現実的な予算で完走も不可能ではない
現在開かれているクラシックカー・レースで、最も魅力的なものの1つといえば、イタリアのミッレミリアだろう。とはいえ、多額を投じてレストアされた貴重なモデルで、大富豪が参戦するイベントだとお考えの読者も多いのではないかと思う。
【画像】ミッレミリアを走ってみた アルファ・ロメオ1900 往年の2600とジュリア 現行モデルも 全99枚
確かに、そんな側面がある。しかし適切なクルマを選び、充分な準備を踏めば、現実的な予算で完走も不可能ではない。実際、とある2人は満面の笑みでグレートブリテン島へ帰ってきたのだから。
紳士的な人柄で、農業を営むシェリダン・ボウイ氏には、恐竜を専門に研究するマーク・デヴァニー氏という友人がいた。クルマへさほど詳しくなかったシェリダンにとって、非常に好都合な人物といえた。
マークは現代的なフェラーリの他に、ランチア・アッピア・コンバーチブルとオリジナルのフィアット500 アバルトを所有する、生粋のイタリア車マニア。12歳の頃にクルマの運転を練習したマイクロカー、フィアット・ガミーネも、大切に維持している。
ミッレミリアへの参戦計画は、シェリダンが数年前にフィレンツェを旅した時に偶然生まれた。そこで彼は、スポンサーの1社である高級腕時計ブランド、ショパール社に務める人物と出会ったのだとか。
弾んだ会話の中で、ゲストとしての招待ができると提案されたらしい。適切なクラシックカーを準備できれば、2023年のイベントへ参戦できる可能性が生まれた。
ミッレミリアへ適したアルファ・ロメオ1900
グレートブリテン島の南東部、ケント州タンブリッジ・ウェルズという小さな町に住むシェリダンは、コドライバーをマークに依頼。もちろん、快く応じてもらえた。ところが、肝心のクルマは決まっていなかった。
「ミッレミリアは、該当モデルのリストを作っています。その殆どは、極めて高額で取引されるような、エキゾチックで希少なクラシックカーばかりです」
「ACエースやジャガーXK120といった、そこまでレアではないクルマも含まれていますが、適合する仕様は高額です。ヒーレーも考えましたが、申し込み多数で諦めました」
そんな折、奇遇にも売りに出されているアルファ・ロメオ1900 ベルリーナを発見。新車当時も多くの人をスタイリングで魅了し、クラシックカーとして価値も高い。オリジナルのミッレミリア・レースではクラス優勝も果たしており、適した1台といえた。
「しかもその1900は、1989年以来18回も復活したミッレミリアへ出場した経歴がありました。経験の浅い私たちにピッタリな、状態の良い車両でもあったんです」
マークの提案にシェリダンは同意。2022年の夏に、英国のオールド・レーシングカー・カンパニー社から左ハンドルの1955年式1900 スーパーを購入した。
「参戦できることには、半信半疑でした。正式にエントリーされていると知った時から、慌てて現実的に動き出したんです」。とマークが笑う。
2人がシェイクダウン・イベントに設定したのが、グッドウッド・リバイバル。そこでは、古いアルファ・ロメオらしく発電用のダイナモが不調に。ほかにも、整備へ多くの時間を割くことになった。
ペアパーツをまとめ買いしに直接イタリアへ
フィアットやフェラーリのクラシックカーへ詳しく、ユーチューバーとしても活動しているマークは、リアデフ・ケースの不具合を発見。亀裂を修復するには、リアアクスルを降ろし、ハーフシャフトを抜き取る作業が必要だった。
タイヤとシートベルトは、新品に交換。トランスミッションとスロットル系はリビルドされた。クラッチペダルは重く、長距離を快適に運転するにはレリーズベアリングの交換も必要だった。
「トランスミッションをフロアの下から外すより、エンジンを下ろした方が手っ取り早いとわかりました」。とマークが振り返る。その様子は、自身のユーチューブ・チャンネル、「Italian Garage(イタリアン・ガレージ)」で紹介されている。
ディストリビュータはリビルト。クランクプーリーの交換が必要だったが、英国では1900の部品が入手困難だと判明し、イタリア・ミラノの専門店を頼ることになった。
最終的にマークは、スペアパーツをまとめ買いするため、直接イタリアへ向かった。「新しいクランクプーリーは、機械加工する必要がありました。ローターアームも見つからず、シェリダンが乗っていたランチア・アッピアのものを流用しています」
「ウォーターポンプは、幸運にも買った1900の荷室にスペアが入っていたんです」。微笑みながらマークが話す。参加者自らクルマの整備を済ませて出走したのは、2023年のミッレミリアでは、彼らが恐らく唯一だっただろう。
世界最大のクラシックカー・ショーのよう
6月中旬。いよいよイタリアへ向けて2人と1台は出発した。初日の日曜日は、15:30にスタート/ゴール地点となるイタリア北部のブレシアで車検があった。それまでは美術館を鑑賞し、美味しいイタリアンで昼食を楽しんだそうだ。
月曜日は、司祭によって参加を祝福してもらうイベントへ出席。450台が一同に会した。オースチン・ヒーレーは、予想通り最も参加数が多かったという。
「世界最大のクラシックカー・ショーに参加したような気分でした。レースへ集中することが難しいほど。着物姿の日本人が、(イタリアに存在したスポーツカー・メーカーの)エルミニを運転する様子など、ほかでは見られませんよね」
1900の不具合は、イタリアでも発生した。「予備のダイナモを持ち込んでいましたが、ちゃんと充電できませんでした。しかし、幸運にも1914年創業の電装屋さんを見つけて、直してもらえました。ブラシが正しく付いていなかったようです」
電圧などを調整するレギュレーターが、加熱する不調も発生。ミネラルウォーターのボトルを固定し、冷却することで対応した。
ブレシアの出発は、13日の火曜日。ステージへ出場車が順番に登り、大画面にドライバーとコドライバーの顔が映し出される。
「午後3時にスタート。最初のセクションは午後7時に終わりましたが、更に4時間、夜のスティントもあったんです」。マークが驚きながら振り返る。1日目は北部のヴェローナ、フェラーラ、イモラを巡り、ミラノで終えた。
この続きは、アルファ・ロメオ1900でミッレミリアを走ってみた2人(2)にて。
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