新型「クラウン」のなかでも、クルマファンからの期待の高い「エステート」。最新の情報では、2024年春ごろデビューというのが濃厚だという。
トヨタは、プレスリリースで、この新型クラウンエステートについて、「ラージSUV」としているが、全高1620mmという数字はSUVにしては低く、どちらかといえば、ステーションワゴンのリフト版。ステーションワゴンは、国内では、かつては全盛を極めたものの、現在ラインアップされているモデルは、トヨタ「カローラツーリング」やスバル「レヴォーグ」、マツダ「マツダ6 ステーションワゴン」など、ほんのわずか。ステーションワゴンの魅力を振り返りつつ、伝統のステーションワゴンに期待したいことを考えてみよう。
待ってろ欧州勢!! 新型クラウン軍団最注目モデル「クラウンエステート」登場は1年以内!!
文:吉川賢一
写真:VOLVO、BMW、MercedesBenz、Audi、Porsche、VW、JAGUAR、TOYOTA
堂々としたボディサイズで登場する新型クラウンエステート
新型クラウンエステートに関しては、冒頭で触れたように、最新の情報では、2024年春ごろデビューが濃厚とされているが、現時点(2023年1月初旬、東京オートサロン前)時点では、未発表な部分がまだまだ多い。
ただボディサイズは、全長4930mm×全幅1880mm×全高1620mm、ホイールベースは2850mm(2022年7月時点の計画値)と発表されており、おおよそ、レクサスの新型RX(4890×1920×1695、ホイールベース2850)の全高を75mm下げたようなサイズ感だ。これほど堂々たるボディサイズとなれば、後席や荷室の広さは、十分以上に確保されていることだろうし、クラウンクロスオーバーRSでみられた、ハンドリングや乗り心地、静粛性の高さによる質感の高い走りも踏襲されるはずだ。
ボディサイズ全長4930mm×全幅1880mm×全高1620mm、ホイールベースは2850mm、「長くて背が低いSUV」の新型クラウンエステート。比較的全高が低いSUVのレクサス新型RXと比べても、75mmも全高が低い
今後は日本でもステーションワゴンが求められるはず!!
SUV大流行の現代においても、海外では、ステーションワゴンは根強い人気がある。メルセデスやBMW、アウディ、そしてフォルクスワーゲン、ボルボ、プジョー、そしてジャガーに至るまで、ステーションワゴンをラインナップしている。セダンの車体をベースに設計をするので横展開がしやすい、といった自動車メーカー側の事情もあるにはあるが、海外メーカー、特にドイツ勢がステーションワゴンをつくり続ける理由は、ハイスピードで移動をする道路環境が関係している。
ドイツでは、最高速度が高いクルマは問答無用で「偉い」。速く走るには、クルマの操縦安定性は高くないとならないし、長時間の高速運転でもドライバーの負荷を減らせるような先進の走行支援システムも必要になる。そのため車両価格は高くなるが、「速く走るためにお金を出す」というのは合理的と考えられており、むしろそうしたクルマでないと、ドイツでは認められない。
もちろん、日本ではドイツほどの速さは求められていないが、日本で人気の車室内の高さを優先した、バンのようなクルマでは、空気抵抗による燃費悪化は免れず、またハイスピード走行中の安定性能が著しく悪化し、安全性に問題が出てしまう恐れがある。新東名や東北道の一部区間で最高速度が120km/hまで引き上げられるなど、日本でも高速道路の法定最高速度が引き上げられつつあることも考えれば、日本でも今後、ユーティリティにも優れたステーションワゴンが見直される可能性は十分に考えられるのではないだろうか(願望含む)。
ステーションワゴンは、セダンの操縦安定性の高さを持ちながら、多くの荷物を積んだ状態でも、安全かつ速く目的地へ到着できる、最も合理的な車型といえる
海外を見据えつつ、日本人にもあわせたクルマづくりが必要
新型クラウン4車種はグローバルで販売されることが決定しており、ライバルはジャーマン3を含む欧州メーカーや国内メーカーの海外専売モデル、評価の高い韓国系メーカー、ダークホース的な中国メーカーなど様々。具体的には、レガシィアウトバックやメルセデスオールテレイン、BMW ツーリングなど強豪がそろうジャンルに挑むことになる。
これらを考慮すると、かつての「クラウンエステート」は、フォーマルなイメージが強いクラウンに広大なラゲージを与えることで、週末には仕事から離れて自由に時間を楽しめるような、遊び心のあるステーションワゴンであったが、今回の新型エステートでは、先代のクラウンエステートのように、日本国内でとどまる前提のクルマづくりでは、勝ち抜くことは難しくなる。クラウンクロスオーバーがフォーマルから大きく離れて登場したように、新型クラウンエステートの立ち位置も大きく変わってくるはずだ。
しかしながら、海外だけを見据えたクルマづくりでも、かつてのレガシィツーリングワゴンがそうであったように、伝統の「クラウン」ブランドを維持することが難しくなる。ただ、クラウンクロスオーバーが国内で想像以上にヒットしていることを考えれば、そのような心配も無用なのだろう。あと数か月ほどで全貌が明かされると思われる、新型クラウンエステート。登場が非常に楽しみだ。
初代レヴォーグ(2014年~2020年)。北米市場にあわせて肥大化したレガシィツーリングワゴンに代わって導入された、国内専売のステーションワゴン。実用性が求められるステーションワゴンにとって、日本にあわせた設計であることも重要だということを示した一台
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クラウンのエステートはこんなに安っぽくでは困る。