シボレー「カマロ・コンバーチブル」の最新モデルに齋藤浩之が試乗した。日本でアメリカ車に乗る“楽しさ”とは?
カマロの思い出
そろそろ還暦の足音が忍び寄ってきた僕でも、シボレー・カマロの名を聞くと、映画『トランスフォーマー』で活躍したバンブルビーの仮の姿だった5代目カマロの、目にも鮮やかな真黄色のクーペを真っ先に想起したりするようになった。
かつてはカマロといえば1980年代に学生ホームステイで渡米し、オハイオ州の小さな町で体験した記憶が真っ先に頭をよぎったものだ。一緒に行った別の学生がお世話になったステイ先のママさんが、2代目カマロを自分専用の足に使っていて、その狭苦しい後席に押し込まれるようにして僕のステイ先に送ってもらったことがあった。「これで2+2っていっても、人間の乗る場所じゃないでしょ」と、思ったものである。
なんていうか、こんな大雑把なパッケージングが許されて、そんなクルマがセカンドカー、サードカーになるアメリカって、すごい国だなぁと妙に感心したりもした。でも、今はバンブルビーの5代目カマロ。画面の中を疾走する姿を見て、カッコいいなぁと子供のように目で追ったなぁ。記憶は完全に上書きされている。時は流れたものだ。
Sho TamuraSho Tamuraいま目の前にあるのはその5代目のコンセプトを踏襲して2015年にフルモデルチェンジし、2018年終盤にマイナーチェンジがおこなわれた現行モデル。日本にはタイムラグがあって上陸、納車はこの8月に始まったばかりだから、バリバリの最新モデルということになる。そして、今日乗るのはその屋根空きモデルのコンバーチブルである。大柄な寸法、真っ黒のボディにこれまた黒のソフトトップとあって、なにやら迫力がある。
そのカマロ、最新とはいってもこれはアメ車である。イマドキの若者には、それだけで「キモイ」とか「意味分かんなぁい」とか言われかねない左ハンドル仕様だ。
Sho Tamura搭載されるエンジンは2.0リッターの直列4気筒ガソリンターボ。変速機は8段ATが組み合わされている。これをフロントに積んで後輪のみを駆動するオーソドックスなRWD(後輪駆動)レイアウト。ボディが黒だと判然としないが、ソフトトップが描くルーフラインはシャープで、キャンバス生地の艶消しでなければ、クーペもかくやのスタイリングを作っている。ルーフと強いコントラストをなすボディ・カラーを選べば、スタイリッシュな印象がずっと強くなるはずだ。おなじ理由で、マイナーチェンジでいっそう雁行する独特になった顔の表情もグッと引き立つはずである。
幌屋根はウインドスクリーン上端手前に配置されたボタンの操作で開閉可能な今流のそれ。48km/h以下であれば走行中でも開け閉めができる。幌屋根とはいっても立派な多層構造式だから、遮音性能も心配要らない。6代目カマロになった時点で、その辺りは抜かりなく最新世代の欧州勢に引けを取らないものになっている。
Sho TamuraSho TamuraSho TamuraSho Tamuraアメ車侮るなかれ
さてさてそういうカマロ。アメリカでは“ポニー・カー”とか“マッスル・カー”と呼ばれるカテゴリーのクルマだ。フォード「マスタング」の好敵手として、代を重ねながら今日まで生き延びてきた。(アメリカ人の)誰もが買えるアフォーダブルなスポーツ・クーペ(とコンバーティブル)というところに真骨頂がある。
マッスル・カーとしての派手な役割を任されているのは6.2リッターの自然吸気V型8気筒(453ps)+10段ATを積むクーペの「SS」。日本でも710万円で買える。一方でポニー・カーとしてはコンバーチブルとおなじパワートレインを搭載する「クーペLT RS」で556万円だ。ポニーは小馬という意味で、なるほど仕立ても価格もまさにそういうものになっている。
Sho TamuraSho TamuraコンバーチブルはさすがにクーペLT SSのようなわけにはいかないものの、それでも643万円で収まっているのだから、欧州車に比べればかなり安い。ボディ・サイズが全長4785×全幅1900×全高1350mmに達し、ホイールベースが2810mmもある堂々たる大型クーペであることを忘れてはいけない。
「だって、コルベットみたいな本格派のピュア・スポーツカーじゃないんでしょう。だったらねぇ」などと侮ってはいけない。土台になるプラットフォームはプレミアム系欧州車に真っ向勝負を挑むキャデラックも使うお金のかかったものだし、サスペンション・システムにしても、リアのそれは手抜き一切なしの本格的なマルチリンク式である。アーム長の要の物理量もしっかり確保されている。
Sho TamuraSho Tamura4気筒ターボ・エンジンはかつてエントリー・モデル用に使われていたV型6気筒に代わる役割を担うダウンサイジング・ターボであるが、最大トルク400Nmを捻り出し、最高出力も275psに達する仕様。要するに、3.0リッター級の仕事をこなす高圧過給ターボ・エンジンである。
安物なんかでは全然ない。ボディとは独立した専用フレームや、ほかに流用のきかない専用設計の純スポーツカー的なサスペンションをもっていたり、エンジン搭載高を限界的に低くするためにドライサンプ化されていたりするわけではないけれど、大量生産のきくモノコック・ボディを使った後輪駆動車として、色眼鏡をかけずに内容を見れば、最新世代の欧州勢にもなんら引けを取ることのない設計が施されたクルマだ。
Sho TamuraSho Tamura外皮を透かして見る機械レイアウトも美しい。全長の短い直列4気筒を使うモデルは、エンジン全長の9割近くがフロント・アクスルより後方に位置する、フロント・ミドシップ搭載である。エンジン・フードを開けて見る4気筒エンジンがかなり高い位置にあるように見えるのだって、高いボンネット高を利して直立搭載されるからで、ついでに言えば、4気筒エンジンそれ自体、かなり背が高い。つまりコネクティングロッド長を無理やり短くしてエンジン全高を詰めたりしていない真面目な設計が施されているからでもある。
事実、搭載位置は頑張って下げられていて、ステアリング・ラックはエンジンと干渉しない前方にあったりもする。一部ドイツ車のように、何故にそこまで? と、思わせるような理想追求ぶりではないにしても、正直でまっとうな、やるべきことをきちんとやりぬいた設計というべきだろう。外皮を透かして見た途端に吐き気をもよおすような、生産設備の都合最優先みたいな騙しの機械レイアウトではない。欧州勢にだってそういう類いのクルマが少なくなくなってきたご時世に、立派と言うほかない。しかも、第6世代では先代比でボディ剛性を大きく引き上げながら、最大90kgに達する軽量化も実現している。ゆめゆめアメ車侮るなかれ、である。
Sho Tamura動力性能はちょっとした驚き
そして、実際に走らせれば、そういう成り立ちなくしては実現できないクルマにきっちりなりおおせていることが分かる。
フラットな姿勢を易々と保つライド感は、クーペ・モデルから120kg増えていても1680kgしかない車両重量と、最新の屋根開きモデルとして納得のいくボディ剛性が確保されているからこそのものだ。
Sho TamuraSho TamuraSho Tamura前後重量配分にしても、屋根を下ろせば完全な前後イーブンである。堅牢感と軽やかな感触が同居している。車両重量がヘビー級のそれでないところへ、タイヤ・サイズは245/40R20Vだから、ボディ・コントロールも余裕綽々である。
ハンドリング性能だって、下手な似非スポーツカーなど寄せ付けない水準に達している。ライド感や操縦フィールに、少しばかりラフなところがあったりはするけれど、そこをあげつらうのは酷というものだろう。
車両重量が軽く収まっているおかげで、動力性能もちょっとした驚きものだ。多段変速機のおかげもあるのは事実であるが、ピックアップ加速は素早く、そこからの伸びもイイ。加速性能はかなりのものだ。速いのだ。
4気筒ターボはアクセレレーターを深く踏み込んで負荷を上げれば、力強いビートを刻みながら乾いた排気音をたなびかせる。パンチがあって、いい音だ。最近はあまり聞かれなくなったパンチのきいた痛快な4気筒サウンドがここにある。オープンで走ればなおさらだ。
Sho TamuraSho TamuraSho Tamura解放感と爽快感
この最新のカマロ・コンバーチブルを「イイなぁ、このクルマ」と心底思うのは、屋根を開けて走らせている時だ。音ももちろん楽しいのだけれど、それ以上にこの解放感と爽快感。かつてと違って4座といってもいいほどの立派な2+2だから、開口部は大きい。
しかも、ウインドスクリーンは比較的立っていて、額の上まで覆いかぶさって来るような感じもないから、解放感は最上級。街なかや国道を流す程度の速度ならサイド・ウィンドウも全開で全然煩わしくない。
高速道路であっても、サイド・ウィンドウを上げてやれば、法定速度域なら風にもみくちゃにされることもない。つねにいろんな方向からの風と戯れることになるけれど、速度変化があっても、その風との戯れ感は不思議なほど速度に左右されない。何が何でも気流をコントロールしてやろうという感じのない無造作なナチュラル感がある。
Sho Tamuraメルセデス・ベンツ「SL」のような完璧な気流コントロールを売りにするようなクルマではもとよりないけれど、雨さえ降らなければずっと屋根を開けたまま走らせていたいと思わせるような、この爽快感がなにより気持ちイイ。オープンの状態がデフォルトなんだなぁ、と思わせるところは、アメリカ車ならではだと思う。長年積み上げてきたものが、そこに活かされているに違いない。
こういう大らかな気持ちよさが味わえるオープンカーは、フォードが撤退してしまったいま、このカマロ・コンバーチブルだけである。左ハンドルしかないのだったら、それに慣れればいいだけのことである。
文・齋藤浩之 写真・田村翔
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みんなのコメント
街中で五分に一度は見る欧州御三家に比べて殆ど見ないのも嬉しい。
今はC8にとても興味が有る。