細部のタッチはオーナーが指定
英国価格150万ポンド(約2億2000万円)のベントレー・マリナー・バカラルの記念すべき1台目が完成した。全12台のうち最初の1台で、クルーにある同社のワークショップで製作された。
【画像】主張しすぎない超高級車【バカラルをコンチGTやフライングスパーと比較】 全88枚
「カー・ワン(Car One)」と呼ばれる1台目のカーボンファイバー製ボディは、アトムシルバーのサテン塗装で仕上げられている。足元には、ポリッシュ仕上げのフェース、ダークグレーのサテンスポーク、グロス仕上げのモスグリーンを備える「トライフィニッシュ」の22インチホイールが装着されている。
このグリーンのディテールは随所に施されている。シートには上質なナッパレザーが使用され、ダイヤモンドキルティングが施されたカーペットにはグリーンステッチが添えられている。
1台目のバカラルは、オーナーが細部に至るまで指定した、完全なオーダーメイドである。一方、ベントレー・ブロワー・コンティニュエーションの最初の1台も完成した。
ベントレーのマリナー&モータースポーツ担当ディレクター、ポール・ウィリアムズは次のように語っている。
「最初の2台が完成したのを見て、チーム全員が大きな誇りを感じています。プロジェクトの設計と開発には何年もの時間が費やされてきましたが、2台が完成したことで、大きなやりがいを感じています」
「象徴的な1929年のレーシングカーを再現すると同時に、21世紀のグランドツーリング・バルケッタを提供できるのは、世界でもマリナーだけなのです。お客様に新車をお届けできること、そして両シリーズの残りのオーダーが完成することを楽しみにしています」
現在、各モデルの次の3台が製作中で、まもなく納車される見込みだ。
未来のラグジュアリーカー
バカラルは、ベントレーが切り開く新時代を象徴するモデルといって良いだろう。ベントレー・マリナーは、超高級な特別仕立てモデルを年間2台のペースで発表する。
150万ポンド(約2億2000万円)のバカラルは、オープンボディのグランドツアラー。生産台数は12台限定で、すべてがベントレーのロイヤル・カスタマーに割り当て済みだという。
2シーターのデザインは、昨年にベントレー100周年を記念して発表されたEXP 100 GTに大きな影響を受けている。バカラルはEXP 100 GTと並行してデザインされたという。
特に結びつきを感じさせるのは、現行モデルの双眼ではなく、単眼となるヘッドライトだ。ダークブロンズのボディ装飾も特徴的。ブレード状のデザインとなるテールライトにも、強い共通性が漂っている。
ボディデザインのチーフ、JPグレゴリーは次のように語っている。
「ベントレー・マリナーが手掛けた初めての現代版コーチビルド・モデルです。本来、ベントレーはコーチビルドで有名なブランドです」
「バカラルの個性は、未来のラグジュアリー・モビリティを想起させるものです。わたし達はすでにEXP 100 GTで、そのビジョンを提示し始めていました。バルケッタ・デザインは視覚的な重さを打ち消し、エクステリアとインテリアにはシームレスな流れが生まれています」
量産車では実現できないデザイン
インテリアデザインのチーフ、ダレン・デイによると、インテリアは1929年のバーキン・ブロワー・レーシングカーの流れを汲むという。
「わたし達はシートの後ろ側も含めて、包まれるようなコクピットを重視してデザインを進めました。もちろん、スピーカーの細かな装飾も含めて、ゼロからデザインしています。量産車では実現できないデザインを見たいと考えました」
バカラルのオーナーは、シートの後ろにピッタリと収まる、特注のラゲッジセットをオーダーすることも可能だ。
ベントレーの現行モデルから流用される部分は、キーレスエントリー機能に伴うドアハンドルと、エアバック機能を実装するステアリングホイールだけだという。
インテリアでは、ダッシュボードやセンターコンソールのボタン類に既視感を感じるが、バカラルのためにまったく新しい素材で仕上げられている。
ケンブリッジで自然に倒れた樹齢5500年の木材や、スコットランド国境付近で取られたウールやツイードなどが用いられている。メーターや時計のパネルはダークブルーの盤面が埋められ、車名の由来であるメキシコのバカラル湖をイメージさせる。
ベントレーが誇るW12エンジン搭載
ベントレーのデザインディレクター、ステファン・シエラフはこう振り返る。
「バカラルの開発を始めた時は、まだEXP 100 GTコンセプトに取り組んでいました。異なるものを同時に取り組むことはいい経験になります」
「クロームメッキや、古典的な素材はほとんど用いていません。ベントレーの可能性を現代的に解釈するうえで、飛躍といえるデザインだと思います」
バカラルに搭載されるエンジンは、ベントレー自慢の6.0L W12気筒エンジンで、最高出力は659ps。標準的なW12エンジンより41psほどパワーアップしている。
最大トルクも91.6kg-mにまで引き上げられた。0-100km/h加速は3.5秒でこなし、最高速度は320km/h以上となる。
マリナー部門の出発地点
バカラルには、マリナー部門の本格始動という意味も込められている。マリナーを率いるティム・ハニングは、「お客様に満足していただく、最大の未開拓領域の1つです」と語る。
つまり、マリナーの3本柱として、マリナー・クラシック、マリナー・コレクションズ、マリナー・コーチビルドがあるのだ。
マリナー・クラシックは、1939年製ベントレー・コーニッシュの再生と、バーキン・ブロワーの後継シリーズなどで、2019年に活動をスタートさせている。マリナー・コレクションズは、最近発表となった特注のコンチネンタルGTマリナー・コンバーチブルなどが対象。
そして、マリナー・コーチビルドは、独自モデルのバカラルを生み出した。
「コーチビルド・モデルの開発を始める必要がありました」とハニング。
「マリナー部門の本質です。バカラルとブロワーは、いわば、わたし達の出発地点です」
「このようなクルマの需要はかなり高いのです。多くの人々から、なぜもっと早くこのようなクルマを手がけなかったのか、と聞かれるほどです」
「バカラルには、ドライビングの至高感があります。そこへ、究極の快適さも与えることができます。下品にはしたくありません。最速のクルマというわけでもありません」
「量産モデルより遥かに機敏なバカラルを一般道で目撃できるでしょう。バカラルは、今後も続くプロジェクトで最初の1台です。現代のコーチビルドのスピード感は増していきます。作り出す台数によって、内容も異なります」
「お客様が1台か2台のクルマをご希望されれば、価格は高くなります。ですが、お請けできます。すべてを手作りで仕上げる場合、多くても10台や12台が限界でもあります。バカラルのように」
デザイン責任者に訊く:なぜこのスタイルに?
――マリナー部門初のモデルとして、このボディスタイルを選んだ理由は何でしょうか?
「シューティングブレークでもクーペでも何でも作れますが、典型的な英国製スポーツカーとして、ブロワーとの関連性を持たせたかったのです」
「屋根のあるブロワーを見たことがありますか?夏でも冬でも屋根なしで運転する人がいるくらい、英国らしいものがあるんです」
――シリーズ化に向けて、どのような点を継承していきたいですか?
「ボディのラインを徹底的に減らし、エクステリアにあまり多くのディテールを入れないこと。また、素材の扱いについても、よりサステイナブルなものにしていきたいと考えています。そして、特別感を高めるクラフトマンシップです」
――若い顧客は、伝統的な購買層とは異なるものを求めているのでしょうか?
「若いお客様は、考え方がまったく違います。ステータスの象徴ではありますが、きらびやかなものにこだわっているわけではありません。『自分の持ち物を見せる必要はない』というような、控えめなアプローチです」
――ブロンズカラーのエンブレムをつけるのは今回が初めてですね。
「ええ、エンブレムを変えるのは常にリスクを伴います。気を悪くする人もいるかもしれません。お客様がクロームやブラックを望むのであれば、それにお応えします」
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