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F1分析|ノリス、2度の”一瞬”に泣き勝利を逃す。これも今季が大接戦であるがゆえ?

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F1分析|ノリス、2度の”一瞬”に泣き勝利を逃す。これも今季が大接戦であるがゆえ?

 F1カナダGPでは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが優勝。今季6勝目を挙げた。

 6勝目とはいえ、今回のレースもフェルスタッペンにとって、簡単なレースではなかった。予選ではメルセデスのジョージ・ラッセルにポールポジションを奪われ、決勝レースでも一時はマクラーレン勢に先行されるシーンもあった。ただ、ある意味幸運な部分と絶妙な判断が積み重なり、フェルスタッペンは勝利を掴むことができたと言えよう。

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 まず幸運だった部分から。それは、最初のセーフティカーが出動した時にピットインできたタイミングだ。

 当時先頭でレースを率いていたのは、マクラーレンのランド・ノリスだった。しかしローガン・サージェント(ウイリアムズ)のクラッシュが起き、セーフティカーが出動した際に、ノリスはピットインに入れなかった。しかし2番手以下のマシンはピットに入った……ノリスは1周遅れてピットインしたことで、3番手にポジションを落とすことになったのだった。

 マクラーレンのアンドレア・ステラ代表によれば、ノリスはセーフティカーが出動した時、ピットレーン入口の1.5秒手前にいたという。これでは、ピットインを判断するには間に合わなかった。

 これについてノリス本人は、「ピットストップするべき時にチームとして十分な仕事ができなかった。だから、運が良かったとか悪かったとか、そういうことではないと思う」と語り、判断ミスだったと指摘している。

 フェルスタッペンはこれにより首位に躍り出ることになったわけだが、もうひとつ決定的な瞬間があった。それはレース中に、インターミディエイトからドライタイヤに交換するタイミングである。

 最初のセーフティカーのタイミングでいち早くドライタイヤに交換、さすがに早すぎたと見え、すぐにインターミディエイトタイヤに戻すことになったシャルル・ルクレール(フェラーリ)を除けば、最も早くドライタイヤを履いたのは、アルピーヌのピエール・ガスリーだった。40周目のことである。

 そのガスリーは、ドライタイヤを履いた直後こそペースの面で苦しんだものの、43周目にはインターミディエイトタイヤを履き続ける上位勢と遜色ないペースで走るようになった。ドライタイヤにする最適なタイミングが近づいているのは明らかだった。

 これを見て真っ先に動いたのは、メルセデスのルイス・ハミルトン。43周目にピットインしたが、コース復帰直後はインターミディエイトを履くノリスのペースに追いつくことができなかった。ハミルトンの1周後にピアストリ、そのさらに1周後にフェルスタッペンもピットインし、ドライタイヤに履き替えている。

ノリスはタイヤ交換を1周遅らせすぎた?

 このグラフは、各車がインターミディエイトタイヤからドライタイヤに履き替えた前後のラップタイム推移をグラフ化したものだ。

 ◯にP印のところが、各車がピットインした瞬間を示しているが、ガスリーやハミルトン、ピアストリのコース復帰直後のペースは、インターミディエイトタイヤを履いていた時のペースとあまり変わっていないのがわかる。

 これを数字にすると、ガスリー(40周目)は0.223秒、ハミルトン(43周目)は0.65秒、ピアストリ(44周目)は0.975秒、フェルスタッペンは1.476秒、タイヤをインターミディエイトからドライに交換したことでペースを上げているということ……つまり、周を重ねるごとに、コースはドライ向きになっていたわけだ。

 フェルスタッペンがピットインしたことで首位を取り戻したのが、マクラーレンのノリスだった。ノリスはフェルスタッペンよりも2周ピットストップのタイミングを遅らせた結果、ピットアウト直後の計測ラップでは、インターミディエイトを履いていた当時と比べて、2.622秒もペースが速くなっている。つまりフェルスタッペンがピットインした時よりも、さらに路面は乾いていたわけだ。

 数字だけ見ると、これは大成功と見えるかもしれない。しかし実際には、ピットアウト直後はノリスがフェルスタッペンの前にいたものの、すぐにオーバーテイクを許してしまい、さらにはメルセデスのラッセルにも先行されることになった。

 レースペースの推移を見ると、ノリスはどうもドライタイヤに交換するのを1周遅らせ過ぎたように思われる。

 グラフの赤丸の部分を見ていただきたい。フェルスタッペンはこの48周目に、1分20秒台で走っていたのだ。これは、ノリスがインターミディエイトタイヤを履いていた時より、約3秒も速かった。つまり、ノリスがドライタイヤを履いたことで上げたペースの差よりも大きかったのだ。

 ここから想像するに、フェルスタッペンがピットストップしたタイミングは、ドライに変えるにはまだ少し早すぎ、ノリスは逆に少し遅すぎた……つまり46周目がタイヤ交換の最適なタイミングだった可能性がある。ノリスはもう1周だけ早くピットインしていれば、フェルスタッペンの前を抑え、マイアミGPに続く今季(そして通算でも)2勝目を手にできた可能性があったのだ。

 これについては、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も認めている。

「彼らは2周長く引っ張っていた。そのことが、マックスにもう1周タイヤの温度を上げるための余裕を与えたんだ。それが重要だった。ランドがピットインした時、彼(フェルスタッペン)のタイヤは作動ウインドウに入っていて、セクター1までに3秒のギャップを奪うことができた。このタイミングが重要だったんだ」

 ノリスはまさに、2度にわたって”一瞬”のタイミングを活かすことができず、勝利を逃したわけだ。
 しかしそんな一瞬が勝敗を分けるほど、今季のF1は大接戦。今後も手に汗握るレースを目にすることができるだろう。

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