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SF23初レースを開発ドライバーの石浦宏明と塚越広大はどう見た? “違い”が出るのは次戦鈴鹿か

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SF23初レースを開発ドライバーの石浦宏明と塚越広大はどう見た? “違い”が出るのは次戦鈴鹿か

 新シャシーSF23導入初のレースとなった2023年全日本スーパーフォーミュラ選手権の開幕ラウンドは、4月8日に第1戦、9日に第2戦が静岡県の富士スピードウェイで開催された。今季のスーパーフォーミュラは『SF NEXT 50』のコンセプトのもと、アプリ『SF go』の導入や中継の改良などさまざまな試みが行われているが、カーボンニュートラル対応やエンターテインメント性向上を目指し、2022年にSF23シャシー開発を行ってきた開発ドライバーの石浦宏明と塚越広大は、開幕ラウンドをどう見たのだろうか。

 SF23は、2022年まで使用されていたダラーラSF19からモノコックを継続しつつ、カウルなどに天然由来の素材を使用。CO2排出量削減を目指した。また、SF19では先行車に近づくとダウンフォースが抜け接近できず、膠着した状態が続いてしまっていたが、SF23ではエンターテインメント性向上に向けドライバーが力を発揮し接近戦がしやすくなるよう、空力を改良してきた。

【動画】2023全日本スーパーフォーミュラ選手権第1戦&第2戦富士 ハイライト

 このバトルのしやすさについて、実際に戦ったドライバーたちの声はさまざまではあったが、客観的に見て、どちらのレースも非常に見ごたえがあるバトルが多くなったような印象もあった。では開発ドライバーの石浦と塚越は、この第1戦/第2戦をどう見届けたのだろうか。

■バトルができるポイントが昨年より増加
「バトルが多かったので、効果はあったと思っています。第2戦で僕が注目していたのは、グリーンファイト100Rコーナーから、アドバンコーナーまでの間にバトルがあったことです」というのは石浦だ。

「100Rで並んで、クロスしてアドバンコーナーで抜くようなシーンがありましたよね。富士ではこれまで、コカ・コーラコーナーからダンロップコーナーまでは離れて、セクター3で詰めてTGRコーナーで勝負……くらいしかできなかったんですよね。バトルポイントが増えた印象があるので、そうであればやってきた効果があったかと思います」

 また塚越も「昨年、石浦さんと一緒に走って比較をやってきましたが、うしろについた時の空気の乱れについては、ダウンフォースが抜けることはあっても、追う側のダメージが少なかったので、以前のSF19よりは、自分に元気があるときはもっと近づけると思っていました」と改めて狙いを語った。

「それが今回のレースでも出たと思いますし、OTS(オーバーテイクシステム)で抜ける距離感も、昨年よりチャンスは広がったと思います。2022年よりも展開に動きが多かったのではないでしょうか。JRP、そして“SF NEXT 50”が狙っていたコンセプトに貢献はできたのではないかと思います」

■SF23の真価発揮は第3戦鈴鹿か
 ただ、今回オーバーテイクが多く感じたことについては、抜きやすい富士スピードウェイが舞台だったということを忘れてはならないだろう。ふたりもこの点について指摘する。「夏場、それと富士とはまったくキャラクターが異なる鈴鹿のようなコースでどうなるかですね」と塚越。

「S字などで、みんなが今までより近い距離でレースができれば、展開は変わってくると思います。そうなれば、開発に携わってきた自分としても嬉しいですね」

 また石浦は「鈴鹿の方が今までより差が出るかもしれません」というから楽しみなところ。

「富士はダウンフォースを削るコースですが、鈴鹿は今までマックスのダウンフォースで走っていました。リヤウイングの角度も32度とかでしたが、今季からの23度で走ることで、S字での距離感が変わってくると思います」と石浦。

「今までは日立Astemoシケインのブレーキングだけが勝負どころでしたが、130Rに入る前からひと勝負あると思います。それとヘアピン、スプーンなどでもバトルがあるのではないでしょうか」

 SF23の“真価”が発揮されるのは、鈴鹿サーキットでの第3戦になるのかもしれない。

■カーボンニュートラル対応タイヤも好パフォーマンス
 また今シーズンから変更されたものとしては、タイヤも挙げられる。2022年までと同等のパフォーマンスを維持しつつ、再生可能原料比率を約33%まで高めたカーボンニュートラル対応タイヤをヨコハマが投入。ふたりはこの開発も担ってきた。

「新しい素材を入れても、今までのタイヤと同等のパフォーマンスが出せるようにと開発してきましたが、第2戦を見ても急激なグリップダウンがあったりするようなこともなかったので、その点は良かったです」と塚越が言うように、アクシデント等がない限りタイヤのトラブルはなかった。

 石浦も「極端なドロップではなく、新しい状態と走り込んだ状態では、それなりにレースが面白くなるようなタイム差が出ていました」と評した。「第2戦で言えば平川亮選手が引っ張って最後にタイヤ交換しましたよね。第1戦では、後半にピットインしたドライバーが良いタイムで走っていたので、ああいうのを見ると、給油していないレースでも戦略の幅ができたと思います」

「チームも悩みどころですし、ファンの皆さんにとっても観ていて良いと思いますし、オーバーテイクもしやすい。開発ドライバーが良かったということですね(笑)」

■アプリはチームにとっても必要なものに?
 そして石浦は、今季から導入されたアプリ『SF go』についても言及した。「レースではスリップストリーム、OTSも効いていましたよね」という石浦は、今季docomo business ROOKIEの監督も務めているが、レース戦略でも『SF go』が欠かせないものになっているという。

「OTSの点滅がなくなりましたが、僕はOTSを使っているか使っていないかは、ファンの皆さんがアプリで楽しんでくれればと思っていいたんです。でも僕たちもアプリを使って見なきゃいけなくなっています」と石浦。実際、石浦が戦略を見なければいけない大嶋和也が第2戦で松下信治(B-Max Racing Team)や佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)と戦っていた際には、OTSのタイミングや残量が非常に重要なものになっていた。

「バトルをしている相手がOTSを使えるタイミングなのか、残量があるのかなどを、SF goを使ってドライバーに伝えています。アプリ超重要でした(笑)」

 SF goについては、開幕ラウンドでは映像の信号が来なかったりなど、まだまだ改良点は多いと感じられた。またアプリを使ったレース観戦に馴染みがない人たちにとっては、ハードルもあるだろう(これは値段も含めて)。

「もちろん新しいことに対しては、そういうものだと思います。でもそれは、今までのレースの見方がベースにあるからだと思うんです。でもスーパーフォーミュラでは違ったものになっていって、何年か経ったら当たり前……のような時代になると思います。何卒皆さま、この楽しみ方を覚えていただければ(笑)」

 アプリに加え、今回は中継映像内にOTS残量などが出て、非常に興味深いものとなっていたのは高く評価したいところ。「もっと進んだら、中継でF1のようにヘイローのところに数値を出したりしたら面白いかもしれませんね」と石浦もさらなる技術進化に期待を寄せていた。

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