■グッドウッドFoSで、フェラーリが馬力で記録更新
英国ウェストサセックス州チチェスター近郊グッドウッドにて、毎年7月に開催される「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(通称FoS)」は、世界最大級の自動車のお祭り。昨2020年は、新型コロナウイルス禍により開催とりやめとなってしまったが、今年は2年ぶりの復活を遂げることになった。
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グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでは数多くのイベントやブースが展開されるなか、その素晴らしさをもっとも端的に示しているのは、メインイベントの「ヒルクライム」であろう。
総面積1万2000エーカー、東京ドームに換算すると約950個分に相当するという広大なイベント会場のなかでも中核を成すステージ、「グッドウッドハウス」と呼ばれる古城周辺の庭園や牧草地の私道に設定されたコースを駆け抜けるヒルクライムでは、作られた年代や生産国、あるいは2輪/4輪を問わず、最上級のレーシングカーたちが持ち前のパフォーマンスを披露する。
そのかたわら、当代最新のスーパーカー・ブランドにとっては、その走りを披露する絶好の機会も提供しており、ここでワールドプレミアがおこなわれた事例も枚挙にいとまがない。
そんな状況のもと、今年はスーパーカー界の「盟主」フェラーリも現行ラインナップの大多数を引っ提げて登場。パドックでは主役の座に就いたようだ。
●英国デビューが5台も展示
2021年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに際して、フェラーリは全社体制でバックアップ。出品した市販ストラダーレのうち、5台はここで英国デビューとなった。
また、会場に持ち込んだ車両の最高出力を総計すると、実に6290cv(イタリア語における出力表示「cavalli=馬」の略称)に上った。
まず今回が英国デビューとなった5台は、「ローマ」の620cv、「ポルトフィーノM」の620cv、「812GTS」の800cv、「SF90ストラダーレ」の1000cv、「SF90スパイダー」の1000cv。さらにこれら5つのモデルに加えて、それぞれ720cvを発生する「F8トリブート」と「F8スパイダー」の双子の姉妹も姿を見せた。
またフェラーリ「Icona」シリーズ第1弾となった美しき限定バルケッタ「モンツァSP2」は、「812スーパーファスト」をベースとしつつも、パワーは10cvアップの810cvをマーク。
つまり、2021年のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードに正式出品された最新フェラーリの合計出力は6290cv。このイベントにおける、一ブランドの出品車両の総出力記録を更新することになったという。
また「ヒルクライム」本戦に参加するパドックでは、現在ドイツDTMチャンピオンシップを闘っている2台のフェラーリ「488 GT3 Evo 2020」など、さらに多くの「跳ね馬」の姿が見られた。
この2台には、フェラーリのサテライトチーム「AFコルセ」の正規ドライバーであるリアム・ローソン選手とアレクサンダー・アルボン選手が搭乗し、ヒルクライムコースで素晴らしい走りを披露したという。
一方、フェラーリの象徴である「スクーデリア・フェラーリ」からは、ブランドアンバサダーを務めるマルク・ジェネ選手が、2017年の「フェラーリSF70H」を走らせたほか、ファンが見ることができるようにF1パドックに展示されていた2007年の「フェラーリF2007」と2009年の「フェラーリF60」も、ジェネ選手とともにグッドウッドの森に快音を轟かせたとのことである。
さらに個人オーナーによるクラシック・フェラーリでは、このイベントの常連であるニック・メイスン卿(ピンクフロイドのドラマー)の「250GTO」を筆頭に、「166MM」や「512S」、あるいは「375F1」に「250GTブレッドバン」など、まさしく世界遺産級の至宝たちがヒルクライムに登場。
世界最高峰の自動車イベントにおいても、やはりフェラーリこそがスターであることを高らかにアピールしたのである。
■一度は訪れたい「スーパーカーパドック」とは
新旧を問わず、あらゆる自動車の祭典である「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」では、広大なイベントスペースに数多くのステージが用意されるが、なかでもモダンスーパーカー・ファンの人気を集めているのが、ヒルクライムに臨む最新のプレミアムカーやスーパーカーたちが集められる「ミシュラン・スーパーカーパドック」である。
●「動くモーターショー」が見所
前ページにてご紹介したように、今年のフェラーリS.p.A.はこのパドックを舞台に、最新スーパーカーの英国プレミア発表展示をおこない、2年ぶりとなるグッドウッドの成功に花を添えることになった。
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードは、例年7月第一週の木曜日から日曜日まで、4日間にわたって開かれる。その期日のうち、特に木曜日は世界各国のプレミアムカー/スーパーカー・ブランドから送り出された最新モデルたちが、「ミシュラン・スーパーカーパドック」からグッドウッドの華ともいうべきヒルクライムに続々と繰り出し、あたかも「動くショールーム」、もしくは「動くモーターショー」の様相を呈する。
一部のステージをのぞいては、エスケープゾーンなど皆無に等しいヒルクライムコースゆえに、絶対的なスピードがもたらす迫力ではサーキットには及ばない。しかし、場所によっては目の前数メートルを疾走する姿が、視覚と聴覚、時には嗅覚でも楽しめる。
また、ゴール先のクルマだまりで折り返し、スタートに戻るコース設定なので、ひとたび出走したクルマは、クラッシュやトラブルがなければ必ず往路と復路で見ることができる。
往路では「タイムド・シュートアウト」出走者をはじめとして、大方のドライバーが本気の走りに集中するものの、リエゾン区間である復路では、タイヤスモークをもうもうと上げるバーンナウトや、特にグランドスタンド前のコース幅が広くなったところでは、ドーナツターンをおこなうサービス精神に富んだドライバーも見受けられる。
さらにヒルクライム以外にも、小高い丘を登った先の森に特設されたダート(一部舗装)コースを走る「フォレスト・ラリー」では、各自動車メーカーやパーツサプライヤー、スペシャルショップにチューナーなどが、自社の歴史と未来を提示するために展開するモーターショー並みの大規模ブースが並ぶ。さらに「カルティエ」との共催でおこなわれるコンクール・デレガンス形式のショーなど、4日間の期日では足りないほど見るべきものがたくさんあるのだ。
* * *
筆者はこれまで約四半世紀にわたって、欧米各国でおこなわれるクラシックカーイベントを訪ねる機会に恵まれてきた。しかし「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」のごとくエクストリームなイベントは、ほかでは決して見ることはできないと断じても良い。
このイベントの成功を決定的なものとしたのは、単なるクラシックカーフェスティバルに留まることなく、誰もが興奮と感動を覚えるような「ショー」としての要素を盛り込んだことにあると感じられる。
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで見られるのは、まさに白日夢のごとくゴージャスな「自動車絵巻」。そしてフェラーリは、間違いなく今年の主役の一端を担ったと思うのである。
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