで一般道の電費が4km/kWhを割り込んだのは、いずれもハイパフォーマンスで重量級のモデルをヒーターの負荷が大きい冬場にテストしたときだけだ。
東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した
【充電】優秀な充電性能を活かすためにも、大出力充電器の普及が望まれる
海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません
スタート時のバッテリー残量84%、走行可能距離382km。そこから159km走行した復路・海老名サービスエリアに到着したときにはバッテリー残量42%、走行可能距離192kmになっていたが、出力40kWの急速充電器を30分使用して15kWhが充電され、バッテリー残量58%、走行可能距離264kmに回復した。
充電開始直後から終了間際までほぼ30kWで安定していてしごく順調な充電だった。
この充電量は、制限速度100km/h区間を63~75km程度走れるにすぎず、やはり40kWの充電器ではちょっと物足りない。90kWの充電器を使ったメルセデスAMG EQS 53 4MATIC+は35.8kWhが充電され、150~180km走行分程度で、それぐらいは欲しいところ。
大容量バッテリーの重量級モデルの実用性を考えると、大出力充電器の普及が望まれるところだが、公共に任せるよりも、各メーカー、各インポーターが自前で用意していくほうが早そうだ。
足元の空間はゆとりがあるが、頭上周辺はタイトな印象
メルセデス・AMG EQE 53 4MATIC+どんなEVだった?
テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏
EQSと同じBEV専用プラットフォームを採用するEQEは比較的にコンパクトゆえにパーソナルユース向きでドライバーズカーとしての資質が高い。
AMGモデルとなれば、ドライビングプレジャーも一際高いので、自分でステアリングを握るならEQSよりも楽しいだろう。加速性能だけではなく、シャシー性能もAMGの名に相応しい出来映えであり、パフォーマンスに不満の声が出ることはないはずだが、果たして従来のエンジン車のAMGファンが、無音もしくは疑似的なサウンドで満足するかどうかはわからない。疑似的サウンドにしても、さらなる造り込みをしなければ、人気者になれないかもしれない。
メルセデス・AMG EQE 53 4MATIC+■全長×全幅×全高:4970×1905×1495mm■ホイールベース:3120mm■車両重量:2540kg(パノラミックスライディングルーフ装着車)■バッテリー総電力量:90.6kWh■フロントモーター最高出力:165kW(224ps)/4586~7773rpm■フロントモーター最大トルク:346Nm(35.3kgm)/0~4856rpm■リアモーター最高出力:295kW(401ps)/4552~7715rpm■リアモーター最大トルク:609Nm(62.1kgm)/0~4639rpm■システム最高出力:460kW(625ps)/505kW(687ps/RACE START時)■システム最大トルク:950Nm(96.9kgm)/1000Nm(102.0kgm/RACE START時)■サスペンション前/後:4リンク/マルチリンク■ブレーキ前後:Vディスク■タイヤ前/後:265/40R20/295/35R20取材車オプションエナチャイジングパッケージ、エクスクルーシブパッケージ、デジタルインテリアパッケージ、パノラミックスライディングルーフ
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
「黄信号だ。止まろう」ドカーーーン!!! 追突されて「運転ヘタクソが!」と怒鳴られた…投稿に大反響!?「黄信号は止まるの当たり前だろ」の声も…実際の「黄信号の意味」ってどうなの?
“生産版”「“R36”GT-R」公開に反響絶大! 日産の「旧車デザイン」採用&4.1リッター「V6」搭載で「借金しても欲しい」の声! 1000馬力超えもあるArtisan「“和製”なスーパーカー」が話題に
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
「緊急車両が来て道を譲らないとどうなりますか」 理由に「『聞こえんかった』は通用するのですか」 譲るのはマナー?義務? 具体的にどう譲ればいいのですか。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?