現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ジャガー初の電気自動車「I-PACE」は何がどう革新的なのか?

ここから本文です

ジャガー初の電気自動車「I-PACE」は何がどう革新的なのか?

掲載 更新
ジャガー初の電気自動車「I-PACE」は何がどう革新的なのか?

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

 ジャガーが初めて作ったEV(電気自動車)「I-PACE」。“シビレるジャガー”という宣伝文句通りに、その走りっぷりにはシビレてしまった。まず、音もなく速いのに驚かされた。正確には、タイヤが路面に擦れるノイズや風切り音などが含まれるから、“音がない”わけではない。でも、エンジンからの排気音が発生しないから、圧倒的に静かだ。パワートレインからの音だけでなく、振動も皆無だから、加速はこれまで体験したどのエンジン車とも違う。

レクサス「ES」「UX」、マクラーレン「600LT」、ジャガー「I-PACE」、2018年に話題を集めた輸入車の試乗レポート



 今までのエンジン車の場合だと、加速するためにはアクセルペダルを踏み込むと、エンジンが回転を上げていくのに伴って、馬力やトルクといったパワーも盛り上がっていく。当然、その感覚は前述の排気音の高まりや、アクセルペダルから伝わってくる振動のようなものなど、さまざまな刺激が複雑に組み合わされたものだ。

 しかし、この「I-PACE」をはじめとするEV(電気自動車)にはそれがない。刺激が発生するプロセスをすべてスッ飛ばして、最初から一気に加速する。古今東西の優れたエンジンを搭載していたクルマはそれぞれ固有のプロセスを持っていて、それが魅力のひとつになっていたが、「I-PACE」はそれをパスして高性能を実現してしまった。これを革新と呼ばずになんと呼べばよいのだろうか?



機械として優れているか?★★★★★5.0(★5つが満点)

「I-PACE」は前後に2個のモーターを搭載し、合計した最高出力は400馬力、最大トルクは696Nm。4輪を駆動し、0-100km/h加速は4.8秒という俊足だ。ちなみに、同じジャガーの「F-PACE」や「E-PACE」などのSUVでI-PACEに勝るものはなく、4ドアサルーンの「XE」の最もスポーティーなモデル「XE S」(380馬力3.0L、V6スーパーチャージドエンジン搭載)の5.0秒をもしのぐ速さなのだ。

 しかし、上には上がいて、テスラの「モデルS」と「モデルX」にはこれよりも1秒以上速いグレードがある。たしかに、テスラの猛烈な加速は蠱惑的なほどだ。ただ、テスラを思い出しながら「I-PACE」を運転すると、ハンドリングでは「I-PACE」に分がある。微細なハンドル操作にも忠実に反応してくる。その辺りは、さすがはジャガーだと頷かざるを得ない。

 また、試してはいないが、オプションのエアサスペンションを選ぶとオフロード走破性の目安として水深50cmのところも走り切ることができるのも大きな長所となっている。最低地上高が3段階に調整することが可能で、オフロード走行時には最大5cm上がり、乗降時には4cm下がる。つまり、オンロードでの速さだけでなく、オフロードでの悪路走破性にも優れたポテンシャルを持っているのだ。EVが街中だけのクルマではないことを「I-PACE」は示そうとしている。



商品として魅力的か?★★★★★ 5.0(★5つが満点)

 EVで最も気になる航続距離は、WLTCモードで438km(国土交通省届出値)。438kmも走れれば、クルマの前に人間の方が音を上げてくる。実際に、以前にこの連載でもBMWのEV「i3」をテストした時に、東京から東名と新東名高速を西に向かって走り続けた時には、バッテリーに電気は十分に残っているのに、ドライバーは休憩を、同乗者はトイレ休憩を求め、途中のサービスエリアに駆け込んだくらいだった。

 エアサスペンション版と金属サスペンション版をそれぞれ90分ずつ試乗したが、走行パフォーマンスについては文句の付けようのない仕上がりだった。エアサスペンション版の方が乗り心地が滑らかで、柔らかいので、断然、こちらを勧めたい。モーターによる静かで滑らか、かつ強力な加速と併せるかのように、エアサスペンションの乗り心地がとても良くマッチしている。

「I-PACE」の発表時から気になっていたのが「スマートセッティング」だ。リモートキーとスマートフォンのBluetoothを介してドライバーを認識し、ドライバーの好みに応じたインフォテインメントやシート位置などを自動的に調整するものだ。類似した「スマートエアコン」も装備していて、そちらは乗員の位置を自動的に把握し、最適な温度にエアコンを自動的に設定するものだ。どちらもAI(人工知能)アルゴリズムを用いている。

 スマートセッティングもスマートエアコンも、技術的には難しくなくなった数年ぐらい前から、「こういうものができたら便利なのに」と夢想していたものだ。それが、ようやく実現した。短い試乗時間の中では試すことはできなかったが、どんどん多機能&高機能化していく現代のクルマにとって、このようなインターフェイスの革新は欠かせない。購入したオーナーは、こうした新しい機能を使えば使うほどカーライフが便利で安全になっていく。

 慣れが必要ではあるけれども、喰わず嫌いすることなく使ってもらうように、セールスパーソンのフォローが必要になるだろう。「I-PACE」のインターフェイスは、「F-PACE」や「E-PACE」など最近のジャガーのSUVに範を取りながら、独自に進化しているところもある。特に、ソフトウェアのワイヤレスでの常時アップデイトなどは実効性がとても高いだろう。

 繰り返すが「I-PACE」の第一印象は期待通りだった。試乗時間内ですべての機能や使用感などを試せなかったのも事実で、多機能&高機能化する現代のクルマの評価の難しさを表していた。ただ、持てる機能と性能のすべてを発揮させることができた時に初めてこのEVの真価を知ることになるのだろう。当たり前のことを述べているようだが、「I-PACE」からはそれだけのポテンシャルを感じさせられたことも、また事実だった。



■関連情報
https://www.jaguar.co.jp/jaguar-range/i-pace/index.html

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
8年目の小さな「成功作」 アウディQ2へ試乗 ブランドらしい実力派 落ち着いた操縦性
AUTOCAR JAPAN
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
RSCフルタイム引退のウインターボトム、2025年は古巣に復帰しウォーターズの耐久ペアに就任
AUTOSPORT web
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
ハコスカ!? マッスルカー!?「ちがいます」 “55歳”ミツオカ渾身の1台「M55」ついに発売 「SUVではないものを」
乗りものニュース
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
スズキ、軽量アドベンチャー『Vストローム250SX』のカラーラインアップを変更。赤黄黒の3色展開に
AUTOSPORT web
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
元ハースのグロージャン、旧知の小松代表の仕事ぶりを支持「チームから最高の力を引き出した。誇りに思う」
AUTOSPORT web
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
本体35万円! ホンダの「“超”コンパクトスポーツカー」がスゴい! 全長3.4m×「600キロ切り」軽量ボディ! 画期的素材でめちゃ楽しそうな「現存1台」車とは
くるまのニュース
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
最近よく聞く「LFP」と「NMC」は全部同じ? EV用バッテリーの作り方、性能の違い
AUTOCAR JAPAN
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
リアウィンドウがない! ジャガー、新型EVの予告画像を初公開 12月2日正式発表予定
AUTOCAR JAPAN
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
アロンソのペナルティポイントはグリッド上で最多の8点。2025年序盤戦まで出場停止の回避が求められる
AUTOSPORT web
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
「俺のオプカン~仙台場所~」初開催!「オープンカントリー」を愛する男性ユーザーが集まって工場見学…川畑真人選手のトークショーで大盛りあがり
Auto Messe Web
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
「ラリーのコースなのでトンネル工事を休止します」 名古屋‐飯田の大動脈 旧道がレース仕様に!
乗りものニュース
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
紫ボディはオーロラがモチーフ、中国ユーザーが求めた特別なインフィニティ…広州モーターショー2024
レスポンス
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
『頭文字D』愛が爆発。パンダカラーで登場のグリアジン、ラリージャパンで公道最速伝説を狙う
AUTOSPORT web
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
トヨタ勝田貴元、WRCラリージャパンDAY2は不運な後退も総合3番手に0.1秒差まで肉薄「起こったことを考えれば悪くない順位」
motorsport.com 日本版
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
日産「新型ラグジュアリーSUV」世界初公開! 斬新「紫」内装&オラオラ「ゴールド」アクセントで超カッコイイ! ド迫力エアロもスゴイ「QX60C」中国に登場
くるまのニュース
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
エコの時代に逆行!? 「やっぱ気持ちいいのは大排気量のトルクだよね」……800馬力超のエンジンが吠える「アメ車」マッスルカーの“クセになる世界”とは
VAGUE
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
変化と進化──新型ロールス・ロイス ゴースト シリーズII試乗記
GQ JAPAN
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
加熱する中国高級SUV市場、キャデラック『XT6』2025年型は「エグゼクティブシート」アピール
レスポンス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1517.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

289.0898.0万円

中古車を検索
I-PACEの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

1517.1万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

289.0898.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村