2018年7月25日に発表されたメルセデス・ベンツ Cクラスの大幅改良で、セダンと同様にステーションワゴンも大きく変わった。その内容はおおむねセダンと同じだが、ワゴンで人気のクリーンディーゼルエンジンはEクラスと同じものが搭載され高出力化されている。早速、そのディーゼル仕様を試してみた。(Motor Magazine 2018年12月号より)
エクステリアデザインよりも、中味が大きく進化した
気が付けば、SUVと呼ばれるモデルが、すでに世界で “普通のクルマ” として受け入れられているというのが、今の時代の空気感。加えれば、長くナンバー1の座を守り続けて来たアメリカを抜いて、中国が世界の自動車市場でトップの地位を占めるようになって以降、そんなふたつの巨大市場を念頭に置いたモデルたちのボディサイズが、大型化の一途を辿り続けているのも、昨今目につく特徴だ。
一方で、人口減と高齢化を背景に、日本市場の存在感が年を追うごとに希薄になりつつあるというのは、認めたくはなくても認めざるを得ない悲しい現実。日本人のための日本製のクルマが徐々に姿を消し、「なんだか最近、“欲しくなるクルマ”が見当たらないな……」というのは、決して気のせいなどではない。
そんな中で、メルセデス・ベンツ Cクラスは久々に溜飲を下げる1台と言えるだろう。中でも、「これこそが、自分好みの1台!」と、そんな声を挙げる人が少なくないであろうと想像できるのがステーションワゴンだった。
メルセデス・ベンツの本気度がわかるCクラスの完成度
レガシィ ツーリングワゴンが一世を風靡した時代を頂点に、かつては目移りするほどに選り取り見取りだった日本メーカー製のワゴンがすっかり姿を消してしまった現在、遠路はるばるやってきたモデルであるにもかかわらず、日本の環境に何ともジャストフィットを実感できる身の丈感の持ち主であることが、まずはCクラスステーションワゴンに対する好感の基本にある。
ホイールベースを筆頭に、ボディのディメンジョンはセダンとほぼ同様。19インチの大径ホイール&タイヤを履くAMG C43を除くモデルでは、5.1もしくは5.2mという驚異的な小回り性能をすることも「まるで“日本のためのワゴン”ではないか」という錯覚すらを抱かせてくれる理由のひとつだ。
今回は、EクラスやCLSに先行で投入された新しい2L 4気筒のターボ付き直噴ディーゼルエンジンを搭載する、C220dアバンギャルドをテストドライブ。従来の同名グレードが積んだユニットに対して、燃焼向上やフリクション低減策などを盛り込んだ上で、排出ガスの浄化性能も向上と謳う。9速のステップATと組み合わされた新エンジンが発する、優れた動力性能にさっそく感心させられると同時に、Cクラスステーションワゴンが、この日本で優れた使い勝手を提供してくれることを改めて教えられた。
オプション装着された “AMGライン” とパノラミックスライディングルーフによる増加分を含めた車両重量は、1790kgと決して軽いとは言えない値だが、1600rpmにして400Nmという大トルクを発する最新の心臓は、そんな重さを物ともせずに、発進の瞬間から軽々と速度を高めて行ってくれる。
「ディーゼルは高速クルージングでこそ真価を発揮する」というのが定説で、実際にこのモデルも、そうしたシーンではまさに王者の如き余裕の振る舞い。だが、実際には街乗りの場面でもアクセルペダルのわずかな操作に対するトルクのつきが優れ、これもまた日本の日常シーンでの適性を大いに引き上げる要因になっている。
460L(VDA値)という後席使用時のラゲッジルーム容量は、実は455Lのセダンに対してほとんどアドバンテージになっていない。しかし、シートアレンジによって一気に1480Lにまで広がる拡張性と、嵩張る荷物を低く大きな開口部から躊躇なく積み下ろしできるというユーティリティ性は、やはりセダンには真似のできない固有のポテンシャルだ。
ドイツ発のモデルが、ここまで高い日本の環境への適性を備えているのは、考え方によっては皮肉な出来事。と同時に、次々とニューモデルを登場させる “SUVの急先鋒” でありながら、ベーシックなボディの持ち主に対する進化の手も決して緩めない点に、このブランドの強さと意地を改めて感じさせられたりもする。(文:河村康彦)
メルセデス・ベンツ C220d ステーションワゴン アバンギャルド 主要諸元
●全長×全幅×全高=4705×1810×1440mm ●ホイールベース=2840mm ●車両重量=1700kg ●エンジン=直4DOHCディーゼルターボ ●排気量=1949cc ●最高出力=194ps/3800rpm ●最大トルク=400Nm/1600-2800rpm●トランスミッション=9速AT ●駆動方式=FR ●車両価格=602万円
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