構想から2年で仕上げたミドシップ
text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
【画像】マセラティMC20とMC12 覇権を争うライバル・スーパーカー 全112枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
マセラティは、失敗の許されないプロジェクトだと深く理解していたようだ。経営に余裕はない。スペック表には、高性能ライバルに引けを取らない数字が並ぶ。ブランドを未来へ導くように。
伝統と格式あるイタリアの自動車メーカー、マセラティ。独自開発としては初となるミドシップモデルが、ついに姿を現した。MC20は新しい時代の幕開けだと、自ら力強く表現している。
これまでのマセラティとは、一味違うモデルでもある。最先端のデジタル技術を駆使して設計され、構想からたった2年で、2シーターのスーパーカーを量産にこぎ着けている。
モータースポーツでの経験をもとに、コンピューターによるシミュレーションと一般的な路上試験を組み合わせ、ラピッド・プロトタイプの仕上がりを詰めた。「プロジェクトを始めるに当たり、これまでとは異なる手法を取ろうと決めたのです」
MC20の開発責任者、フェデリコ・ランディーニが説明する。「開発の大部分は、モータースポーツ分野での新パートナーと協働し、デジタル環境で進められました。ボディやシャシーだけでなく、エンジン開発も含まれます」
「新しいプロセスは、目標の期限通りにクルマを発売するための、カギとなるものでした。それ以外の手法では困難だったでしょう」。マセラティにとって、本当に新しいチャレンジだったのだ。
一方でMC20というモデル名は、マセラティが21世紀初頭に決めた従来のルールに則っている。MCは、マセラティ・コルサ(レーシング)の略。数字はモデル名が発表された年、2020年を表す。
マセラティの優れた地位を確立する
英国価格は18万7230ポンド(2808万円)から。ライバルとして見据えているのは、ミドシップのスーパーカーたち。フェラーリF8トリブートやランボルギーニ・ウラカン、新しいマクラーレン・アルトゥーラなど、ツワモノばかりだ。
MC20は、イタリア・モデナでの生産が始まったばかり。英国へは、2021年の半ば以降へ到着する予定だという。マセラティが見込む年間生産台数は、今回試乗したロードゴーイング仕様と、追って登場するレーシング仕様を合わせて1500台となっている。
新モデル開発の狙いは、スーパーカーやモータースポーツ分野での、マセラティの優れた地位を確立すること。ギブリやレヴァンテ、クアトロポルテといった台数を見込めるモデルで、スポーティさや技術的な先進性といったイメージを、一層高めたいと考えている。
これは、マセラティが以前から試みてきた手法。1971年には、初のミドシップ・スーパーカーとしてボーラが発売されている。こちらは単独ではなく、シトロエンの力を借りていた。
MC20の基礎をなすのは、カーボンファイバー・モノコック。内燃エンジンだけでなく、純EVにも対応できるように設計されている。モノコックの前後には、アルミニウム製のサブフレームが組まれる。
このモノコックは、マセラティが量産してきたクルマの中で最も剛性に優れるという。2004年に少量生産された、高度なエンツォ・フェラーリがベースのMC12をも上回っている。それでいて、MC20の車重は1475kgと比較的軽量だ。
カーボンを多用した機能的なデザイン
ボディパネルもカーボン製。スタイリングの微妙なニュアンスは、写真ではお伝えしきれない。低い位置のフロントグリルと、その中央で輝くトライデントのシンボルなど、従来のマセラティらしさも取り入れられている。
ブルーに塗られたボディ上部は、抑揚が強く彫刻的。一方で下部は、動的特性に大きな影響を与えるセクション。アクティブエアロを採用し、冷却性能と充分なダウンフォースを獲得している。
フロントスプリッターの両端は上方へカナードのように折り曲がり、フロントフェンダーから伸びるフィンが、ドアと一体化されている。サイドシルは大きく張り出し、リアフェンダー上部に吸気口が開き、後端にはワイドなディフューザーが付く。
シャシーの下面には、気流をコントロールするボルテックス・ジェネレーターと垂直フィンが備わる。極めて機能的なデザインだ。
ボディサイズは全長4669mm、全幅1965mm、全高1221mmと小柄な方。フェラーリF8トリブートと比べると、58mm長く、14mm狭く、15mm高い。ホイールベースは2700mm。前後のトレッドは、1681mmと1649mmとなる。
ドアは高い位置のヒンジを支点に上方へ開く。開口部は大きく、サイドシルの形状も手伝い乗り降りしやすい。
MC20のインテリアデザインは比較的シンプルで、イタリアンな華やかさは薄い。色使いは暗いが、機能的であることがわかる。ミニマリストで、装飾的な部分はほぼない。
メーターパネルとダッシュボード中央にあるのは、高精細のモニター。幅の狭いセンターコンソールには、スイッチ類が最小限に並ぶ。
自社開発の90度3.0L V6 ビトゥルボ
シートはサベルト社製のカーボンファイバー・バケット。電動で調整可能だ。モータースポーツ前提にサイドサポートは高く、シェルの剛性感も高い。
ドライビングポジションは完璧。座面は低く、前方視界も素晴らしい。フロントガラスの上にあるバックミラーはモニター式で、リアカメラ映像がリアルタイムで表示される。荷室空間も、大きくはないものの用意されている。
ステアリングホイール上のスタートボタンを押すと、柔らかい破裂音混じりにMC20が目を覚ます。ギアの選択は、センターコンソールのボタンで。DはATモード、MはMTモードが選ばれる。
マセラティのミドシップ・スーパーカーに対する本気度は、エンジンを見ればわかる。3.0LのV6ツインターボ・ユニットは完全な新設計。イタリア語で海王星を意味する、ネットゥーノと呼ばれるエンジンだ。
90度のバンク角が与えられ、モータースポーツへの参戦も視野に構造設計されている。かつてのパートナー、フェラーリの力はもはや借りていない。モデナに構える、マセラティの施設で自社開発された。
ドライサンプでカムシャフトは4本、バルブタイミングは可変式。IHI社製のターボチャージャーを2基と、ボッシュ社製のダイレクト・インジェクションを搭載している。ツインスパークで、F1譲りといえるプレチャンバーと呼ばれる燃焼技術も採用した。
純EV版のMC20も、2023年から生産が始まる。今回試乗するV6ツインターボのMC20には、電動化技術は載っていない。
この続きは後編にて。
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みんなのコメント
でもV6かぁ。