■背が低くてヒンジドアのミニバンが流行った時期があった!
2022年1月にトヨタ新型「ノア」、新型「ヴォクシー」が発売され、同じタイミングでホンダ新型「ステップワゴン」が初公開されるなど、ミニバン市場が盛り上がりを見 いまやファミリーカーの定番となったミニバンは背が高くて室内空間が広く、スライドドアを装着すること乗り降りがしやすいといった特徴がありますが、もともとは商用バンに乗用車的な内装を施したワンボックスワゴンから進化して現在に至っています。
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しかしその期間中、短期間ですがステーションワゴンの背をやや高くして、スライドドアではなく通常のヒンジドアを採用した3列シートのミニバンが流行った時期がありました。
ミニバンがブームになり始めたときに登場した、走行性能が比較的良かったヒンジドアのミニバン3車を振り返ります。
ホンダ「ストリーム」
ホンダは2000年に「ストリーム」を発売しました。
当時のホンダは「オデッセイ」で乗用車並みの操縦性をもったミニバンを実現していたこともあり、ストリームはよりスポーティな性能を実現したミニバンとして登場しました。
ボディサイズは全長4550mm×全幅1695mm×全高1590mmと5ナンバーサイズに収められ、130馬力/15.8kg・mの1.7リッターエンジンと、154馬力/19.0kg・mの2リッターエンジンを搭載。
このスポーティな操縦性とシャープに吹け上がるエンジンはホンダ車ならではのもので、他社のミニバンにはあまりなかった性格だといえます。
多くの人が待ち望んでいたミニバンの登場だったからか、ストリームは急速に売れ行きを拡大していきました。
2003年にはマイナーチェンジがおこなわれ、フロントマスクは縦長ヘッドライトから鋭さを増したプロジェクター式に変更。
その際、2リッターエンジン車にはオデッセイに追加されて好評だったスポーティグレード「アブソルート」を設定し、スポーティなメージをさらに強化していきます。
さらに同年中には、ホンダ初の直噴ガソリンエンジン「K20B」搭載車を設定するなど、ホンダはストリームに力を入れていました。
一方、この頃からトヨタ「ウィッシュ」との競争が激化していきます。
ストリームのマイナーチェンジ後のCMキャッチフレーズである「ポリシーはあるのか」は、暗にウィッシュのことを指しているとされ、自動車メディアは両車の競争をあおりました。しかし、販売の上では徐々にウィッシュが有利となっていきました。
その後ストリームは2006年に2代目へとフルモデルチェンジし、「RS-Z」などの2列シートスポーティモデルを追加しますが、2014年に製造を終了しました。せています。
■ストリームを完全にライバル視したトヨタのミニバンとは?
トヨタ「ウィッシュ」
2001年に登場したトヨタ2代目「カローラスパシオ」は全長4240mm×全幅1695mm×全高1610mmと全長が短く、3列目シートはあくまでも緊急用とするミニバンでした。
そのため、全長がより長いストリームに対して取り回し性に優れる一方で、スペースの上では不利だったのです。
そこでトヨタは2003年に「ウィッシュ」を発売しました。
基本的なメカニズムはセダンの「プレミオ/アリオン」と共通。ウィッシュのボディサイズは全長4550mm×全幅1695-1745mm(Zグレード)×全高1590-1600mmとカローラスパシオよりも全長が長くなったことから、3列目シートの実用性もストリーム並みになりました。
エンジンは、132馬力/17.3kg・mの(4WD車は125馬力/)1.8リッターエンジンのみで登場し、やや遅れて155馬力/19.6kg・mの2リッターエンジンを搭載する「Z」グレードを追加しました。
Zグレードは、樹脂製のオーバーフェンダーを装着。リアサスペンションをダブルウィッシュボーン式の独立懸架としたやや特殊なスポーティグレードですが、実際に街で見かけるのは1.8リッター搭載車が中心でした。
2リッターエンジン車は3ナンバーサイズであったことが少数派にとどまった理由だと考えられ、この点からもわかるように、ウィッシュはファミリー向けであることを特徴とし、スポーティさを前面に出したストリームとは正反対の性格だったといえます。
そして、ウィッシュは販売台数の点でストリームよりも優位に立ち、2009年に2代目へと進化。ところが、時代はよりファミリー向けの箱型ミニバンを求めており、ウィッシュは2017年に生産を終了しました。
マツダ「プレマシー」
「ファミリア」をベースとしたマツダ「プレマシー」は、全長4295mm×全幅1692mm×全高1570mmと、ストリームやウィッシュよりもやや小ぶりなサイズで1999年に登場しました。
エンジンは、ファミリア用の1.8リッターエンジン(135馬力/16.5kg・m)を搭載。2001年7月のマイナーチェンジでよりパワフルな2リッターエンジン(165馬力/18.1kg・m)を搭載する「スポルト」を追加しています。
スポルトは当時クラストップの出力を誇り、翌年から「Zoom-Zoom」を展開するマツダならではのミニバンになりました。
2代目以降のプレマシーはベース車を「アクセラ」に変更してサイズをやや大型化。2005年と2010年にフルモデルチェンジを受けました。
なお、2代目以降はリアドアがスライドドアに変更されており、ヒンジドアのミニバンではなくなっています。
また、スポルトこそ設定されませんでしたが、シャープな操縦性とスポーティさを感じさせ、ミニバンでも走りを重視するマツダならではのクルマに仕上がっていました。
3代目モデルの途中ではSKYACTIVエンジンと6速ATを搭載して燃費も向上。また、日産に「ラフェスタハイウェイスター」として供給されました。
日産によるとこの施策は、「ミニバンは日本独自の商品であり、日産は経営資源を他車に集中させつつ商品ラインナップを維持するため」とのことだったといいます。
当時ミニバンはまだ十分に売れていましたが、結果として市場は日産が予想した通りに変化。徐々にミニバン人気は後退し、プレマシーは2018年に生産を終了しました。
※ ※ ※
今回紹介した3車種はすべて廃止となっていますが、これにはさまざまな理由が考えられます。
ミニバン一極集中傾向が薄れたこと、世界的にはSUVが主流になっていること、核家族の場合はミニバンが必要となる期間が10年間ほどで、この期間を「スポーツドライブをあきらめる期間」と割り切る人が多くなったことなどが挙げられるでしょう。
そのため、走りの性能も兼ね備えたミニバンが復活する可能性は、極めて低いといわざるを得ません。
そういう意味でも、ヒンジドアミニバンは、「ミニバンが認知されるまでの間に産まれた歴史的にもきわめて特殊なクルマ」になるのではないでしょうか。
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みんなのコメント
「ワンボックスワゴン」は「商用車バン」から発生したに過ぎないことから、いかに乗用車的な内装を施しても乗り降りする扉が"スライドドア"だったことで、乗員すら荷物と見られている感は否めなかった(というか、ミニバンが一般的でない当時、こんなワンボックスの箱バン型の車で家族旅行なんて「荷物配送用の営業車を借りてきた」と思われるのがオチだった)。
ところが『オデッセイ』は、ミニバンの常識を覆す乗用車的な"ヒンジドア"。
乗員の荷物感が薄れたことが市場にウケ、空前のヒットとなってミニバンの礎を築いたのだが、それは決して走りの性能追及のために生まれたんじゃなく、もともと『アコード』を製造していた工場のラインに高さの制約があり、この程度の高さの車しか流せなかったからだってんだから、正に「瓢箪から駒」なんだよね!
さすがに(できたとしても)オデッセイそのままで低価格化してしまうと、高い金を出してはオデッセイは売れなくなってしまうから、車格を落とした。