2018年のインディカー・シリーズは新しい空力パッケージを導入したが、開幕セント・ピーターズバーグは昨年までより1週間早い3月の第1週に開催。出場チームがマシンに対する理解度、習熟度を高めるためのインディカー主催による合同テストは開幕後にもスケジュールされ、その第一弾がアラバマ州のバーバー・モータースポーツパークで、3月20日に24台が参加して行われた。
以前、このコースは開幕前のオープンテストで使われていたが、その頃も天候に恵まれないことが多かった。今回は3月も下旬ということで、少しは温暖なコンディションでテスト走行が重ねられるかと期待されていたが、不運にも低温、曇天、さらには雨に見舞われ、走行時間を思うように取れないままテストは終了となった。走行前日のアメリカ南部は大型ストームの通過で雹が降る警報が出されるほどで少し走れただけでもマシだったと言えなくもない。
名門ペンスキーのドライバーたちが熱戦を繰り広げる“ペンスキー・ゲームズ”が今年もスタート
バーバーでのレースは4月下旬の開催。その頃にはもう暑い日々も少なくない南部エリアのため、今回のテストでの天候、走行開始時の摂氏13度というのは、参加チームにとっても非常にありがたくないものだった。レースウイークエンドとのコンディション差があまりにも大きいからだ。
3時間が予定されたプラクティス1は、前半はどうにかドライコンディションだったが、半ば過ぎからはごく弱い雨だが降り出していた。そして、ランチブレイクの間にも弱いままの雨が降り続けた結果、路面はウエットに。気温も低く、走っても得られるデータに有効性は低く、ただ単にアクシデントのリスクを増やすだけとの考えから多くのドライバーが走行をせず、インディカーで走りたくて仕方のないエリオ・カストロネべス(チーム・ペンスキー)がウエットタイヤで8周走っただけだった。雨が上がる可能性がなく、逆に強く降るとの予報もあり、走行終了予定時刻より1時間半早い3時半過ぎにテスト終了のチェッカーフラッグが提示された。
短時間のテストをもっとも有効に使ったのは、チーム・ペンスキーだった。レギュラーからは引退したが、今年のシリーズ第5戦グランプリ・オブ・インディカーと第6戦インディアナポリス500マイルレースに出場予定のカストベスはすでにそれらのレース用にペンゾイルカラーにペイントされた3号車に乗り、プラクティス1だけで33周、トータル41周を走り込んだ。
「テストのチャンスを与えてくれたロジャー・ペンスキーに感謝しているよ。今年のマシンは新しいエアロパッケージになっているのだから、それを学ぶチャンスは少しでも多い方がいい。実際に乗って感じたのは、昨年までのマシンとは大きく違っているということ。コーナー進入でのハンドリングがシビアだし、いくつかのコーナーではリヤがかなり不安定だった」
「走り出した直後の印象は、”これは結構大変だぞ”というものだったが、乗っていくうちにドライビングやセッティングを変えて、タイムを縮めていくことができた。新しいマシンに対応したファイアストンタイヤについてなど、まだまだ学ぶべきことは多い。それでも、昨年までのマシンより速いし、乗っていて楽しかったよ」とカストロネベスは語った。
チーム・ペンスキーは開幕前に一度バーバーでテストを行ったうえに、マニュファクチャラーテストでも走っており、かなり準備の整った状態。そんな彼らが4台を走らせ、昨年度チャンピオンで昨年のバーバー・ウイナーでもあるジョセフ・ニューガーデンがトップタイムの1分07秒9793をマーク。2番手はウィル・パワーの1分08秒15363で、3番手は1分08秒3155のカストロネベスだった。シモン・パジェノーは9番手につける1分08秒7043。トータル103周も走ったチャンピオンチームはライバルに対してのアドバンテージを今回広げたと見ていいだろう。
バーバーでのオープンテストは、出場全チームが常設ロードコースに初めて集まって行われた。ストリートではすでに1レースを終えているインディカーだが、スムーズでスピード域も高いロードコースではマシンのパフォーマンスも大きく異なる。この状況でどこが飛び出すのかが注目されていたが、ストリートでの開幕戦セント・ピーターズバーグで今ひとつだったチーム・ペンスキーがライバルたちをやや突き放した強さを見せた。彼らは雨が降ってテストが短縮されると読み、そのコンディションでテストできる項目のチェックを行った。
そのペンスキー勢の後ろ、4、5番手のポジションにはデイル・コイン・レーシングのコンビがつけた。開幕戦でラッキーウインを飾ったセバスチャン・ブルデーが1分08秒3820で4番手。ただし、トップとの間には0.4027秒の差があった。優れたチームメイトに恵まれた環境をフルに活かし、カナダ出身ルーキーのザッカリー・クラマン・デ・メロが1分08秒5613で5番手につけたのは素晴らしかった。
6番手でテストを終えたのは佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)。11ラップしかできなかったのは、路面ができ上がるまで走行開始を遅らせたため。走り出して5周目にすっと自己ベストの1分08秒6335を記録。ただし、トップのニューガーデンとの差は0.6542秒もあった。
「僕らは開幕の前に一度バーバーでテストを行いました。その時はチーム・ペンスキーと一緒だったんですが、僕らの状態はあまり良くなかったんです。それで今回は対策を施したセッティングを持って来ていて、いろいろともっと深く試したかったんですが、雨に翻弄されちゃいましたね」
「ちょっとだけ走った感覚は悪くなく、いい方向性だろうとの期待があったので、走り込めなかったのは本当に残念。今週インディアナポリス・モーター・スピードウェイのロードコースで行うテストで今回の続きをやります。そちらも実は雪の予報が出てるんですけど……」と琢磨は話していた。
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