開幕戦以来、じつに2カ月以上というブランクを経て、いよいよ2024年全日本スーパーフォーミュラ選手権の戦いが再開する。舞台は九州、大分県日田市に位置するオートポリスだ。走行前日の5月17日、暑いほどの日差しが降り注いだサーキットでは、各陣営が久々のレースに向けた準備を行った。
昨年12月の合同/ルーキーテストから、2月の開幕前の公式テスト、そして3月上旬の開幕戦まで、直近のスーパーフォーミュラの走行はすべて鈴鹿サーキットで行われてきた。また、今週末のオートポリスは気温が大きく上昇しそうで、30度程度になるという予報もある。
戦いの舞台は初夏の九州へ。スーパーフォーミュラ第2戦オートポリス 搬入日の様子
冬の鈴鹿から初夏のオートポリスへと環境が変わるなか、勢力図は動くのか。準備が進む金曜のパドックで、開幕戦で速さと強さを示した2陣営に話を聞いた。
■ふたりのエンジニアが持ち寄った“新コンセプト”
開幕戦の予選でポールポジションを獲得したのは、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)だった。そのチーフエンジニアを務める渡邊信太郎氏は、「前回は上出来だったのですが、チーム(体制)も新しいですし、晴南とのコンビも今年が初めて。『前回が良かったら今回もうまくいく』というほど甘いレースではありませんから、走ってみないと分からないですね」と語る。
第1戦の決勝では、大湯都史樹車の無線が不調だったこともあり、阪口はベストタイミングでのピットインができなかったという。それによりロスも生じ、レースは7位という結果に終わっていた。
「そのあたりは反省材料としてはありますけど、今回はアジャストできる部分だと思いますし、あとはタイヤの消耗の大きいコースになりますので、そこの部分を踏まえたセットアップを決勝では考えなければいけません」
今年から阪口を担当する渡邊エンジニアだが、昨年の阪口車と比べると、今年のセットアップは「まったくコンセプトが違う」という。これは渡邊エンジニアがチームにもたらしたものもあれば、同じくチーム新加入の岡島慎太郎エンジニア(SFではパフォーマンスエンジニアを担当)による部分もあるという。
「(エンジニア)ふたりが考えているコンセプトが、結構近いんですよ。そこについては、鈴鹿からもお互い密にアイデアを出し合って『これでいこうか』みたいな形で進められている。それもすごくいいんじゃないかと思いますね」
渡邊エンジニアによれば、オートポリスはSFのカレンダーのなかで「一番難しいコースかもしれない」という。
「全部のコーナーがチャレンジングじゃないですか。それでいて、コーナーのR(半径)が常に一定ではない。だから常にクルマのパフォーマンスとドライバーの力量、両方がかなり高い次元でリンクしないと、上位には行けません。あとは路面の状況が良くなかったりするので、とにかくタイヤをいかにうまく使うか、そこが大きいと思います」
昨年とはまったくコンセプトの異なるマシンで、鈴鹿からの好調を維持できるのか。まずは予選での一発に注目したいところだ。
■「ないものねだり」に陥るな
2021・2022年王者で、2024年開幕戦を勝利で終えた野尻智紀(TEAM MUGEN)。タイトル奪還に向けて好スタートを切った形だが、野尻は昨年、直前の肺気胸によりオートポリス戦を欠場しており、“ブランク”がある舞台となる。このため、野尻は2023年に導入されたSF23シャシー、そして新たなスペックのタイヤで、オートポリスを走った経験がない。
昨年、野尻はコースサイドやピット裏で自分の欠場ラウンドを見守り、“外から見ることでしか得られない収穫”を得ていた。
「昨年、外から見ていて思ったのは、ラップタイムがそれまでよりも数パーセント遅いな、ということでした」と野尻は言う。
「ユーズドに至っては1分30秒に近いラップになっていたりしたので、『ものすごく遅いな』と。いままで経験している『速い、速度感のあるオートポリス』というのが染み付いてしまっているので、そういった経験が邪魔をしないように、これまでとはちょっと違ったアプローチでセットアップなどを判断していかなくてはいけないと思っています」
野尻は昨年12月の鈴鹿テストの時から、暑くてダウンフォース量が減る状況下でのサードエレメント含むダンパー共通化の影響を気にしていた。今回、いよいよ“寒い鈴鹿”以外で、現行パッケージの車両が走ることになる。この点は、すべての陣営にとって同じ状況だ。
「今週は暑いですし、そもそもオートポリスは標高が高いので数パーセントはダウンフォースが少なくなります。そこで今年規則に加わった新しいダンパーとかがどういった振る舞いをするのかは正直予測できない部分もあります」と野尻は続ける。
「また、路面のギャップが大きいサーキットですから、そういったところに対して良い作用もあるだろうし、悪い作用もあるだろうし……その辺がちょっと難しいなと思います」
「いままでの経験をもとに判断していってしまうと、『いや、そもそもこのクルマでそこまで行けないし』みたいな、“ないものねだり”の状態になってしまうかもしれません。そうならないように、と思っています」
暑さのなか、九州の山間に位置するサーキットで、各車の勢力図はどう動くのか。2024シーズンの今後を占う意味でも、注目度の高い第2戦の週末となりそうだ。
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