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池沢早人師が愛したクルマたち『サーキットの狼II』とその後【第18回:ルノー メガーヌ R.S. トロフィー】

掲載 更新 6
池沢早人師が愛したクルマたち『サーキットの狼II』とその後【第18回:ルノー メガーヌ R.S. トロフィー】

数あるクルマ遍歴の中で異色のFFモデル

週刊少年ジャンプでの連載開始から45年の時を経た今もなお、自動車漫画の金字塔として多くのファンを魅了する『サーキットの狼』。さらに連載終了から10年後に第二章として週刊プレイボーイで連載された『サーキットの狼II モデナの剣』は、日本におけるスーパーカーの文化を牽引した名作として愛され続けている。

池沢早人師が愛したクルマたち『サーキットの狼II』とその後【第18回:ルノー メガーヌ R.S. トロフィー】

そんな両著の作者である池沢早人師先生はカーフリークとしても知られ、フェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニなど歴代のスーパーカーを乗り継いできた。そんな池沢先生が記念すべき令和元年に選んだ一台が、フランスのルノー社からリリースされた高性能ハッチバックモデル「メガーヌ R.S. トロフィー」だ。ニュルブルクリンクの北コースで「量産FF車世界最速記録」を打ち立てたメガーヌ R.S.トロフィーRのベースになった5人乗りFF最強モデルは、スーパーカーの伝道師である池沢先生のお眼鏡に適ったのだろうか?

「FF最強モデル」というフレーズに刺激されて

ボクの自動車遍歴の中でFFレイアウトを持つクルマはそう多くない。その中でもフォルクスワーゲン ルポ GTIは可愛いし、小気味いいし、当時でも6速MTだったしと気に入っており、今は息子のクルマになってまだ手放していない。しかし“日常の足“としてFFモデルを所有したことはあるものの、ファーストカーとして手に入れたのは今回のルノー・メガーヌ R.S. トロフィーが初めての経験になると思う。

このメガーヌ R.S. トロフィーは、2019年にニュルブルクリンクサーキットの北コースで最速記録を樹立した「メガーヌ R.S. トロフィーR」のベースになったモデル。トロフィーRはリヤシートを取り払うなどして130kgもの軽量化を果たしたスペシャルなモデルだけど、ボクが手に入れた5人乗りのメガーヌ R.S. トロフィーとDNAは共通している。フロントに搭載するターボで武装した直列4気筒の1.8リッターエンジンは共通で、300psの最高出力を発揮するモンスター。もう、このスペックを見ただけで”只者ではない“っていうことが理解できるよね。FFモデルで300psだよ。

日常での使い勝手も悪くはないけど・・・

このクルマはBMW M4と入れ替えに我が家にやってきたんだけど、趣味であるゴルフの足としても使ってみた。日常的な使い勝手は悪くないし、アルカンターラのバケットシートもしっくりきて音の演出も良く、乗っていて楽しいクルマ。でも、その実態はニュル最速車のベースモデルであり、性能はかなりサーキット向けになっていることは間違いない。

硬く締め上げられたサスペンションは日常的なクルマとしてはハードな味付けだから、子供を乗せてファミリードライブ・・・というシーンでは不満の声が上がると思う。フランス車の伝統である“猫足”とか“伸びやかなサスペンション”とは全く異なり、どちらかと言えばドイツ車の硬めの味付けをさらにハードにした印象だ。

クルマの性格としてはサーキット走行会や峠のドライブが好きなアグレッシブなオーナー向けだね。ボクもゴルフの帰り道に伊豆スカイラインを走ってみたんだけど、峠に入るとその良さが理解できた。街中では硬いと思っていた足まわりも、コーナーの連続ではしなやかさをみせるほど激変! セッティングの基準値はここにあったと思うぐらいだった。FFでありながらもコーナーの出口に向かってしっかりと旋回してくれる。オーバースピードで進入してもアンダーステアが少ないのもFFらしくない味付けだ。これには4コントロールも効いている。

筑波サーキットでそのポテンシャルを確認

色々な自動車雑誌でも絶賛されているメガーヌ R.S. トロフィーの実力を試したくなったボクは、筑波サーキットのミニコース(筑波コース1000)に持ち込んでみた。このクルマは足まわりに特徴があって、FFのネガティブポイントを消すために4輪操舵システムの「4コントロール」が装備されている。60km/hまでのコーナリングでは後輪が逆位相に切れ込み、ESCが切れるレースモードにすると100km/hくらいから同位相に切り替わる。その実力はサーキット走行で如実に現れ、前輪駆動車とは思えないオーバーステアなハンドリングを発揮してくれた。

参加した走行会のスケジュールは10分ほどのサーキットランを6本走るというものだったけど、スポーツモードでよりもレースモードに切り替えておくと楽しさが倍増した。ミニコースではありながらも同位相に切り替わるレースモードの方がオーバーステアの感覚で走りのシャープさが楽しめる。レースモードではオーバーステアの傾向が強くFFなのにハーフスピンしちゃったほど(笑)。コースがタイトなこともあり、積極的にシフトチェンジせずともAT感覚で走った方がコンマ数秒ほどタイムが良かったことを報告しておこう。

今回の走行会では合計6本走り、その6本目にバイブレーションが起こって緊急ピットイン。その場ではバイブレーションの原因が分からなかったんだけど、サーキットの帰りにタイヤショップに持ち込むとタイヤのトレッド面が剥離していることが発覚。まぁ、コンパクトなモデルなのに車重が1.5トン近くあり、後輪操舵でタイヤを路面に押し付けるというストレスが原因になっているのかもしれない。

万人に向くとは言い難いスパルタンなR.S. トロフィー

サーキットの特殊路面はグリップ力が高くタイヤへの攻撃性が高いということもあるだろうけど、メガーヌ R.S. トロフィーでサーキットを走るならタイヤの消費に耐えられるだけの財力がないと厳しいかも。それを除けばエンジンのパワフルさやハンドリングのシャープさ、横Gが掛かった状態でのサスペンションの踏ん張り感はハイレベルでバランスが取れているクルマだと思う。

可変バルブ式のマフラーが奏でるエキサイティングなエンジン音の演出も悪くないしね。ただし300psのパワーと軽いペダルの影響で、不用意にアクセルを踏むと街乗りではトルクステアが気になるといえば気になるポイントかなぁ・・・。

愛車として手に入れたルノー メガーヌ R.S. トロフィーは、万人に向いているクルマとは言い難い。このクルマを手にするべきオーナー像としては「走るのが好き」「ワインディングでのドライブが好き」「疲れを知らないタフな体力を持つ」が条件になりそう。

軽量でミッドシップのアルピーヌに興味が移る

ハッチバックスタイルながらも決してファミリーカーではないので、セカンドカーとしても所有できる人におすすめしたいクルマだね。余談だけどラゲッジスペースはタイヤハウスが大きく飛び出しているので決して広くはなく、ゴルフバッグをそのまま横にして収納するのは難しい。ゴルフに使うのならリヤシートを倒して積まなければならないことを覚悟しておくべし。

F1GPでも活躍しているルノーが作るエンジンは本当に素晴らしいと思う。でも、そうなると同じレベルのエンジンを搭載しているミッドシップの新型アルピーヌ A110Sが気になってしまうことは否めない。『サーキットの狼』を描くきっかけとなったロータス ヨーロッパに陶酔していたボクとしては、無理やりFR的な味付けを加えたメガーヌ R.S トロフィーよりも、軽量でミッドシップのA110Sに乗ってみたいと思うのは必然かも。もし今、風吹裕矢が愛車にするとしたなら、アルピーヌ A110Sになることは決定的だ。

・・・と言うことで残念ながらルノー メガーヌ R.S. トロフィーとの蜜月は3ヵ月をもたずして終了してしまった。大きな不満は無かったけど「FFらしくない味付け」だったとは言いながら、やはりFFモデルはボクには向いていないようだ。短い付き合いではあったものの、メガーヌ R.S. トロフィーの楽しさはボクの愛車遍歴の1台として刻まれたのである。

RENAULT MEGANE R.S. TROPHY

ルノー メガーヌ R.S. トロフィー

GENROQ Web解説:世界最速FFモデルのDNAをもつトロフィー

モータースポーツの最高峰であるフォーミュラ1で活躍するルノースポール(R.S.)。そのレーシングスピリットを凝縮し、車名にも冠するメガーヌ R.S, トロフィーは、ニュルブルクリンクで繰り広げられる熾烈な最速タイムを更新したFFモデル最速の称号を持つメガーヌ R.S. トロフィーRのベース車だ。

トロフィーRと共通のターボユニットで武装された専用設計の1.8リッター直列4気筒DOHC16バルブエンジンを搭載し、300ps/6000rpmの最高出力と420Nm/3200rpmの最大トルク(EDCモデル)を発揮する。また0-100km/h発進加速では5.7秒という俊足を誇り、フロントエンジン・フロント駆動のFFモデルでありながらも並み居るスーパースポーツに伍する実力が与えられている。

ルノー・スポールの叡智を結集したハイテクを搭載

同モデルのターボチャージャーには軸受部分にセラミック製のボールベアリングが採用され、1分間に20万回転もの過酷な状況においてもフリクションロスを低減。高温・高負荷の環境でも最高のパフォーマンスを発揮することが可能となる。従来のボールベアリングシステムと比較して摩擦係数を3分の2まで低減させ、過給の反応時間は格段に短縮している。

ラインナップに用意されるトランスミッションにはダイレクトなドライバビリティを発揮する6速MTと電子制御式の6速AT(6速EDC)の2タイプ。後者のEDCは「エフィシエント デュアル クラッチ」の略であり、プロのレーシングドライバーを凌駕する俊敏なギヤチェンジを実現。変速による回転の低下(トルクロス)を最小限に抑え、コーナリングの立ち上がりからストレートへの加速まで、あらゆるシーンでエンジンパワーを効率良く伝達させることができる。

EDCは減速時にも最適なギヤをセレクトしてスムーズな走りを自動的に提供し、より早く、より安定した走りを披露してくれるのが大きな特徴。また、ステアリングに装備されるパドルシフトを使うことで、ステアリングから手を離すことなくシフトチェンジを行える。アクセル、ブレーキ、操舵に集中できるパドルシフトは、今やモータースポーツシーンに欠かせない大きなアドバンテージだ。

強化したサスペンションがハードな走行に貢献

サスペンションではメガーヌ R.S.と比べ、フロントのスプリングレートを23%、リヤ35%、アンチロールバーを7%強化。各ダンパーも25%の強化を図ってロールを最小限に抑え、ハードな走りに貢献している。またサーキット走行を念頭に置き、負荷の掛かる状況でもトラクションを発揮するトルセンLSDを備えて高い走行安定性と操舵性を両立する。

メガーヌ R.S. トロフィーの目玉として注目されるのが「4コントロール」と呼ばれる4輪操舵システムだ。その構造はトーションビーム式のサスペンションにナックルを設けてタイロッドの動きにより舵角を与えるもので、タイロッドに連結されるロッカーアームをアクチュエーターで作動させている。低速域では逆位相になって旋回性を高め、高速域では同位相となり安定性を向上。その味付けはFFらしからぬもので「メガーヌ R.S. トロフィーはFR的な味付け」と呼ばれる所以である。

特別なラインナップとして世界限定500台の「メガーヌ R.S. トロフィーR」を用意。限定500台の中には、エキスパートドライバー専用に設計された「カーボン・セラミックパック」と呼ばれるスペシャルモデルが30台含まれ、FF最速モデルのパフォーマンスを猛アピールする。

TEXT/並木政孝(Masataka NAMIKI)

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みんなのコメント

6件
  • 70近いですよね もうそろそろ、、、
  • そかぁ、3ヶ月で手放したんかぁ~
    「ちょっとつまみ食いしてみよかな??」
    って感覚で所有してみた、って感じでしょうかね

    個人的にはメチャ気になってるモデルなんですよね
    ただ、フランス車ってのがなぁ…やっぱイタリア車乗りたいもんなぁ
    アルファロメオでこんなの出してくれないかなぁ?
    そしたら今の147GTAからリプレイスしたい!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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