現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > ウサギとカメ ポルシェ911とスマート・フォーツーでかけくらべ 前編

ここから本文です

ウサギとカメ ポルシェ911とスマート・フォーツーでかけくらべ 前編

掲載 更新
ウサギとカメ ポルシェ911とスマート・フォーツーでかけくらべ 前編

もくじ

ー カメはウサギを負かせることができるのか
ー ウサギはポルシェ911、カメにはスマート
ー BBCトップギアを陰で支えるプロドライバー
ー 一般道でウェールズ州を斜めに横断

アルピーヌA110初試乗 バランスは第一級 文句なしの★★★★★

カメはウサギを負かせることができるのか

本当に速いクルマと、そうでもないクルマとで同時にスタートし、同じルートで目的地への到着時間を比較したら、どの程度の差が生じるのか?

この疑問は誰もが抱くようなベーシックなものだし、クルマ好きにとっては現実的に気になるもの。わたしにも、結果の想像はつかなかった。そして今回試して導かれた答えは、少し戸惑うようなものになってしまった。

もちろん、この結果は比較する場所にも大きく依存するだろう。

サーキットで、スタートラインからフィニッシュラインまでの時間を測るなら、答えは簡単。

もし英国の高速道路網を使うとしたら、充分な比較にはならないだろう。最高速度が決められているから、法規を遵守するなら、時間差は全く生じないはず。もし守らないとしても、1対1の競争というわけではなく、無数の走行車両と対峙しなければならない。そもそも、適切な行為ではなさそうだ。

以前わたしはスーパーカー対ファミリーカーのレースを紙面上で企画したが、その差は僅かながら、決定的な答えを示すことができた。10年前、フォード・フォーカスのディーゼルモデルをドライブし、ランボルギーニ・ムルシエラゴと、フランスのカレーからドイツのベルリンまで競争をしたのだ。

自分の読みでは、例えムルシエラゴが速度制限のないアウトバーンを300km/hで走れたとしても、燃費が悪くて給油回数が増えるから、その差は相殺されるだろうと考えていた。そして実際に試してみると、ほぼ2台同時にゴール地点としていたベルリンの空港に到着する、という結果に至った。

ウサギはポルシェ911、カメにはスマート

でも今回は、どちらかと言うと純粋なドライブテストに近い。高速道路を長距離走るわけでもないから、給油による停車も不要だろう。ヨーロッパの最高の道で、A地点からB地点までの移動時間を計測するテストだ。速いクルマと遅いクルマ、ウサギとカメによる、総長300kmに及ぶ州を跨いだドライブとなる。

われわれはウェールズ州の端から端まで、南東のセバーン橋をスタート地点に、北西のメナイ橋をゴール地点に設定した。2台は同時にスタートし、到着時間の差が、質問の答えになるはずだ。

コースの次はクルマ選び。

速いクルマ選びは比較的シンプルだった。気温は低く、路面は湿り、道幅も変化が大きい。そんな条件では、わたしはポルシェ911ターボSが最速だと信じている。最高出力580psを叩き出す圧倒的なトルクと、4輪駆動システムに比較的コンパクトなボディサイズ。この競争には完璧なスペックの「ウサギ」だと思う。

一方で、遅いクルマ選びは難しかった。ダチア・サンデロやフィアット・パンダ、もっとコンパクトなクルマなども候補に上がったが、最終的にスマート・フォーツーに決めた。

初めにポルシェ911有りきだったから、ホイールベースが短めの、リアエンジン・モデルを無意識のうちに選んでしまったような気もする。一方で、時代を問わずスポーツカーの最速モデルとして君臨する911へ闘いを挑むのに、不釣り合いにも見える極めて小さなシティカーをぶつける、ということも悪くないように思えた。

スマートは、ベースグレードではなく、AT搭載の「プライム」グレードとなったが、最高出力は僅か90psで、0-100km/h加速には11.3秒を要する。まさに「カメ」に相応しいスペックではないだろうか。

BBCトップギアを陰で支えるプロドライバー

クルマは決まったが、カギを握るもうひとつの要素はドライバーだ。

わたしは既にスマートを運転しようと決めていたが、ポルシェには誰に乗ってもらうべきだろう。肝心なのは、確実なドライビングができるだけでなく、この競争をどう戦うべきか、目的をしっかりと理解してくれるドライバーだということ。

それには、マウロ・カロが適任だ。

中には、マウロを幾度となく気づかずに目にしている読者もいるはず。彼は、かつてクラークソンとハモンド、メイのトリオも司会をしていたBBCのテレビ番組「トップギア」の制作に長年関わっている人物。撮影がない時は、ミッション・インポッシブルなど、数多くのハリウッド映画のスタントドライバーとして関わり、また、われわれのようなテストドライバーもこなしている。

しかも彼は、ドリフト世界選手権のチャンピオンでもある。

だから、彼の協力が必要だった。彼が必要以上に飛ばして、望まないような結果に至ることはないという自信もある。

これで準備は整った。

ルール紹介といこう。設定したのは2項目のみ。

ひとつ目は、2台は全く同じルートを走り、基本的に信号や一時停止以外は止まらない。ふたつ目は、道路に設定された最高速度を原則的に破らない。どちらもスマートでも余裕で守ることができるルールだし、スマートにも有利に働くかもしれない。

でも、ポルシェには圧倒的なアドバンテージがある。遅いクルマを追い越すとき、加速の遅いスマートの場合は、しっかり前方を確認して、いつも以上の注意を払う必要がある。一方でポルシェは、ペダルを踏み込んだのと同時に、追い越しは完了するだろう。

一般道でウェールズ州を斜めに横断

いよいよスタート。

2台同時、といっても、実際は1台目で跳ねた水がレンズに付いてしまい、カメラマンのリュック・ルーシーが拭き取る時間差ができてしまったけれど。

ルートは可能な限りシンプルにしたから、ミスコースをする可能性は最小限になっている。高速道路はスタート直後の僅かな区間のみで、その後は一般道のA40を西に向かって走り、アバーガベニーを経由し、その後、北へと伸びる1車線道路を走ることになる。

A40でクリックホーウェルを過ぎたら、A479でタルガースに入る。A470とB4518でスランイドロイスを経由してスランブリンマイル。さらにA470を北上し、ベトウス・ア・コーエドからA5を使用して、スノードニア国立公園の北のはずれ、アングルシー島に掛かるメナイ橋がゴールとなる。ウェールズ州を斜めに横断するかたちだ。

マウロはわたしより1分、いや1時間、早く到着するだろうか。

スタートしてすぐ、彼がわたしに追いついて、あっという間に視界から消えてしまった勢いからすると、ゴールの差が1分ということはなさそうだ。

ポルシェでのマウロの走りに関して、あまり詳しく書く必要はないだろう。理由は、交通量の少ない郊外の道を、ポルシェのパワーとトルクを解き放って走る楽しさは、想像に難くないということと、考えれば考えるほど、彼がうらやましく思えてしまうから。

ところが、スマートでのドライブは、全く異なる体験だったのだ。

後半へ続く。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

GMのF1計画に新たな動き。アンドレッティの設備引き継ぎ、2026年からキャデラックブランドで参戦か?
GMのF1計画に新たな動き。アンドレッティの設備引き継ぎ、2026年からキャデラックブランドで参戦か?
motorsport.com 日本版
約148万円! スバル新型「軽ワゴン」発表! “水平対向”じゃないエンジン&スライドドア搭載! ”大開口“実現の「シフォン」が販売店でも話題に
約148万円! スバル新型「軽ワゴン」発表! “水平対向”じゃないエンジン&スライドドア搭載! ”大開口“実現の「シフォン」が販売店でも話題に
くるまのニュース
アウディ Q6 e-tronの中国専用「ロング版」はただ長いだけじゃない…広州モーターショー2024
アウディ Q6 e-tronの中国専用「ロング版」はただ長いだけじゃない…広州モーターショー2024
レスポンス
タナク総合首位。勝田貴元はステージ優勝2回で総合3番手まで0.1秒差|WRCラリージャパンDAY2午後
タナク総合首位。勝田貴元はステージ優勝2回で総合3番手まで0.1秒差|WRCラリージャパンDAY2午後
motorsport.com 日本版
<新連載>[失敗しない初めてのスピーカー交換]ツイーターだけを“追加 or 交換”するのは、アリ!?
<新連載>[失敗しない初めてのスピーカー交換]ツイーターだけを“追加 or 交換”するのは、アリ!?
レスポンス
レッドブル、リヤウイングのスペック選定でミス?「空気抵抗が大きすぎる上に、この1スペックしかない」
レッドブル、リヤウイングのスペック選定でミス?「空気抵抗が大きすぎる上に、この1スペックしかない」
motorsport.com 日本版
約270万円! ホンダ新型「“4.8m級”セダン」登場に反響多数! 斬新「光るボンネット」採用の「“迫力”顔マシン」に「近未来的」の声! 天井はほぼガラスな“超開放感”内装もスゴイ「L」中国で発売し話題に
約270万円! ホンダ新型「“4.8m級”セダン」登場に反響多数! 斬新「光るボンネット」採用の「“迫力”顔マシン」に「近未来的」の声! 天井はほぼガラスな“超開放感”内装もスゴイ「L」中国で発売し話題に
くるまのニュース
ドーナツターン追加や坂の角度が緩やかに。ラリージャパン2024豊田スタジアム特設コースの変更点をチェック
ドーナツターン追加や坂の角度が緩やかに。ラリージャパン2024豊田スタジアム特設コースの変更点をチェック
AUTOSPORT web
全長5m超えのレクサス高級「“3列シート”SUV」に反響多数! 堂々「カクカク」デザインに「憧れる」「カッコイイ」と熱視線集まる! 広々内装も魅力的な新型「TX」に「日本でも欲しい」の声も
全長5m超えのレクサス高級「“3列シート”SUV」に反響多数! 堂々「カクカク」デザインに「憧れる」「カッコイイ」と熱視線集まる! 広々内装も魅力的な新型「TX」に「日本でも欲しい」の声も
くるまのニュース
ポップで個性的なモンスター達が作り出す世界観! SHOEIが「Z-8」にNEWグラフィック「YAGYO」を追加
ポップで個性的なモンスター達が作り出す世界観! SHOEIが「Z-8」にNEWグラフィック「YAGYO」を追加
バイクのニュース
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
レクサスのレザーもリサイクルでグッズに、リョーサンがトヨタと共同開発
レスポンス
グリーンがアクセントの爽やかコスが素敵! SUPER GTのGreen Braveは2人の「埼玉GreenBraveサポーターズ」が応援します
グリーンがアクセントの爽やかコスが素敵! SUPER GTのGreen Braveは2人の「埼玉GreenBraveサポーターズ」が応援します
Auto Messe Web
【試乗】新型CR-Vの日本導入は水素燃料電池車のみ! 特殊なクルマかと思ったら実用性十分の「買いやすい」モデルだった
【試乗】新型CR-Vの日本導入は水素燃料電池車のみ! 特殊なクルマかと思ったら実用性十分の「買いやすい」モデルだった
WEB CARTOP
ベントレー マリナーの技が冴える「エクスプレッション オブ テクスチャー」。感性を刺激する「コンチネンタルGTスピード コンバーチブル」ベースの特注モデル
ベントレー マリナーの技が冴える「エクスプレッション オブ テクスチャー」。感性を刺激する「コンチネンタルGTスピード コンバーチブル」ベースの特注モデル
Webモーターマガジン
角田裕毅、F1ラスベガスGP初日は10番手「FP1は苦労したけど、改善できました。ポジティブな兆候です!」
角田裕毅、F1ラスベガスGP初日は10番手「FP1は苦労したけど、改善できました。ポジティブな兆候です!」
motorsport.com 日本版
クルマに付けてる「青地に車いす」マークに“法的効力”一切無し!? 「黄色いちょうちょ」と役割違う? 意外と知らない実態とは
クルマに付けてる「青地に車いす」マークに“法的効力”一切無し!? 「黄色いちょうちょ」と役割違う? 意外と知らない実態とは
くるまのニュース
日高前副会長の後任に、ヤマハ渡部克明会長兼社長が就任【日本自動車工業会】
日高前副会長の後任に、ヤマハ渡部克明会長兼社長が就任【日本自動車工業会】
バイクのニュース
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
50台限定の『ディフェンダー110』発売、アリゾナの自然を表現した「赤」採用 価格は1300万円
レスポンス

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677.3698.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

593.0980.0万円

中古車を検索
ヨーロッパの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

677.3698.3万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

593.0980.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村