タイトル決定の天王山で迎えた2024年ERCヨーロッパ・ラリー選手権最終戦『Rally Silesia(ラリー・シレジア)』が10月11~13日にポーランドで開催され、前戦ウェールズで初表彰台を獲得したチームMRFタイヤのアンドレア・メベリーニ(シュコダ・ファビアRSラリー2)が、シリーズ初優勝を達成して今季8人目のウイナーに。そしてレグ1首位から最後はセーフティクルーズに移行し、3位表彰台でフィニッシュした王者ヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 Nラリー2)が、欧州選手権連覇を決めている。
雨絡みとなった前戦『JDSマシーナリー・ラリー・ケレディジョン』では、チャンピオンが予選ステージ最速から一度もラリーリーダーの座を譲ることなく快勝。スタンディング上でも優位を保ってポーランド南部の最終戦に乗り込んできたが、最初の予選ステージはタイトル獲得への野望に燃えるライバル、マシュー・フランチェスキーニ(シュコダ・ファビアRSラリー2)の最速で幕を開けた。
王者ヘイデン・パッドンが貫禄のウェールズ舗装路制覇。チャンピオンシップ連覇に王手/ERC第7戦
「本当に、本当にいい気分だ」と3.05kmのステージでベストを叩き出したフランチェスキーニ。「今季最後のラリーをできるだけ楽しみたい。タイトル獲得は確かに難しいだろうが、シーズンを締めくくるためには楽しむことと良いペースを保つことだけを心がける。予選ステージではカットで泥だらけになるので、ラインをオープンかつワイドにするのがいい。これが僕の戦略だ」
一方、2番手のメベリーニと地元の英雄ミコ・マルチェク(シュコダ・ファビアRSラリー2)を挟んで4番手発進となったパッドンも、フランチェスキーニとは異なる戦略で臨んでいたことを強調した。
「このラリーにはアンチカットがたくさんあるから、泥が出てくることはあまりないと思う。(出走順で)もう少し後ろにいれば、他のドライバーが何をしているのかを見ることができる。だから、この(泥が多い)予選ステージはラリーに関係ないと思うよ」
そのままカトヴィツェ市中心部で開催されたSSSでは、前戦で惜しくもタイトル争いから脱落したマルチェクが地元ファンを沸かせる最速タイムを記録。セレモニアルスタートを前にスイッチの故障でファビアが緊急修理を要し、電動スクーターで声援に応えていたメベリーニが2番手に続き、パッドンが並ぶトップ3で翌日土曜の本格ステージ群へと突入していく。
現地時間9時から始まったオープニングループでは、先頭走者を選んだフランチェスキーニが、とくに気温と路面温度が低い午前のステージで、グリップが得られずハンドリングの問題に悩まされ5番手と低迷することに。一方、ピレリを装着したチャンピオンはメベリーニに6.8秒差のリードをつけて初日を走破した。
「クリーンかつ正確であることが鍵になるだろうね」と、この日の7ステージ中5つのSSでベストタイムを記録したパッドン。
「プッシュし始めると、オーバードライブしてタイムを失い始める。もちろん、タイヤを追加したことで余分な重量を運んでいるし、もっと攻められるとは思うが、現時点では自分たちがやっていることに充分満足している」
■「ここに何をしに来たのか分かっていた」王者パッドンが連覇達成
背後のメベリーニと、3番手のシモーネ・テンペスティーニ(シュコダ・ファビアRSラリー2)らに対し、このままポジションを維持すれば文句なしの戴冠が決まる状況を作り出したパッドンは、残る日曜最終6つのSSを前に堅実なアプローチを選択。オープニングSSからメベリーニの接近を許容すると、雨のSS10こそ反撃のタイムを記録するも、続くSS11で1.6秒差の逆転を許す。
自身初のERCラリーリーダーの座に立ったメベリーニは、ドライのソフトコンパウンドとウエットウェザーカバーのクロスタイヤ構成を選択したことでさらにペースを上げ、最終的に18.3秒差でERC初勝利を収めた。
「最高の気分だよ」と最終戦で待望のERCウイナーに輝いた25歳のメベリーニ。「最後の11kmは人生でもっとも長いステージだった。信じられないほどの旅だったし、支えてくれた皆に感謝したい。昨季はラリー5からスタートし、ラリー4そしてラリー2へと歩みを進めて来られた」
「(コドライバーの)ヴァージニア・レンツィにも感謝したい。彼女はいつも僕の言うことに耳を傾けてくれて、クルマに乗っているときにいつも最高の気分にさせてくれた。そして最初から僕とヴァージを信じてくれたMRFタイヤにも感謝している」
そして日曜の7番手スタートから奮闘し、SS14で慎重なドライブに徹するパッドンを降格させ、ERCで初の2位表彰台を獲得したジョン・アームストロング(フォード・フィエスタラリー2)に続き、SS13でハーフスピンとオーバーシュートを起こしながらも3位に留まったパッドンが、これで2年連続のヨーロッパ・チャンピオンの称号を手にした。
「ステージでは冒険だったよ」とニュージーランド出身ながら欧州連覇を果たしたパッドン。
「バンクでラインを外れ、かなりロスした。フルスロットルで出ようとしていたが、そこから後退して15秒ほどを失ったんだ。さらに数km後のジャンクションでバリアをまっすぐ通り抜け、Uターンして戻ってこなければならなかった。ひとつのステージでこれほど多くの冒険をしたことはないと思う」と苦笑いのパッドン。
「おそらく20秒以上は遅れただろうが、そのときは『今じゃない』とも思っていた。今日は戦いに巻き込まれてタイトルを危険にさらすつもりはなく、ただクルマをフィニッシュに持ち帰りたかった。自分がここに何をしに来たのか分かっていたし、タイトルは非常に重要なものだ。僕らはそれを獲得するために1年中努力してきたし、大半はパフォーマンス不足で窮地に追い込まれていたが、チームはそれを取り戻すために懸命に取り組み、ここ数戦のラリーでそれを成し遂げたんだ!」
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