V8仕様はマニア間で伝説的な存在へ
ボディシェルの提供が止まってもデル・ラインズ氏は諦めず、さらに26台の既存車両をコンバージョン。2シーター・クーペのトライアンフTR7が発売されると、ドロマイト・スプライト用のV8エンジンへ換装し、トライアンフ側を苛立たせた。
【画像】マニア間の伝説 V8のスタッグ・サルーン/エステート 文中に登場するトライアンフたち 全116枚
アトランティック・ガレージは、1985年に商用バンのレンタル事業へシフトし、その8年後に廃業。創業者のラインズも、2023年9月にこの世を去っている。
少数が作られたスタッグ・エステートとサルーンは、マニア間で伝説的な存在へ変化。現在では、トライアンフ2000や2.5 PIの頂点を飾る特別な存在として、別格扱いを受けるようになった。
タータン・レッドに塗られたデモ車両は、ラインズの手元に長くはいなかった。1年後には、スコットランドへ住む人物へ売却され、トランスミッションはマニュアルからオートマティックへ置き換えられた。
1979年にヘッドガスケットが吹き飛び、そのままガレージへ。2000年にオーナーが亡くなるまで放置され、スペイン在住のトライアンフ・マニアが購入。ラインズへ連絡を取りレストアを依頼するものの、債権者が登場し、思うようには進まなかったらしい。
2009年に意志を継いだのが、現在のオーナーでもあるアラン・チャタートン氏。完全なレストアを決意するが、過去の差し押さえでエンジンとAT、ホイール、排気系統を失った状態だった。
彼は5年をかけて部品を収集し、当時の姿が復元された。オリジナルのナンバープレートも、再び与えることが叶った。
状態が大きく異なるエステートとサルーン
対してラインズの友人、マイク・フーパー氏のために作られたミモザ・イエローのスタッグ・サルーンは、現在までに32万km以上も距離を重ねている。JNY 590Nのナンバーのまま、大切に維持されてきた。
フーパーは、11年間所有。晩年には、買い物の移動手段になっていたらしい。その後は、現在のオーナーであるアンディ・ロバーツ氏が購入。1991年に大きなレストアを受けているが、それ以外は普段使いのクルマとして走り込まれている。
トライアンフのオーナーズクラブが開催するチャリティー・イベント、クラブ・トライアンフ・ラウンドブリテン・リライアビリティランにも、8回出場。少しくたびれたボディが、走行距離の長さを物語る。
結果として、エステートとサルーンでは状態が異なり、運転体験もだいぶ違う。スタッグ用を150mmほど延長した、同じツイン・マフラーが組まれているが、アイドリング時の排気音からはっきり違う。
どちらもV8エンジンらしいドロドロとした唸りだが、サルーンの方が重厚。エステートは比較すると静かで、ハードな金属的な響きが放たれる。発進させると、さらに違いは顕著に。ロバーツは、経年劣化でマフラーのバッフルが失われたのではないかと話す。
トランスミッションは、リビルドされたばかりのエステートではタイト。サルーンのユニットは、少し緩い感じがする。
当時唯一といえたミドルクラスの高性能ワゴン
3.0L V8エンジンを積むが、2台ともオリジナルの2.5 PIより大幅に速いわけではない。最高出力の差は15psほどで、0-96km/h加速を1.0秒縮めたくらい。それでも、直列6気筒エンジンより滑らかに回り、サウンドも良い。高回転域でのパワー感も勝る。
ラインズが手掛けたサスペンションのおかげで、操縦性は素晴らしい。もとの2.5 PIも優れていたが、ステアリングの精度も向上し、コーナリング時の安心感が高い。控え目なパワーアシストを介し、このクラスとしては最高水準のフィードバックがある。
エステートの方が、コーナーでのボディロールは大きめ。現代的なモデルと変わらないペースで、カーブを巡っていける。車重が軽いサルーンは粘り強く路面を掴み、ひときわスポーティだ。
たくましいV8エンジンと確かなグリップ力で、高速域の印象も2.5 PIを凌駕する。ラインズは、正式な量産モデルになれば、1万台は売れるのではないかと考えていた。実際に体験してみると、それは過大評価ではなかったと理解できる。
1977年にメルセデス・ベンツ280 TEが登場するまで、ミドルクラスの高性能ワゴンは存在しなかった。結果として先手を切った、そのS123型は、ブランドを代表するようなモデルへ成長した。
有能なスポーツサルーン 初代5シリーズに匹敵
とはいえ、筆者がより強く感銘を受けたのは、スタッグ・サルーン。ラインズは、エステートの方が気に入っていたようだが、現在のトライアンフ・マニアで一層の伝説的な扱いを受けているのも、サルーンの方だ。
軽量なシャシーに静かなキャビン、有能なV8エンジンが融合し、唸るほどの訴求力がある。当時のブリティッシュ・レイランドは、ローバーP6というV8エンジンのサルーンを擁し、ライバルとしてジャガーも存在し、量産化されなかった理由もわかるが。
1970年代として、有能なスポーツサルーンに仕上がっていることは間違いない。同時期のジャガーより軽く機敏で、初代BMW 5シリーズに匹敵したといっていい。この2台が2024年まで生き抜いたことが、とても喜ばしい。
エステートは、さらに2台が残っていることが判明している。1台はオランダ(ネザーランド)で、もう1台はグレートブリテン島にあるという。意外と気づかれていないアトランティック・ガレージ仕様も、ひっそり生存するのかもしれない。
シャシー番号にAGの頭文字が振られていないか、トライアンフ2000や2.5 PIのオーナーは、1度確認されてみてはいかがだろう。実はマニア垂涎のコレクターズアイテムだった、という可能性もゼロではない。
協力:マイク・メンヘニット氏、トライアンフ2000/2500/2.5レジスター、ハザリーナー・ホテル&スパ
トライアンフ・スタッグ・サルーン/エステート(1970~1976年/英国仕様)のスペック
英国価格:3000ポンド(新車時)/5万ポンド(約950万円/現在)以下
生産数:25台+26台(コンバージョン)
全長:4445mm
全幅:1651mm
全高:1422mm
最高速度:194km/h
0-96km/h加速:8.9秒
燃費:6.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1250kg
パワートレイン:V型8気筒2997cc 自然吸気SOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:147ps/5500rpm
最大トルク:23.4kg-m/3500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)
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