メルセデス・ベンツS450に搭載された新開発のM256型3.0ℓ直列6気筒直噴ターボエンジン+ISG+48Vシステム+電動スーパーチャージャーを、パワー・トルクとも高めて搭載した「メルセデスAMG E53 4MATIC+」。毎年恒例のJAIA(日本自動車輸入組合)「輸入車試乗会」において、会場の大磯プリンスホテル敷地内とその近隣で短時間ながら試すことができた。REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、DAIMLER
S450のM256型エンジンは367ps/5500~6100rpm&500Nm/1600~4000rpmなのに対し、E53が搭載するそれはターボチャージャーの大型化で68ps&20Nmアップ。最高出力は435ps/6100rpm、最大トルクは520Nm/1800~5800rpmとなっている。
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なお、M256型エンジンと9速ATとの間に搭載されるISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)のパワー・トルクは22ps&250Nmで、トルクが7Nm低くなっている。
E53はさらに、前後駆動力配分を50:50~0:100の間で自動的に調整する「AMG 4MATIC+」、「コンフォート」「スポーツ」「スポーツプラス」の3モードから特性を選べる連続可変ダンパー「ADS+」を採用したマルチチャンバー型エアサスペンション「AMGライドコントロール+」を搭載する。
内外装は最上級モデルの「E63」シリーズよりやや落ち着いたものとなっているものの、2本のパワードームを持つボンネットやスポーツシートなど、AMGらしいスポーティ……というよりヤンチャでワルなデザインテイストは変わらず。またヘッド・ニークリアランスとも充分に確保され、サイズが大きくホールド性重視のシート形状を持つ、Eクラスならではの居住性に優れた後席は、いささかも損なわれていない。
エンジンを始動してみる。すると、「直列6気筒」というエンジン形式に期待される、繊細かつ軽やかでバランスの整ったサウンドではなく、E53専用の「AMGエグゾーストシステム」がそうさせているのか、野太い低音とアフターファイアのような「バラバラバラ」という音がやや演出過剰気味。ドアや窓を閉め切った状態で車内から聞くと、遮音・吸音材で中高音域がカットされているためか低音がより一層強調され、スポーティかつ官能的ではない4気筒エンジンのように感じられた。
だが走り出してみると、そのサウンドとは裏腹に、加速フィールはウルトラスムーズで過剰さが全くない。モーターにスーパーチャージャー、そして大型化されたターボチャージャーと、トルク増強デバイスが3種類も搭載されているため、アクセルペダルを踏み始めた瞬間にモーターとスーパーチャージャーの強烈な蹴り出しを食らい、その後はアクセル開度とエンジン回転が上がるにつれてターボが凄まじい勢いで速度を高めていく…という感触を想像していたのだが、その予想はいい意味で裏切られた。各デバイスがシームレスに連携し、ドライバーに極上のファン・トゥ・ドライブをもたらしてくれるのだ。その点では、最上級モデルの「メルセデスAMG E63S 4MATIC+」はもちろん、PHVの「E350eアバンギャルドスポーツ」や、最もベーシックな「E200アバンギャルド」よりも操りやすいと言えるだろう。
またハンドリングや乗り心地も、荒れた路面では相応の突き上げやフロアの振動を伴うものの、E63Sほどハードかつ演出過剰なものではなく、適度に引き締まっていてスポーティ。高速道路がメインの使い方であれば、むしろ丁度良い塩梅に感じられるはずだ。
一見するとヤンチャだが、その中身は知性に溢れたエリートヤンキー。
内外装や音では分かりやすいスポーティさを備えながら、走りは最先端の技術を満載しつつもそれらの存在を感じさせない完成度を持つE53に、私は試乗後そんな印象を、得も言われぬ好感とともに抱いていた。
<メルセデスAMG E53 4MATIC+(9速AT)>
全長×全幅×全高:4950×1850×1450mm ホイールベース:2940mm 車両重量:2020kg 駆動方式:4WD エンジン形式:直列6気筒DOHC直噴ターボ+スーパーチャージャー 排気量:2996cc ボア×ストローク:83.0×92.3mm 圧縮比:10.5 エンジン最高出力:320kW(435ps)/6100rpm エンジン最大トルク:520Nm(53.0kgm)/1800-5800rpm モーター最高出力:16kW(22ps) モーター最大トルク:243Nm(24.8kgm) JC08モード燃費:10.0km/L 価格:1226万円
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