スポーツカー好きならば、誰もが一度は憧れたであろう「フェアレディZ」。過去のフェアレディZをオマージュしつつも、新世代のデザインで登場したプロトタイプの姿は、日産ファン、クルマファンとって、感慨深いものだ。
今回、12年ぶりとなるモデルチェンジとなるフェアレディZ。平成を駆け抜けた平成「Z」の進化を振り借りながら、令和初の「Z」への期待を考察していこうと思う。
こんな時期だけどあえて物申す!! いまの日本車に「足りないモノ」とはなんだろうか?
文:吉川賢一、写真:日産
【画像ギャラリー】9月16日に世界初公開されたフェアレディZ プロトタイプをみる
平成を駆け抜けた3代のフェアレディZ
●4代目フェアレディZ(Z32型)/1989年7月~2000年10月生産終了
300ZXの主要マーケットである北米市場では、販価を上げた高級スポーツカーとして、ポルシェなどの欧州スポーツカーを相手に販売を争っていた
平成となって最初にモデルチェンジをしたフェアレディZが、4代目のZ32型だ。1990年初頭といえば、初代セルシオや初代NSX、R32型スカイラインGT-Rなど、そして国産スポーツカーが黄金期を迎えていた頃でもある。
今では考えられないほど、若者達がこぞってクルマへお金を使い、スポーツカーを買いあさっていた。このZ32も、そうした若者の関心をとらえようと、ワイド&ローかつスタイリッシュなデザインを採用しており、今見ても美しい。
トップグレードのエンジンは、3.0L・V6ツインターボを採用し280馬力へとパワーアップ。
4代目フェアレディZが誕生した同時期に発表されたR32型スカイラインGT-R
同時期に発表されたR32型スカイラインと同じく、スーパーHICASがツインターボモデルに装備されているなど、贅を尽くしたモデルであったただし、サイズアップに伴って車重が増してしまったことがネックであった。
●5代目フェアレディZ(Z33型)/2002年7月~2008年10月生産終了
日産が倒産という窮地から、ようやく脱したタイミングで登場したZ33は、日産ブランド復活の狼煙となる一台であった
1990年代末といえば、日産自動車は新車の販売低迷によって、倒産すれすれまで追い込まれていた時代だ。
Z32系が2000年に生産終了となったのち、一時期、フェアレディZは日産のラインアップから消えていたが、全米のZオーナーズクラブからの、「Z」復活を望む強い声に応えるべく、日産デザインアメリカを中心にコンセプトカーが作られた。
鋭いヘッドライト、切れ上がったテールランプ、そして大きなリアフェンダーなど、プロポーションの美しさは、当時からずば抜けて優れていた。
エンジンは、排気量を500ccアップし、3.5L・V6 NAエンジンへと進化、怒涛のトルクでグイグイと走らせるようなロードゴーイングカーとなった。
シャーシはV35型スカイラインと同じFMプラットフォームを流用し、前後重量配分も53:47と適正化している。
なお運動性能向上のために、トランクルームには補強フレームが装着されており、使い勝手は悪かったが、続くZ34型では、その補強バーなしに車体剛性向上を果たした。
●6代目フェアレディZ(Z34型) 2008年10月~
Z専用にチューニングされた3.7L V6エンジンは、最大出力336ps、最大トルク37.2kgmを発生。今でも一級品のハンドリングを持つスポーツカーだ
上向き成長を続ける、当時の日産を象徴するように、2007年のR35型GT-Rのデビューに続いて2008年にデビューしたのが、6代目となる現行Z34型のフェアレディZだ。この2台の登場により、日産のスポーツイメージは引き上げられた。
ブーメラン型ヘッドライトとテールランプの採用、よりマッシブなボディスタイル、そして、排気量を200cc増やした、3.7LのVR37HRエンジン採用など、デザインと中身を正常進化させている。
2012年のビッグマイナーチェンジで、フロントグリルにあった牙のような造形がなくなり、フロントバンパーのデザインも変更、サスペンションのリファインも施された。
そして、2014年に行われた「NISMO」のマイナーチェンジを最後に、今のデザインに落ち着いている。
Zファンの多い北米では、日本仕様にはない廉価なベースグレードが、いまも約3万ドル(3万90ドル=約329万円)で購入できる(日本仕様のベースグレードは397万円~)。
そして令和初のZがついに初公開
●7代目 フェアレディZ プロトタイプ(2020年9月発表、2021年末発売と予測)
2020年9月16日に新型フェアレディZ プロトタイプが世界初公開された。2021年末に発売と噂さえれている
2021年末発売、と噂されている次期型Zについて、デザイン以外で判明したのは、3.0L・V6ツインターボエンジンの搭載だ。
これはおそらく、スカイラインに搭載されているエンジンで、ローアウトプット版の304ps/40.8kgmと、400Rに使われているハイアウトプット版405ps/48.4kgmのある、VR30DDTTのことだろう。
今回の発表で、新型には、3.0L・V6ツインターボエンジンの搭載、6速MTが発表された。海外市場を考慮し、ATも用意されるだろう
ただし、Z専用にレスポンスをさらに引き上げるチューニングがなされる可能性もある。6速MTのみの発表で、ATについては言及がなかったが、北米海外市場を考慮すると当然用意するはずだ。
ボディサイズは全長4382×全幅1850×全高1310mmで、ホイールベースについては未発表である
ボディサイズは全長4382×全幅1850×全高1310mm、ホイールベースについては、未発表だ。おそらく、2021年秋の東京モーターショーが市販型「Z」のお披露目の場となり、2021年末までに発売開始となるだろう。
Zも電動化は避けられない?
日産は、e-POWERやハイブリッド、EVといった電動車の比率を、順次上げていく宣言をしている。
次期型ノートや次期型エクストレイルのような量販車には、必然的に電動モデルが用意されるだろうが、GT-RやフェアレディZまで、何でもかんでも電動化するのはナンセンスではないか。
フェアレディZは「特別なスポーツカー」であり、存在することに意味があるのだという
フェアレディZは、「特別なスポーツカー」だ。特に、アメリカ市場では熱狂的なファンが待ち望んでいる。
エンジンが凄いとか、ハンドリングが俊敏、デザインがカッコいい、という表面的なことではなく、フェアレディZが存在することに意味があるのだ。
筆者がファン代表として、Zにひと言物申すならば、「ライバルは過去のZたち、それらよりもドライビングが楽しいZを目指せ!」と言わせていただきたい。
ハイパフォーマンスを求める方にはGT-Rがある。また、サーキットでライバル車に勝つチューニングは、NISMOに任せればよい。
GT-R、NISMOとは異なる役割を持つフェアレディZの市販モデルはどうなっていくのか
Zには異なる役割がある。誰しもがちょっと頑張れば所有できるクルマ、アメリカ市場に合わせた「3万ドルで手に入るスポーツカー」という独自のルールは、時代が変わっても実現すべきだと考える。
3万ドル以下では、装備やパフォーマンスも寂しい状態になるかもしれないし、日本市場では400万円を超える中級グレード以上でないと販売されないかもしれないが、これほどキャッチーなキーワードは、世界的に見てもない。
エンジニア達が、必死になって知恵を絞り、持てる技術を余すことなく盛り込み、徹底的にこだわって完成させた「次期型フェアレディZ」のハンドルを握るのが、今から楽しみで仕方ない。
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マニュアルシフトを継続してくれたことは、大いに評価したいです。