フェラーリのGTマシン モントレーの目玉に
text:Kazuhide Ueno(上野和秀)
【画像】フェラーリ550 GT1プロドライブ/BMW M1プロカー【モントレー2020出品レースマシン】 全50枚
photo:Remi Dergegen/RM Sotheby’s
コレクターズカー・オークションの頂点に位置し、以後の相場に多大な影響を与えてきたのがRMサザビーズ主催のモントレー・オークションだ。
今年はコロナ禍の影響からオンラインで開かれることになり、シフト/モントレーと題されてウェブ上で行われた。
古今東西のコレクターズカー108台が出品されたシフト/モントレー・オークションは、実車が見られないオンラインでの開催だったが、最終的な落札率は74%と好調で、入札者もウェブでの入札に慣れてきたようだ。
とはいえ何億円もする高額な車両となると、自身の目で確認しないと不安が付きまとうもの。
主催するRMサザビーズもその点は承知しており、詳細な鑑定と現状を細かに画像で紹介することにより、入札者の不安を払拭する努力がなされている。
こうした中で開かれたシフト/モントレー・オークションで、最高落札額を記録したのは意外なクルマだった。
その名は、フェラーリ550 GT1プロドライブ! プロドライブが手がけたレース用マシンだ。
プロドライブが作ったフェラーリ
フェラーリは創業して以来自社でマシンを製作してレースを闘ってきた。
F1マシンはもちろん、スポーツ・プロトタイプ・マシンやGTマシンも然りだ。
1980年代からは、協力関係にあるパドーヴァのミケロットが288GTOエヴォ、F40 LM、333SPなどのレーシング・マシンを担当してきた。
1997年から始まったFIA GT選手権は、過激すぎるGT1カテゴリーから主要メーカーが撤退して破綻したことから、再び市販GTカーをベースにしたマシンで闘われることになる。
シリーズのプロデューサーからFIA GT選手権の再建構想を受けてプロドライブで製作されたのが、フェラーリ550 GT1なのである。
日本で「プロドライブ」と聞くと、スバルと組んでWRCを制覇したレース集団というイメージが強いだろう。創設者のデビッド・リチャーズはアリ・バタネンのコ・ドライバーとしてWRCを闘い、引退後は慣れ親しんだラリーに加えレース用マシンの製作からチーム運営までを行う優勝請負人という評価を得ている。
WRCは当初BMW M3で闘い、グループA規定がスタートした1987年のツールド・コルスではM3で優勝。1990年からスバルと組んで頂点に上り詰めたのはご存知のとおり。スバルの撤退後はBMWミニで参戦していた。
ツーリングカー・レースではBMWに始まり、ホンダ、フォードと組んで成功を収める。
フェラーリ550 GT1とは
プロドライブは、GTカテゴリーでは、フェラーリ、アストン マーティンとともに闘い、さらにはBARホンダにも関与してF1にも参加するという世界トップクラスのレース屋なのである。
そのプロドライブが作ったレース用のフェラーリ550マラネッロは、数多くの名前を持つ。
最初に発表された時は550 GTOと謳われたが、参戦するレースのカテゴリー名からGTSとも名乗る。このほか単に550 GTと呼ばれることもあり、今回のRMサザビーズでは550 GT1と記されているので、ここでは「550 GT1」と称する。
550 GT1は市販の550マラネッロをベースに、プロドライブが徹底的にチューニングを施したもの。
排気量は6リッターまで拡大され、新たにクランクシャフト、コンロッド、カムシャフトがプロドライブで作られ600bhpを発揮。ギアボックスは、レーシング・マシンの定番といえるXトラック製のシーケンシャル6速を備える。
ボディは一見するとあまり変わっていないように見えるが、ワイドなタイヤを収めるために前後フェンダーは拡大され、空力性能を高めるためにフロント、サイド、リアを最適な形状に改め、大きな別体式のリア・ウイングが取り付けられた。
徹底的な軽量化により、市販の550マラネッロから550kgも削り落とされ、1140kgの乾燥重量を実現している。
素晴らしき戦歴 スパ24時間も制覇
こうして完成したS/N:CRD 02/2001(プロドライブのシリアル・ナンバー)は、2001年10月にロードアトランタで開かれたプチ・ル・マン・シリーズでデビューを果たすが、マイナートラブルでリタイアに終わる。
本領を発揮するのは2002年のFIA GT選手権。BMSスクーデリア・イタリアに託されて参加した7戦で3度の優勝を勝ち取るが、シリーズ・ランキングでは安定して入賞していたダッヂ・ヴァイパーの後塵を拝してしまった。
続く2003年シーズンもBMSスクーデリア・イタリアから参戦し、10戦中8勝を挙げ、S/N:CRD 02/2001はモンツァで優勝、バルセロナ、マニクール、スパ、エストリルで2位に入り王者に輝いた。
伝統のル・マン24時間では、S/N:06がLM GTSクラスで優勝し、ル・マンで1974年以来のGTクラス優勝をフェラーリに捧げたことも見逃せない。
頂点に達したのは2004年で、モンツァ、バレンシア、スパ24時間、オシャスレーベンで優勝し、そのほかのレースでも表彰台を勝ち取り、この年のチャンピオンとなった。
しかし550 GT1の活躍を見たフェラーリは、2004年にファクトリー製レーシング・マシンの575 GTCを発売するという方向に舵を切る。
575 GTCの登場により、S/N:CRD 02/2001はFIA GT選手権から退き、2005年はイタリアGT選手権に闘いの場を移す。僚友のS/N:CRD 04/2001とともに575 GTCやマセラティMC12と渡り合い、8戦中6回の表彰台を獲得し、シリーズ3位でシーズンを終えた。
モントレー2020 ウェブ競売の最高落札額に
これまで数多くのオークションを見てきたが、フェラーリ550 GT1プロドライブは筆者の記憶では出品されたことはなく今回が初登場となる。
S/N:CRD 02/2001は実戦から引退後は開発用として保管されていたが、その後フルレストレーションが行われた。
レストレーションが開始される時点で搭載されていたエンジンが、2004年のスパで優勝した時のものだったことから、スパ参戦時の姿で復元されることになったという。
オークションでは事前の告知の段階から主役扱いだった。
ちなみに、予想落札額は385~485万ドル(約4億1195万円~5億1895万円)。
オンライン・オークションの常で出だしは低調だったが、締め切り2日前で270万ドル、1日前で320万ドルと順調に上昇。終了直前に競り合って、最終的に429万ドル(4億5903万円)で落札された。
なお、エンジンは現在プロドライブがフルリビルト中で、完成後にベンチでチェックした後、9月末に搭載する予定と発表されている。
完成した550 GT1は、ルマン・クラシックやモンツァ・クラシックなどのヒストリック耐久シリーズ、コンクール・デレガンスに即参加できる完璧なコンディションで納車されるという。
近代のコンペティション・フェラーリで外部のチームが製作して成功を収めた550 GT1は、フェラーリ社も認める存在となり、クラシケのコンペティション認定書が付帯する。あわせて、FIAとACO(ル・マン24時間の主催者)のテクニカル・パスポートも備わる。
走りを突きつめるコレクターにとって、パフォーマンス、ヒストリー、そしてコンディションも完璧なコンペティション・フェラーリだけに、4億5903万円という落札額は決して高くないはずだ。
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