シリーズ生誕の地でもある古参トラック、ノースウィルクスボロ・スピードウェイで開催された2024年NASCARカップシリーズ『All-Star Open&Race(オールスター・オープン&レース)』の週末は、ポールシッターとして200周中199周の記録的リードを刻んだジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が、好調デニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)やインディカーとの“ダブル”初週を迎えたカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)らを撃破し、自身2回目、チーム・ペンスキーにとって5度目のオールスター制覇を成し遂げた。
一方、日曜本戦スタート直後の“スリーワイド”勝負で遺恨決着となったリッキー・ステンハウスJr.(JTGドアティ・レーシング/シボレー・カマロ)とカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)は、レース後のパドックで掴み合い殴り合いの“場外乱闘”を繰り広げる事態となった。
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オールドコースの荒れた路面から一転、再舗装され近代的なサーフェースへと生まれ変わったノースカロライナ州の0.625マイル・ショートトラックでは、金曜夜半から降り続く雨と雷により中断やディレイ、セッション中止が相次ぎ、日曜本戦の波乱を示唆するような状況に。
そんななか決勝のNASCARオールスター・レースに向け予選ポールポジションを獲得したロガーノとともにタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が速さを披露し、直前に開催された100周の『NASCARオールスター・オープン』では陣営内のダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)を従えて悠々のライト・トゥ・フラッグを達成。ファン投票で選出されたノア・グラグソン(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)らとともに本戦進出を決めた。
そんな日曜最終決戦のオープニングラップ。中段のポジショニング争いでボトムにいたマイケル・マクドウェル(フロントロウ・モータースポーツ/フォード・マスタング)を含め、狭いショートオーバルのアウトサイドにいたブッシュの間隙を突きミドルからの突破を狙ったステンハウスJr.は、オーバーテイクの際に「接触していない」としつつ、ブッシュをウォールに追いやることに。
■ステンハウスJr.とブッシュが“場外乱闘”
これに怒りを覚えたか。ブッシュの8号車は続くラップで47号車のリヤをプッシュし、制御不能に陥ったステンハウスJr.はそのままクラッシュ。ほぼ直角に壁の餌食となったJTGドアティのカマロZL1は、右フロントを破損した状態で8号車RCRのピット位置に停車。そのままボックスをよじ登ったステンハウスJr.はブッシュのクルーチーフであるランドル・バーネットに不快感を表明し、ドライバーにメッセージを伝えるよう要求した。
「あぁ、まずカイルも同じようなことをするだろうと思ったから、そこ(ブッシュのボックス)にクルマを停めた。そこでランドルに『後で会おうとカイルに伝えてもいい』とだけ言ったんだ」とステンハウスJr.
「我々は非常に良いスタートを切れたし、彼はドアを全開にしておいた。お互いにほとんどタッチしていないのに、ヤツはこちらのレースを終わらせた。ここにはインフィールドから場外へ出るトンネルはない。ヤツから聞きたいことはないし、話はオレが仕切る。(周りは)ただ見ていればいい」
フィニッシュ後、周囲をメディアが取り囲むなかブッシュを待ち構えたステンハウスJr.は「戻ってもう一度リプレイを見ろ。オレは一切接触していない。お前がフェンスにぶつかり、その後にオレにぶつけたんだ」と捲し立てると、ブッシュは「オレたちはお互いに皆ヒットしながら勝負している。もしそれが起こったのなら、それでいい」と応じた。直後、ステンハウスJr.はブッシュに殴り掛かり、そのまま揉み合って倒れNASCARの警備員が双方を制止する状況となる。
「なぜ彼が怒って、スリーワイド後に突き飛ばしたのか。彼がいつもこちらのことについて悪口を言うときには、間違いなくフラストレーションが溜まっている。以前ほど良い走りができなくなって彼がイライラしていることは知っているし、こちらもそれを理解している」と騒動後に語ったステンハウスJr.
「金曜プラクティスでは我々のクルマは本当に強かった。この夜に先頭を走るのを楽しみにしていたんだ。ここで立ち往生してもフラストレーションは解消されない。もしトンネルがあったなら、オレはおそらくその終わりを家で見ていただろう」
そのコーションの最中、周囲のドライバーが今回設定された2種類のコンパウンドを変更し、より耐久性の高いプライムタイヤを装着するなか、首位ロガーノ以下、タイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)やクリス・ブッシャー、ブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)などの上位勢はソフトなオプションタイヤでステイする。
■インディカーとの“ダブル”挑戦のラーソンが4位に
このオプションでのクルマのパフォーマンスを見て、ロガーノは100周の中間ブレイクでもプライムに交換しないことを選択。これが功を奏し、ハムリンを0.636秒差で破り最高賞金100万ドル(約1億5600万円)を獲得した。
「これほど速いクルマを手に入れることができたから、とても楽しいね。勝利からしばらく経っていたし、これがポイントのためだったら良かったけれど、それでも100万ドルは大金だからね」と今季はまだシリーズ戦での勝利がないロガーノ。
一方、次週のシャーロットで開催される第14戦『コカ・コーラ600』を前に、インディカーに挑戦して『インディアナポリス500』の予選5番手を獲得したラーソンは、現地午後5時44分にヘリコプターでIMSを出発。ヘンドリックのプライベートジェットに乗り換えてウィルクス郡空港に到着した後、さらにヘリで午後7時15分にノースウィルクスボロに降り立ちファンからの喝采を浴びた。
予選では“代役”ケビン・ハーヴィックがNASCARオールスター・レース進出を決め、ドライバー交代により最後尾発進となった5号車は、オプションタイヤも活用して中間ブレイク後にはトップ10圏内に浮上する。さらに151周目に予定されていたコーション後は、終始優勝争いに絡んだハムリンを追い詰めての2位争いを展開するなど、終盤は失速したものの4位に喰い込む活躍を演じた。
「ファスト6に入賞し、ここに飛んで来てオールスターレースに出場できたのは、まさに思い出に残る日だ」と語ったラーソン。
「去年ここでレースをしたのは覚えているが(再舗装により)今日はまったく違うトラックで、まるで行ったことのないオーバルでレースをしたような気分だった」
「プラクティスなしで4位フィニッシュできてうれしいし、すべてをスムーズにまとめ、今日はまともなレベルで競争できるクルマを仕上げてくれたケビン・ハーヴィックとヘンドリック・モータースポーツの全員に感謝している」
この週末にシリーズ戦として併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第10戦『ライト・ブランド250』は、250周中81周を完了した時点で降雨延期を挟みながらも、コーリー・ハイム(トリコン・ガレージ/トヨタ・タンドラTRDプロ)が今季3勝目を飾ることに。
そしてアリック・アルミローラを擁してひさびさの復帰参戦を果たした服部茂章率いるハットリ・レーシング・エンタープライズ(HRE)の16号車は、残念ながらセッションキャンセルが響き、決勝グリッドを獲得できずに週末を終えている。
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