ハーレーダビッドソンのニューモデルが「FXDR114」だ。ロー&ロングな車体に「ミルウォーキーエイト114」と名付けられた空冷OHV4バルブV型2気筒を搭載。車名にも付いている“114”はキュービックインチで示した排気量を表しており、換算すると1868ccとなる。超弩級スポーツクルーザーの乗り味はいかに……!? アメリカ・ウィスコンシン州ミルウォーキーで試してきた。REPORT●青木タカオ(AOKI TAKAO) PHOTO●稲森 聡(INAMORI SATOSHI)/HARLEY-DAVIDOSON JAPAN
ハーレーダビッドソン FXDR114・ビビッドブラック……2,862,000円
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ハーレーダビッドソン FXDR114・モノトーン…………2,904,000円
ハーレーのラインナップって、なにがなんだかわからない……。そんなふうに思っている人は少なくないはず。じつはハーレー歴20年近くになろうという筆者も、10代や20代前半の頃はそうだった。昔はどちらかといえばハーレーが好きではなかった。もっと正直に言ってしまおう、嫌いだった。
では、なぜゆえにハーレーに乗りはじめ、ずっと今までハマっているのだろうか。それは明らかに、他のメーカーのオートバイと違うところがあり、最初は戸惑っていた部分が強烈な個性に感じてしまい、だんだんと好きになってしまったのだ。
今回は登場したばかりの「FXDR114」を見てみよう。ロー&ロングのスタイルはいかにもアメリカンクルーザーであり、詳しくない人でも「ハーレーなのかな?」と、その匂いを嗅ぎ分けられるはず。しかしよく見ると、これまでのハーレーとは少し違うイメージを抱くかもしれない。
まず、クロームパーツやデコレーションパーツはもはやどこにも付いてない。カラーグラフィックスもシンプルで、“ラーメン大盛り、ぜんぶ乗せ!!” みたいなコッテリ感はどこにもない。若い人や女性にだって、スタイリッシュに見えるはずだ。
そして細かく見ていくと、フロントフォークは倒立式で、ハンドルはクリップオン式のセパレート式であることに気付く。倒立フォークとセパハンって、80年代ならレーサーレプリカでしか備わっていなかった装備。シートはソロ仕様で、スポーティなライディングを予感せずにはいられないし、テールエンドはバッサリと短く切り落とされ、フラットトラックレーサーのようなスッキリとしたシートカウルが備わっている。
ハーレーなのに……!? ってツッコミたくなる素直な旋回性
「ハーレーって、こんなだったっけ……!?」って、少し驚いたかもしれない。しかし、その乗り味も相変わらず強烈で個性的、そして一昔前のイメージとは異なるのだった。
まず、ミルウォーキーエイト114の心臓部は、極低回転域からトルクフルで加速力はとてつもない。次々にシフトアップしていかないと、駆動力が強すぎてギクシャクしてしまう。160Nmの最大トルクを3500rpmで発揮するが、街乗りは2000rpm前後で充分にこなす。
高いギヤを使って低回転域で走るとドコドコと心地良い鼓動が感じられ、クルージングは3000rpm以下で済ましてしまうといい。高回転型マルチエンジンなら、クラッチミートして間もない回転域だが、ハーレーの大排気量Vツインはそこがもうスイートなレンジなのだ。だから街乗りでも面白い。
ミルウォーキーエイト114と名付けられた最新Vツインは、この領域でのテイスティさにこだわっていて、前時代のエンジンはツインカムだったがワンカムにわざわざ戻し、フライホイールも慣性マスをアップ。2→4バルブ化、ツインスパーク化などと聞けば、味気なくなってしまったと誤解されがちだが、すべてはアイドリングの回転数を下げたり鼓動感を強めるなど、オールドハーレーのフィーリングを取り戻すための進化であったのだ。
そして、アメリカの広い道で乗るにはうってつけの直線番長だと思いつつ、コーナーにさしかかると、車体がスンナリと寝ていくから拍子抜けする。70-80年代まで遡ると、ハーレーもタイヤが細くて想像以上に軽快なハンドリングが味わえるのだが、ちょっと前のリヤタイヤが極太になった頃のハーレーだとクセが強く、ハンドリングはニュートラルと言えなかった。
しかしどうだ。レイク角34度と、フォークを目一杯に深く寝かせ、ホイールベースは1735mmととてつもなく長いにも関わらず、カーブの入口で苦戦しない。
じつは旋回性にも開発陣はこだわっていて、プロモーションビデオはサーキットで撮影されているし、公式スペックにあるリーンアングルは右側32.6度、左側32.8度とソフテイルファミリーでもっとも深く、ハーレーではスポーティ路線である「スポーツスター・ロードスター」より1.7~1.8度も深く寝かせられるのだ。
ステップは両足を前に投げ出すフォワードコントロールで、クルーザー然としているのに、コーナリング性能もアピールするって、いったいどういうことなのか……。2in1マフラーのサイレンサーはテールエンドに向かってリフトアップされ、バンク角を稼ぐようにトライオーバル形状をしていることにも驚く。
車重は300kgを超えるが、たしかに軽快で、コーナーでエキサイティングな走りが楽しめる。これは軽量・高剛性なアルミ鍛造ホイールやアルミスイングアーム、シート下に隠してレイアウトしたモノショック式のサスペンションらが貢献しており、走りの性能を一昔前とは次元の違うものにしているのだ。
「もう昔のままではない!」と言わんばかりに足まわりを強化し、豪快な加速力だけでなく、侮れない身のこなしでライディングそのものが楽しい最新ハーレー。喰わず嫌いな人も、ぜひ機会があれば試して欲しい。もしや、病みつきになるかもしれない。だってハーレーファンには、元アンチだった人が少なくないのだから……。
ディテール解説
主要諸元
全長×全幅×全高:2425x925x1085mm
ホイールベース:1735mm
最低地上高:140mm
シート高:720mm
車両重量:303kg
レーク・トレール:34°・120mm
燃料タンク容量:16.7L
フロントタイヤ:120/70ZR-19
リアタイヤ:240/40R-18
エンジン:空冷OHV4バルブV型2気筒 Milwaukee-Eight 114
排気量:1868cc
ボア×ストローク:102×114.3mm
最大トルク:160Nm(16.3kg-m)/3500rpm
車両本体価格(消費税込):ビビッドブラック286万2000円、モノトーン290万4000円
車体色:ビビッドブラック、ブラックデニム、インダストリアル グレーデニム、ウィキッドレッドデニム、ボンネビルソルトデニム、ローハイドデニム
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