タイヤの摩耗が5分山になったら交換のタイミング
6月は梅雨の季節。近年ではこの時期、線状降水帯と呼ばれる局地的な豪雨が続くこともあり、危険な状態になることも珍しくはありません。
そんな大雨の日には、クルマでの移動も気をつけなくてはなりません。とくに高速道路ではハイドロプレーン現象が発生することにより、クルマが大破するような事故に発展しかねないからです。
首都高速ドライバーズサイトによると、雨の日の1時間あたりの死傷事故は晴天時と比べて約4倍、施設接触事故は約7倍になるというデータが掲載されています。
道路に流れる雨水が深くなり、川のようになると、タイヤの溝が水を吐ききれなくなり、走行中にタイヤが路面から浮いてしまうのがハイドロプレーニング(ハイドロプレーン=水上飛行機)現象です。
新品のころには8mm程度あったタイヤの溝深さも、走り込んで4mm以下になったら簡単に浮いてしまいます。
ハイドロプレーニング現象を抑えるためには、新しいタイヤに履き替えることがひとつの方法です。推奨は、タイヤの摩耗が5分山になったら交換時期です。
もうひとつ、ハイドロプレーニング現象を防ぐ手段は、クルマのスピードを落とすことです。
擦り減ったタイヤほどハイドロプレーニング現象のリスクが高いので、大幅にスピードを落とす必要があります。水深が深いと、60km/hでもハイドロプレーニング現象が起こることもあります。
タイヤの性能の中で、耐ハイドロプレーニング性能が高いタイヤとウエット性能が高いタイヤは別ものだと思ってください。
耐ハイドロプレーニング性能とは、トレッドパターンの水はけの性能ですが、ウエット性能とはトレッドゴム(接地面のゴム)の濡れた路面での摩擦性能です。
同じ雨降りの道でも、タイヤから見ると違う性能なのです。
濡れた路面でなぜタイヤが滑ってしまうのかというと、アスファルト舗装の表面の小さな凹凸にゴムが引っ掛かって摩擦力を発生し、それがグリップ力になりますが、雨で濡れてしまうとアスファルト舗装とゴムの間に水膜ができて、引っ掛かりにくくなり滑ってしまうのです。
ただいつでも簡単に滑ってしまうのではなく、ある程度までは濡れたアスファルト路面でもグリップしてくれます。もう少し力をが掛かると滑ってしまうわけで、限界点が低くなってしまうのです。
だから濡れた路面を滑らないように走るにも、クルマのスピードを落とすことが大事なのです。
雨に強いタイヤを選ぶための指標「タイヤ・ラベリング制度」とは
年々、タイヤの技術革新が進み、燃費向上のためにタイヤの転がり抵抗が小さくなってきましたが、そうした対策を始めた当初、その副作用でウエットグリップ性能が下がってしまいました。
しかし最近では、トレッドゴムにシリカ(珪素)を入れることによって、転がり抵抗を減らしながらも、ウエットグリップ性能も良くなるという魔法のようなことができるようになりました。
シリカの量が多ければ多いほど、転がり抵抗性能とウエットグリップ性能の両方の性能が上がるのです。
しかし良いことばかりではありません。
これはコストが高くなり、当然タイヤの販売価格も上がります。とくに最近では原材料の高騰などでタイヤの価格が上がっているため、どこで妥協すれば良いのか、自分のクルマの使い方を考えながら決めていかなくてはなりません。
そんなとき指標となるのが、タイヤラベリング制度です。すでに2010年1月より運用されています。
タイヤラベリング制度とは、「転がり抵抗性能」と「ウェットグリップ性能」の等級分けをおこない、タイヤを販売するときにラベル表示をして、消費者に対して情報提供しています。
転がり抵抗係数の数値に合わせて、AAA、AA、A、B、Cの5等級、ウェットグリップ性能をa、b、c、dの4等級に分けています。
ラベル表示されているタイヤの中でも、転がり抵抗性能がAグレード以上、ウェット性能がdグレード以上に入っていれば「低燃費タイヤ」と定義されています。
そもそも、なぜこの制度ができたかというと、燃費の良いタイヤを作り始めた初期のころ、転がり抵抗は小さいけれど、ウエット性能が極端に低かった時代があったからです。
燃費が良くなって燃料代が浮いても、雨でスリップして事故をおこしたら、損害はどちらが大きいか簡単にわかります。
だから転がり抵抗が小さいだけでなく、その当時は二律背反とされていたウエット性能を表示することに意味があったのです。
このラベリング制度は、JATMA(一般社団法人 日本自動車タイヤ協会)に加盟しているタイヤメーカー(海外メーカーも含めて)14社が参画しています。
この制度は難しいタイヤ選びの指標になるはずです。
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