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STANLEY山本尚貴、タイヤ無交換の奇策で3位も「賭けとしては失敗」。引退伊沢拓也の声かけに涙止まらず

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STANLEY山本尚貴、タイヤ無交換の奇策で3位も「賭けとしては失敗」。引退伊沢拓也の声かけに涙止まらず

 モビリティリゾートもてぎで開催された2025年のスーパーGT最終戦、第8戦のGT500クラスは1号車au TOM'S GR Supraが優勝を果たし今季、そして3年連続のチャンピオンを決めた。ホンダ陣営で唯一、タイトルの可能性を残して7番グリッドから決勝に臨んだ100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTは、タイヤ4輪無交換作戦で1号車との逆転を狙ったが叶わず、3位となった。レース後の山本尚貴に聞いた。

「(タイヤ無交換作戦はレース前には)決めてました。もちろん、その時の自分たちのポジションとか周りの状況次第、たとえばトップに立ったら無交換なんてしなくてもいいし、その時の展開と状況次第だというのはあるので臨気応変に、とは思っていました。ある程、もうリスクを承知の上で賭けに出ましたけど、賭けとしては失敗だったかなと思います」

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 無交換作戦を考慮した上で、スタートの前半スティントを担当した山本はどのようにタイヤや燃料をマネジメントしていたのか。

「追い抜きがそんなに簡単ではないサーキットなので、もうスタートが勝負だと思っていましたし、周りのタイヤのコンパウンドに比べて自分たちはちょっと固めのタイヤだというのは分かっていたので、とにかく今までの中ではもうタイヤの温めはかなり頑張りましたし、それで2台オープニングラップで抜けたことと、あとは23号車(MOTUL AUTECH Z)の前にも出られましたので、その自分のスティントの中でやれたことはやれたかなと。チームの戦略的にもうとにかく1号車の前に出ることだけを考えていたので、そのための作戦のひとつとしてタイヤ無交換は計画していたので、無交換を視野に入れてタイヤのマネジメント、燃料セーブをしていました」

 タイヤ無交換を前提としていながら、山本は3つ順位を上げて5番手に立ったが、その時点で状況が厳しいことは感じていた。

「自分のスティントの時でも後半(無交換戦略で1号車の)前に出てもかなり厳しいだろうなとは思っていました。それでも、とにかく1号車の前にということでしたし、後半の牧野(任祐)選手はかなり辛かったと思います。結果論だけで言うと1号車が後半に履いたタイヤを含めてペースが上がらなかったので、タイヤを交換をしてればトップ争いの輪の中には間違いなく入っていたと思いますし、自力で1号車の前に出られてた可能性もあったと思うのですけど、それは結果論なので」

「レースは水物なので、後悔がないかと言ったら嘘になっちゃいますけど、でも本当に1号車しか見ていなかったので、トライしたことには大きな意味もあったと思います。蓋を開けたらちょっと悔しいなというのはありますけど、チームで決めたことですし、最後、結果的には3位になれたので、チャンピオンは獲れなかったけど、やりきった最終戦1年間だったかなと思います」

 レース後のグランドフィナーレでは、今季でスーパーGT500クラスからの引退を表明している伊沢拓也(64号車Modulo CIVIC TYPE R-GT)が壇上で「今後のホンダを、大好きなドライバーでもある山本尚貴選手に託します」と述べたところで、フィナーレイベントに並んでいた山本は体を震わせながら、目頭を押さえ、顔を上げられなかった。

「あの場で自分の名前を出してくれてすごく嬉しかったですし、改めて伊沢さんというドライバーと一緒にお仕事ができて幸せだったなと思います。すいません……(目からは涙が溢れる)……あの……伊沢さんの想いが重すぎるので、応えられるかわからないですけど。伊沢さん、これまでたくさん我慢してきてくれて、我慢してきたおかげで、僕はたくさんタイトル取らせてもらったし、たくさんいい思いさせてもらった。あんなに自分だけじゃなくて周りの人を立ててくれるドライバーは、伊沢さん以外に知らない。伊沢さんにちょっとでも近づいて、『山本に任せてよかったって』思ってもらえたら嬉しいです」

「なんで本人よりも、まだ泣き続けている(笑)……本人じゃない選手が泣いているのか……ちょっと恥ずかしいんですけど(苦笑)。そういう選手だからやっぱり長く乗れたと思うし、たくさんの人から信頼を得ていたドライバーだったと改めて思いました。(自分を)デビューから育ててくれた人ですし、今後はいちファンとして、ファンなのか関係者なのかわからないですけど(苦笑)、また近くで見てくれるはずなので、伊沢さんの期待に応えられるような走りをこれからもしていきたいなと思います」


⚫︎タイヤ無交換作戦で約40周を耐え抜いた牧野任祐、レース後には複雑な心境を吐露

「悔しいというか、無交換作戦はチャレンジではあるとは思うし、BS(ブリヂストン)からも大丈夫という了解があったのでチャレンジをしましたけど、チームみんなで決めたことだし、無交換で行くのかなというのは察していましたけど、なんか自分的には結局、このレースを勝ちに行こうって考えた時に、無交換で本当に勝てるビジョンがあったのか。もちろん(一時的に)前には出れるだろうけど正直、僕もこの無交換というシチュエーションをやったことがなかったので、想像はついてはいなかったですけど、普通に(4本)交換して追い上げたらトップの集団まで行くかもしれなかったですし……全部タラレバなので何とも言えないです。でもそこに至るまで、シーズンを戦っていく上でそういうことをやらざるを得ない状況になってしまってたということが原因ではあると思います」

 ピットイン後には一時トップに立った100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTの牧野。しかし、すぐに4輪交換をした上位勢にオーバーテイクを許してしまう。それでも牧野は厳しい状況の中、トップから約1秒差の1分43秒台のラップを重ねて、最後まで4番手のポジションを走り切り、12号車TRS IMPUL with SDG Zの失格を経て3位で最終戦を終えることになった。それでも、レース直後の取材時、牧野に笑顔はなかった。

「個人的には最後に頑張って追い上げて『それでも表彰台乗れませんでした』『勝てませんでした』ならまだすっきりできるのかもしれないですけど、正直、今回は何もできていないので。クルマのポテンシャル的には結構あったかなと思うので、ちょっと(4本交換で)チャレンジしたかったなと思います。すみません、なんか言葉がうまく出ません」

[オートスポーツweb 2025年11月02日]

文:AUTOSPORT web
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  • low********
    NSX CONCEPT-GT以来、チャンピオンになれずに役目を終えたCIVIC TYPE R-GT
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