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タイトル争いで求められるマシンのパフォーマンス。GRスープラ、ニッサンZ、メーカー首脳の思惑

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タイトル争いで求められるマシンのパフォーマンス。GRスープラ、ニッサンZ、メーカー首脳の思惑

 季節外れの夏日が続く11月のレースウイーク、恒例のモビリティリゾートもてぎで2023年のSUPER GTも最終決戦を迎える。この週末に向けタイトル獲得の可能性を有するのは、前戦オートポリスで予選12番手からの逆転勝利を収め、69ポイントの選手権首位に躍り出た36号車au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)と、2位62ポイントの3号車Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)、そして3位53ポイントから"ポール・トゥ・ウイン"での逆転戴冠を狙う16号車ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)の3台となる。

⚫︎ミシュランタイヤGT500最後の戦いとなるニッサンZニスモ陣営
 昨季はRZ34型Nissan Z GT500のデビューイヤーにて、タイトル戦線に臨んだ3号車にとっては1年越しの"リベンジ"の機会であり、ニッサン陣営としては2014-15年GT-R以来の連覇が掛かる。

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「昨季も(タイトルを分けたのは)ほんのちょっとの差だった。あれもたぶん、8号車(ARTA MUGEN NSX-GT)とレース中に絡んだりしなかったら(結果的にペナルティ裁定)3号車にも勝機はあったかもしれない」と語るのは、ニッサンを率いる松村基宏総監督だ。

 その3号車は、この最終戦が今季限りでGT500の活動休止を表明しているミシュランタイヤとのラストレースにもなる。前戦オートポリス(AP)ではポイントリーダーとしてGT500参戦15台中、唯一の燃料リストリクター1ランクダウンの出力抑制措置を受けながら、優勝争いの末に3位表彰台を獲得する粘りを披露した。

 とくにAP最終セクターの上り勾配ではパワーの面で苦労を強いられながらも、実際の搭載ウエイトは34kgと直接のライバルより低かったことが運動性能の面で奏功した可能性もありそうだ。

「当時は23号車MOTUL AUTECH Z含め、どちらにもチャンピオンシップのチャンスがあったので、それぞれ選んでいたタイヤが違っていた。そこが戦略上の相違に出てしまいましたが、ここ最近は同じ銘柄でもその当たり外れが大きく出る傾向にある。だから我々も今回は当てたいなと。日曜の気温が想定以上に上がるようであればピックアップにも有利ですしね」と続けた松村総監督。

 週間予報で50%以上あった降雨予報は最新で20%へと変化し、猛威を奮った"雨のミシュラン"が見られる可能性は減じられたようだが、前戦の結果も踏まえ例年どおりサクセスウエイト(SW)撤廃の最終戦では「クルマとしてはちゃんとマッチングさえすれば、そんなに悪いことはないんじゃないか」と読む。

「エンジン側を含め最終戦のルーティンワークというのは昔からあって、どれだけ洞察力を持てるか。ここまでやっても『絶対、壊れない』という中で、いかに戦えるか。なのでドライバーも戦っている、エンジニアも戦っている、開発側も戦っている、つまり自分との駆け引きですよね」

 その舞台となるもてぎは、年間カレンダー屈指の"燃費に厳しいコース"として知られる。全開加速からブレーキング、そしてまた低いギヤからの加速を強いられる典型的ストップ&ゴーの特性を持つ上に、本来なら気温低下とも合わせて燃料消費が嵩む条件が揃っている。さらに今季はCNF(カーボンニュートラル・フューエル「GTA R100」)の導入初年度ということもあり、開幕前オフシーズンなど低気温条件では、燃料の重質性によるブローバイ過多なども話題になった。

「(この週末は)開幕戦の岡山より暖かいような気がしますよね。ただ各社さん、適合も進んでいるのでね。パワーとしてはみんなほぼ横一線なんじゃないか。ということは燃費も同じ。給油時間を減らして我慢して走っているチームもあれば、フルに入れて思い切り走るチームもある。ライバルを見て入れる量を減らしたりすると、下手をすればガス欠の恐れもある。そこの競い合いも大きそうですね」

⚫︎ポイントリーダーとしてタイトルに臨むGRスープラ陣営の開発
 一方、シーズン開幕時点で開発の達成度に関し「準備状況は50%」との評価でシーズンを始めながら、堂々のチャンピオンシップリーダーとして最終戦を迎えたトヨタ陣営は、エンジン開発責任者兼全体統括を担うTCD/TRDの佐々木孝博氏をして「我々はまだ性能的にはやはり劣っている……という状態で臨んでいる気持ちが、年間の少しづつの向上に繋がっているのかな」と、ここへ来ての手応えを口にする。

「前戦もタイヤがまたひとつのポイントだったと思いますが、チームが選んだタイヤもバラけてはいながらも、全体が底上げされて来ている。その上で、しっかりと燃費も良く走ってくれた36号車がレースで1番強いクルマに仕上がっていたのかなと。本当にそのひと言に尽きると思います」

 年間2基の運用が許されるエンジン開発の面では、今季は第6戦SUGOのタイミングで全3社の新スペックが出揃ったが、その時点で「APを見据えた高地対応」を掲げていた開発の方向性が、目論見どおりに成功を収めた格好となった。

「予定どおりというか。標高が高くて気圧が低いところでもパフォーマンスを出し切るという適合で持ち込めました。過給圧を含めてAPで抱えた課題は改善できて、性能ゲインも当然あるなかで今回も持って来れています」と続けた佐々木氏。

「当然、ドライバーのマネジメントも含めてですが、シーズンを通してやはり我々の燃費が3メーカーのなかで1番良い。450kmみたいに距離が長いレースと比べると、今回の300kmは確かにあまりゲインはないんですけど、やることは全部やって少しでも全車が上でゴールできるように、という準備をしてきています」

 同じくCNFで迎える最終戦もてぎに向けても「燃料を使い切るっていうのがメインでやって来ていて、今回もこのもてぎのコンディションに合わせてCNFを使い切ると。そういう適合で持ち込んできてますので、それも性能に跳ね返って来てる……ハズ」とも語る佐々木氏。

 来季は新型モデル投入を予定し、これがNSX-GTラストランになるホンダ陣営も含め、各陣営ともにこの最終戦にはそれぞれ"負けられない"背景がある。

「武器の最高速やブレーキングの安定性も、すべてタイヤが関係してくる。そこが合っていれば相当無理をしても大丈夫だし、そこが外れるとグリップが浅くなり不安定さも出る。ちゃんとドライで戦って、雲と風と、すべての要素がどう進むか。去年はあそこまで持って行きながら勝てなかったチームがいますので、落ち着いてやらせるように、去年の訓練の結果を存分に活かせるように」(松村総監督)

「絶対にGRからチャンピオンを出すぞ、という思いもあるし。(宮田)莉朋選手はスーパーフォーミュラも獲ったので『ダブルタイトル』というのも当然あるし、しっかり手土産として持たせてあげたい。坪井(翔)選手も勝てばこれでタイトルが2回目になりますし。そこを考えると、しっかりと形にしてあげたい。立川(祐路)選手もこのレースで引退ですので、できれば優勝してほしい。前回もクルマが攻められる状況になるとあのオーバーテイクとか、引退するのもったいないなと思わせるパフォーマンスが見られた。今回も、そういう状態でレースできるといいかなと思いますね」(TCD/TRD佐々木氏)

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