5月25日~6月7日に開催されるマン島TTレースに参戦するTEAM MIRAI(チームミライ)が5月15日、都内で参戦発表会を開催した。発表会ではチームを率いる岸本ヨシヒロ監督が2018年の振り返りと参戦に向けた意気込みを語り、マン島TTの電動バイククラス、TT Zero(TTゼロ)を戦う『韋駄天X改(いだてんエックスかい)』をお披露目した。
マン島TTレースは、1907年から行われている世界最古の二輪レース。一般公道を舞台としており、1周60.73kmの通称マウンテン・コースをタイムトライアル形式で競い合う。
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電動バイクで争うTTゼロクラスは、2009年から二酸化炭素を一切排出せずタイムを競うゼロエミッションカテゴリーとして設置され、世界からEVバイクが集まる最高峰のEVバイクレースとして知られている。決勝は、バッテリー性能、容量の関係から周回数は1周のみとなっている。
チームミライは、2013年にボーカロイドの初音ミクとコラボレーションしてマン島TTレースに挑戦。マシンには松下ヨシナリが乗る予定だったが、松下は他クラスでの事故により亡くなった。そのため、レースへの参戦は不可能と思われていたが、松下の盟友でありマン島TTレースのレジェンドライダーであるイアン・ロッカーが代役で出場。6位でレースを終えている。
2018年、チームミライは5年ぶりにマン島TTへ挑戦。ロッカーのレーシングチームであるTeam ILRとコラボレーションし、韋駄天X(いだてんエックス)で参戦したが、レースウイークからトラブルが続き、決勝はリタイアに終わった。
「去年はリタイアしてしまい、僕を含め応援してくれているみなさんも悔しい思いをしました。なので、もう一度挑戦しようと考えました」と岸本監督は2018年を振り返り、リタイアの原因を明かした。
「最初のプラクティスでバッテリーが過放電してしまい、バッテリーを痛めてしまいました。痛めたバッテリーは予備のものに交換して、2回目の走行を行いましたが、その走行でもバッテリーが過放電してしまい、セルのひとつから煙が発生してしまいました。そのガスは水素ガスで揮発性が高いものでした。イアン選手がマシンを止めてくれましたが、しばらくガスは上がったままでした」
「我々もマシンを救出しようするのですが、コースにオイルが撒かれたため、全面通行止めになってしまい、現場に行けない状況でした。その間に、消防士が(外装を)ある程度外してくれ、セルを取ろうとしてくれたのですが、端子のプラスとマイナスが接触して火花が出てしまい、ガスに引火して火がついてしまいました。けっこうトラウマです(笑)」
「火が出たことにより、バッテリーが全損してしまうという状況になってしまいましたが、バッテリーをノッティンガム大学のチームに貸してもらえることになり、マシンを作り直して決勝レースを走れることになりました。しかし、決勝レースでは冷却のトラブルでリタイアとなってしまいました」
■中身を大きく変えた『韋駄天X改』
2019年もチームミライはTeam ILRとコラボレーションし、2年連続でマン島TTに出場。ライダーはロッカー、岸本監督がチームを率いる。使用するマシンは、2018年の韋駄天Xを改良した『韋駄天X改』だ。
会場では岸本監督が2019年のマン島TTを戦う『韋駄天X改』をアンベイルした。『韋駄天X改』は、昨年と同じくインバーターとモーターが水冷と空冷のハイブリッドで、バッテリー容量を増やすなどの改良が加えられているという。
『韋駄天X改』の外見は昨年使用したマシンと大きな違いは見られないが「中身が違います」と岸本監督は語る。
「まずバッテリーや端子のレイアウトを全部見直し、いちから設計し直しました。タンクに関しては、バッテリーの容量を増やしたため、それに合わせて(マシンの)組み方も変更したので形状も変化しています」
「また、水回りや電子関係は信頼性の高いパッケージにし、モーターとインバター間のノイズ対策もパワーユニットで行っています」
バッテリーの容量を増やした理由については「実際に走らせてみて思ったよりも電費が悪かった。また去年、過放電したため、ある程度は(出力を)絞らなければいけないことがわかったので、計算し直してマン島を1周走れるバッテリーに適正化しました」と説明。
また、カラーリングは昨年と同じく歌舞伎の隈取(くまどり)をイメージしたトリコロールで「去年のリベンジもあるので、カラーリングを昨年と同じにしています」という。
最後に岸本監督はマン島TTに向けて「まずは完走すること。そして表彰台を目指したいです」と宣言し、発表会は幕を閉じた。
なお、会場ではマン島TTの発表と同時にチームミライがアメリカで6月24~30日に開催されるパイクスピークインターナショナルヒルクライムレース(PPIHC)に参戦することも発表された。パイクスピークでは岸本監督が『韋駄天X改』をライディングする。
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